2023年6月、岡山県動物愛護センターに首輪とリードがついた状態で収容されたメスの柴犬がいました。年齢は15歳ほど。シニア犬の域に達していますが、残念なことに飼い主が迎えに来ることはありませんでした。

施設の犬舎には冷房設備がなく、気温35度を超える日は高齢犬にとってはとにかく過酷です。このことを知った岡山県を拠点に犬の保護活動を行うNPO法人しあわせの種たち（以下、しあわせの種たち）のスタッフは、迷わずこのワンコを引き出すことにしました。

■体中に粘着物が付着し、異臭を放っていた

保護された柴犬は「多美」と名付けられました。保護時は15歳とは思えぬほど元気で、人間に対する愛想も良いワンコでしあが、目ヤニが多く異臭もあります。スタッフは保護後すぐに動物病院へと連れていき、健康状態を獣医師に診てもらうことにしました。

多美の異臭の原因は右耳の「耳垢腺腫」で、しかもがん。さらに卵巣にもがんがありました。シニア犬であることから毛も薄く皮膚の状態が悪く、後ろ足にはコブもありました。獣医師は「まずは耳の治療を優先しましょう」とのこと。しばらくの間は治療に専念することになりました。

■部屋の中で3時間以上ウロウロ＆ギャン鳴き

適切なケアをしながら、しあわせの種たちの預かりボランティアさんの家で過ごすことになった多美でしたが、初日は環境変化のストレスからか、3時間以上もウロウロキョロキョロ。ケージの中に入れればギャンギャン吠えていました。

しかし、この家には優しい先住犬がおり、このワンコのおかげで次第に多美も落ち着きを取り戻しました。

何よりうれしかったのは多美がお腹いっぱいエサを食べてくれること。高齢で様々な持病を抱えているため、食欲旺盛な姿に預かりボランティアさんも少し安心することができました。

多美の穏やかさなら「きっと新しい里親さんとのマッチングができる」と考えたスタッフは里親募集を開始しました。

フカフカの布団の上で、優しい里親さんと一緒に過ごしてほしいと願ってのことです。高齢ではありますが、まだまだ元気の多美のもとに、近い将来幸せの日が訪れることを強く願うばかりです。

認定NPO法人しあわせの種たち

https://shiawasenotanetachi.amebaownd.com/

（まいどなニュース特約・松田 義人）