獣医師も驚く難病を抱えた黒猫 飼い主のケアで心を開き、病気とうまく付き合いながら保護猫カフェ店長に

 猫の『エーラスダンロス症候群』という病名を聞いたことがあるでしょうか。皮膚を構成するコラーゲンの代謝異常により、皮膚が過剰に伸びたり、もろく裂けやすくなってしまう先天的な病気です。

 大阪市西淀川区の『保護猫カフェhanta』で店長を務める黒猫こころちゃん(6歳)にこの病気が発覚したのは1歳4か月の頃。足で掻いたこめかみ付近の皮膚が裂けてきたため動物病院へ連れて行くと、獣医師も「学術的には知っているが実際に診たのは初めて」という非常に珍しい病気、エーラスダンロス症候群と診断されました。

「治療法が見つかっていない病気。年齢を重ねるにつれて症状がひどくなると言われました」

 そう話すのはカフェオーナーで飼い主の阪口かおりさん。最初は保護猫だったこころちゃんの預かりボランティアに手を挙げましたが、間もなく病気が発覚。以来、正式に家族に迎えてから現在に至るまで数年にわたって、食べ物や着る物など、こころちゃんが病気とうまく共存していけるよう試行錯誤を続けています。

「食べ物は4年たってようやく落ち着いてきました。同じ病気の猫ちゃんの参考になればうれしいのですが、こころの場合はアイシア(AIXIA)の『黒缶』とブリスミックス(BLISMIX)の『チキンレシピ』を混ぜてやると、引っ掻いたときの傷の治りが早くなりました」

 いろいろなところを引っ掻かないようにと着けていたエリザベスカラーは最初、プラスチック製のものを使用していましたが、やわらかい素材のものに変え、今は手術後に用いられる術後服や帽子で対応しています。

「掻くことは止められないので、洋服や帽子でカバーするしかありません。夏場はソフトエリカラにしたり、ありとあらゆるものを試しています」

 幸い、こころちゃんは嫌がらずに洋服を着てくれるため、傷口を広げて大事に至ることはありません。

■犬猫の理由なき殺処分ゼロを目指して

 こころちゃんは元“家猫”。奈良県で保護され阪口さんのもとへやって来たのですが、「最初は触らせてくれなくて、野良猫のような感じでした。手を高い位置に上げるとビクッとする様子が見られたので、不適切な飼育をされていた可能性もありますね」(阪口さん)。トラウマを抱えていたのかもしれませんが、人間の子どもの心のケアに携わったことがある阪口さんは「息子と一緒にお世話できる」と判断し、息子さんは「2週間で抱っこできるようになる!」と宣言。実際、1か月もたたないうちにこころちゃんは心を開き、甘えてくれるようになりました。

「ちゃんとケアすれば心を開いてくれるとこころが教えてくれました。もともと猫の預かりボランティアをしていて里親さんとのマッチングは得意なほうだったので、自分で譲渡を目的とした“ふれあいルーム”型の保護猫カフェを始めようと思ったんです。このエリアは野良猫問題が大きかったので、TNR(T=Trap/捕獲し、N=Neuter/不妊去勢手術を施し、R=Return/元の場所に戻す)活動にも積極的に参加しています。譲渡につなげるTNTA(T=Trap/捕獲し、N=Neuter/不妊去勢手術を施し、T=Tame/人に馴らし、A=Adopt/譲渡する)も同時に」

 大阪市は『大阪・関西万博』が開催される2025年までの「犬猫の理由なき殺処分ゼロ」実現に取り組んでおり、阪口さんはその一翼を担っているのです。

「こころのような病気を抱えた猫は外では生きられません。でも実際にはそういう子たちもいるので、1匹でも多く救ってあげたいと思っています」

 そうした活動のベースとなる『保護猫カフェhanta』では、こころちゃんをモデルにしたかわいい雑貨も多数販売。店長であるこころちゃんも不定期ではありますが“出勤”していますし、新しい家族との出会いを待つ愛らしい猫ちゃんたちもたくさんいます。こころちゃんと仲間たちの様子はインスタグラム(@kokoroccat)から。『保護猫カフェhanta』の情報はホームページで。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)

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