『風のシルフィード』に『はじめの一歩』…漫画の黄金期、少年マガジンで感動を生んだ! 連載開始35周年を迎える名作たち
1980年代から90年代は『北斗の拳』や『ドラゴンボール』が社会現象になるほどの人気となり、「ジャンプ黄金期」と呼ばれていました。その一方、週刊少年ジャンプ(集英社)のライバル誌である講談社の週刊少年マガジンや月刊少年マガジンでもジャンプ連載陣に負けない名作漫画が生まれた時期でもあります。そんな名作マガジン作品から、2024年で連載開始から35周年となる作品に注目してみましょう。
■風のシルフィード
まず注目したいのは、週刊少年マガジンで連載された『風のシルフィード』(作:本島幸久)です。競馬漫画といえばジャンプ作品の『みどりのマキバオー』(作:つの丸)が有名ですが、『マキバオー』が連載される5年前に同作が人気を博したこともあり、競馬漫画のパイオニアといえるでしょう。
同作の主人公・シルフィードは、もうひとりの主人公であり後にシルフィードの騎手となる森川駿の父親が経営している小さな牧場で、脚に浅屈腱炎という競走馬として致命的な故障を抱えて生まれた馬です。薬殺処分されかかっていたシルフィードは駿の献身的な世話によって故障を乗り越えますが、最初は走ることもできず他の馬からもイジメられていました。そんなシルフィードが駿とともにさまざまな苦難を乗り越え、ライバルと激闘を繰り広げる物語です。
SNS上では「生まれたばかりのシルフィードを庇う駿の姿に涙しました」「熱いレースと泣けるストーリーが好きだった」など読者からの評価の声があがっています。同作は1993年に完結しますが、1996年より続編の『蒼き神話マルス』が連載されるほどの人気を誇りました。
■はじめの一歩
『風のシルフィード』は完結していますが、1989年に連載開始となり2024年2月現在も連載が続いている作品もあります。それが週刊少年マガジンで連載中の『はじめの一歩』(作:森川ジョージ)です。主人公・幕之内一歩はドジでいじめられっ子の高校生。ある日出会ったプロボクサー・鷹村守に憧れて、彼と同じ鴨川ジムに通い始めることで物語が始まります。
もともとあったパンチ力や持久力といった才能を厳しいトレーニングによって開花させた一歩は、フェザー級日本チャンピオンを獲得し、世界戦に挑むまで成長を遂げます。しかしその後パンチドランカーの疑惑が生じ現役を引退し2024年2月現在は鴨川ジムでトレーナーとして活動することになりました。
試合から遠ざかっている一歩に対して読者からは「どんな適当な理由でもいいから現役に復帰してほしい」「スパーリングする姿を見たけど現役復帰してもおかしくないレベル」など一歩が再びプロのリングに立つことを熱望する声がSNS上であがっていました。
■DEAR BOYS
その他の35周年を迎える名作漫画といえば、月刊少年マガジンで連載された『DEAR BOYS』(作:八神ひろき)、『修羅の刻』(作:川原正敏)も忘れられません。いずれの作品も2024年2月時点でシリーズ作が連載中です。
高校のバスケットボール部を舞台にした『DEAR BOYS』は、バスケ強豪校から転校してきた主人公・哀川和彦が廃部寸前の瑞穂高校バスケ部を立て直し、全国大会の優勝へと導く物語です。2018年からは舞台を湘南大相模高校に変え、全国制覇に燃えるエース・布施歩や新たに入部した新1年生たちの姿を描いた『DEAR BOYS ACT4』が連載中です。
そんな同作にはSNS上で「読み始めたときは思っていなかったけど大作になって驚き」「現実味があってリアルな展開なので共感できる場面が多かった」といった声があがっていました。
■修羅の刻
『修羅の刻』は1987年から連載開始された『修羅の門』のスピンオフ作品です。両方ともが代々陸奥家に伝えられてきた一子相伝の格闘術・陸奥圓明流の継承者が主人公の作品です。『修羅の門』が現代の継承者・陸奥九十九の物語が描かれているのに対して、『修羅の刻』はさまざまな時代に登場する継承者の姿が描かれています。
2023年からは平安時代を舞台とした「酒吞童子」編が連載開始され、ファンからは「気になりすぎて月刊マガジン買った」「これまでで最古の陸奥とかめちゃ楽しみ」など、久々に描かれる陸奥圓明流の世界に期待の声がSNS上であがっています。
ちなみに同作ファンの筆者は、2024年の大河ドラマ『光る君へ』が平安時代を舞台に紫式部の話を描いていることの相乗効果で『修羅の刻』人気がさらに上がることを期待しています。
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このように35周年を迎える漫画のなかには、今でも連載中の作品が多く見られます。完結した作品も連載中の作品も、今読んでみると新たな魅力や面白さが発見できるのではないでしょうか。
(海川 まこと/漫画収集家)