数々の作品が実写化 かわぐちかいじさんが映像化で譲れないこと 「どれだけ熱意と愛情をもってくれているか」

 これまで数々の作品が映像化されてきた人気漫画家のかわぐちかいじさん。1988年に連載がスタートした「沈黙の艦隊」は、2023年に劇場公開、2024年にはPrime Videoで「沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~」というタイトルで全8話のドラマとして全世界に配信された。自身が生み出した漫画の実写化の話が舞い込んだとき、漫画家はどう受け止め、考えたのか。

■人気漫画家、実写化の条件とは

 日本近海で海上自衛隊の潜水艦がソ連(映画・ドラマではアメリカ)の原子力潜水艦と衝突。大沢たかおさんが演じる潜水艦の艦長海江田四郎が突如反乱を起こし、独立戦闘国家「やまと」を宣言することから始まる壮大なストーリー。作品のスケールやテーマ性から実写化は困難とされてきたが、2023年に映画化、そして2024年にドラマとして実写化された。

 かわぐちさんの作品は『告白 コンフェッション』の実写映画化も2024年5月に公開される。他にも『空母いぶき』など実写化されている原作は多い。「愛といいますか、どれほど原作に熱意をもっているのかというのは知りたいところですね。あとは脚本の出来」と語る。

 「まず実写化のお話をいただいたときは、制作スタッフの方とはお会いします。そこで脚本を読ませていただきます。だいたい脚本を拝見させていただけば、原作を忠実にやろうとしているのか、さらにはどれだけ原作を好きでいてくれているのか、また愛が感じられるのかは分かりますからね。基本的には原作に則っているというのは大きな条件ですね」

 「沈黙の艦隊」実写化に際しては、プロデューサー陣の一人に、主演の大沢さんが名を連ねている。

 「とても作品への愛と大きな志を秘めている」が大沢さんの印象だったという。「海江田艦長の一番大きな特徴は、未来を構築したいというエネルギー。その意味で大沢さんには、志が高いと感じました。ビジュアルという部分ではなくメンタリティのところで、すごく海江田に似ているじゃないかと思いました」。キャスティングを含め、筋が通った思いが制作スタッフから感じとれたという。

■原作と違う部分も「改変」ではなく「アップデート」

 「原作に忠実に」と望む作家の思い。一方で、本作では時代を含めて、原作から改変されているシーンも多いる。例えば、水川あさみさん演じる副長の速水は、原作では男性だ。

 「連載スタートは30年以上前ですが、あくまで現代の話として書くんだという共通認識がありました。当時と女性の社会進出に対する認識も変わっている。いまは自衛隊にしても、女性の進出は当たり前ですよね」

 かわぐちさんの認識では、こうした原作との違いは「改変」というよりは「アップデート」だという。その他、夏川結衣さん演じる曽根崎防衛大臣なども「いまの時代という意味では、リアリティがある」と述べる。現代を意識させるさまざまな演出にも「とても苦労したのでは」と慮ると「観ていて違和感はなかった。すごいですよね」と作り手の創意工夫に舌を巻く。

 許諾を出してしまえば「基本的に制作者にお任せです」と語ったかわぐちさん。そこにはしっかりと話し合いを重ね、原作への相手の思いを感じ取ったからこその信頼がある。

 「キャラクター造形一つにしても、制作サイドの熱意と愛が伝わってきます」

 物語はまだまだ続く。タイトルにある「シーズン1」という文言に期待して、さらなる続編を待ちたい。

(まいどなニュース特約・磯部 正和)

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