ガチャガチャのルーツは1880年代のアメリカ 「キン消し」ブームの黄金期 一大玩具ビジネスへの知られざる歴史を紐解いた
硬貨を入れてレバーを回すと、カプセルに入ったオモチャが出て来るガチャガチャ。2022年の市場規模は過去最大の610億円(玩具市場規模データ)。今日では玩具ビジネスの一大ラインとなりました。
にもかかわらず、ガチャガチャをめぐって発祥や歴史ははっきりしませんでした。厚いベールに閉ざされたガチャガチャの歴史を追いかけた労作が登場しました。「日本ガチャガチャクロニクル」(杉村典行・著、辰巳出版)です。
■ガチャガチャの原型は136年前にアメリカで誕生
同書によると、ガチャガチャの原型は136年前の1888年のニューヨークに登場。ガラスボールの中にガムを入れた自販機でした。
その後アメリカではカプセル自販機が盛んになり、ガムだけでなくオモチャの販売も始まります。日本におけるガチャガチャの登場以前に、日本から「カプセル用小型玩具」が輸出されていました。本書ではこうあります。
日本にアメリカ製のガチャガチャが輸入され、国内流通がスタートしたのは1965年のこと。だが、日本とガチャガチャの関係は、それより10年以上も前から始まっていた。当初はガチャガチャの中身とは知らされずに、日本から小さなオモチャを輸出していたのだ。(本書より)
■日本のガチャガチャ誕生と飛躍した時代
1965年には日本初の専門メーカーが登場。輸入されたアメリカのカプセル自販機が商店の店頭などに置かれはじめ、マスコミも注目。人気に火が付きます。1967年にはガチャガチャの国産機も登場。それから約10年後の1976年から1977年にかけて最初の成長期を迎えます。
1976年頃に盛り上がるスーパーカーブームに乗って出てきたのが、スーパーカー消しゴムである。三菱鉛筆のボールペン「BOXY」のノック機能を動力にし、消しゴムを飛ばして、相手の消しゴムを机から落としたり、距離を競う遊びが流行。滑りをよくするために、裏にホチキスの芯を打つ改造なども横行。のちにノック部分だけの発射台をガチャガチャは商品化した。(本書より)
■「キン消し」ブームを生んだガチャガチャ黄金期
1977年にはバンダイが市場参入し、またガチャガチャファンには伝説とされるメーカー、コスモスも登場。コスモスがアイデア重視の玩具を多く展開する一方、バンダイは版権モノに特化。この時期が「黄金期」でした。
当時の子どもたちにとって、特にコスモスのガチャガチャは絶大な人気を誇った。また、1983年にはバンダイの「キン肉マン消しゴム」が大ヒット。その人気に便乗したパロディも大量発生することに。(本書より)
■今日では子どもだけでなくどの世代も楽しむように
1990年代にはIC(電子)モノがガチャガチャに登場したり、ディズニー版権とのタイアップ商品が出たりと、市場は成熟していきます。2000年代にはさらに活性化し、2012年に登場した「コップのフチ子」がシリーズ累計2000万個ものヒットになりました。
2018年にはガチャガチャ専門店が続々とオープン。黄金期にはあくまでも「子ども向け」だったガチャガチャは世代を超えて親しまれるようになりました。
こういった知られざる変遷を多面的に追い続けた本書制作への思いを、担当編集者に聞きました。
「これまでのガチャガチャ関連の本は、主に80年代以降を中心とした内容でした。そこで、それ以前の黎明期の60年代、70~80年代にもスポットを当てたいと考え、日本人にとって身近なワンジャンルの歴史を振り返る“クロニクルシリーズ”の一冊として刊行しました。著者の杉村さんの膨大なコレクションの中から掲載アイテムを選び込む作業は、どれもが貴重で超レアなものだけに、とても大変だった一方で楽しくもありました。本書でしか見られないアイテムはもちろん、70~90年代の傑作台紙(POP)も多数掲載しています」(担当編集者)
これだけの貴重な情報を、楽しく見せてくれるのも本書の優れたところ。特に昭和世代のガチャガチャファンには垂涎の一冊と言えそうです。
(まいどなニュース特約・松田 義人)