川に囲まれた地形はまるで「巾着袋」…秋には曼珠沙華が咲き誇る巾着田 かつてはダム計画で開発の危機に

埼玉県日高市を流れる高麗(こま)川の川筋が大きく湾曲して、まるで巾着袋みたいな形に見える「巾着田(きんちゃくだ)」と呼ばれる地域がある。奇抜な地形もさることながら、曼珠沙華の群生地があり、秋の開花シーズンには多くの観光客が訪れる。埼玉県日高市に話を伺った。

■ダム建設を中止して下草を刈ってみたら曼珠沙華が咲いていた

蛇行した高麗川に囲まれた地形を空から見ると、まるで巾着袋のようだ。ちなみに巾着袋とは、開口部を紐で絞める袋のこと。

しかし直径約500m、周囲約1500m、面積約22ha(ヘクタール)の広大な平地のため、地上にいると、巾着の中にいることは認識しづらい。だが、巾着田の北西方向にある日和田山の山頂付近にある「二の鳥居」からだと、巾着の形が見渡せるという。

巾着田の大部分は耕地で、周辺の川沿いに曼珠沙華の群生地がある。秋に満開を迎え、辺り一面が真っ赤に染まる景色が幻想的で美しい。

そんな素晴らしい景色を楽しませてくれる地に、かつて水源を確保するためのダム建設が計画されていた。計画は1981年に中止され、1989年頃に河川沿いの雑木林の下草を刈るなど整備をし始めると、巾着田の周辺に曼珠沙華が顔を見せたという。群生地域は思いのほか広かった。その美しい光景がメディアにも取り上げられると、多くの人が関心をもつようになり、保護活動が始まった。

■巾着田曼珠沙華公園として観光スポットに

曼珠沙華の群生地は現在、巾着田曼珠沙華公園として管理されている。5.5haの公園のうち3.4haが曼珠沙華の群生地だ。

「曼珠沙華の他にも、水車小屋や高麗川に架かる歩行者専用の橋として『あいあい橋』があります」

橋長91.2mの「あいあい橋」は、木製トラス構造の橋としては日本最大級だそうだ。尚、水車小屋は2024年4月まで修繕中とのこと。

曼珠沙華が咲くシーズンには約20万人もの観光客が訪れ、外国人の観光客も多いという。ただ、全国の観光地に共通する悩みかもしれないが、多くの人が訪れることで、日高市でもゴミやマナーの問題に頭を悩ませている。

「節度をもった形で楽しんでいただければと思います」

一方で、公園を管理運営する上で、どんなときにやりがいを感じるかも聞いてみた。

「群生地内に曼珠沙華が一面に咲き誇り、それを来場者の皆様にお楽しみいただくことが、いちばんのやりがいです」

曼珠沙華は秋のお彼岸の時季に咲くことから、別名「彼岸花」とも呼ばれる。日高市では、秋のお彼岸の開花に合わせて「巾着田曼珠沙華まつり」を開催している。派手なステージ等はなく、純粋に花を楽しむお祭りだそうだ。

「2週間ほどの開催期間で、市内の飲食店やお土産品も堪能できますので、ぜひお越しください」

巾着田は自然のまま、ありのままの形で管理が行われており、曼珠沙華は自然に増えていった結果、平地林の中に500万本以上もの日本最大級の群生地となった。

日高市の担当課が「他に類を見ないであろう景観は圧巻」という曼珠沙華を見るために、巾着田を訪れてみてはいかがだろうか。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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