張り紙で放置された穏やかな大型犬 てんかん発作や興奮状態を繰り返すように 疲弊した飼い主は寝顔を見て悟った 「私はずっと一緒だよ」「あなたのやりたいことをやらせてあげる」
東京都・足立にある保護犬猫カフェPETS(以下、PETS)に「めご」という看板犬がいます。メスのゴールデン・レトリーバーで、横浜のショッピングモールで棄てられ、その場には「この犬、拾ってください」の張り紙がありました。保護された様子は、2023年3月29日配信の記事「「この犬、拾ってください」の張り紙 横浜のショッピングモールに放置された大型犬 リードや散歩を嫌がるのは捨てられた記憶のせい?」で報じました。
穏やかで優しい性格のめごですが、保護当初から腰と股関節に障がいがあり、てんかん発作を起こすこともありました。
そのため、PETSではめごを譲渡対象とせず生涯を代表が「家族」として迎えいれ一緒に暮らすことにしました。その後、当初は少なかったてんかん発作を頻繁に起こすようになり、また以前にはなかった行動をとるようにもなりました。
■体力が有り余る?
それまでの発作は痙攣して徘徊し、しばらくすると落ち着く、といったものでした。
しかし、最近は発作だけでなく、起きている間は超興奮状態で猫のトイレに頭を突っ込み動けなくなったり、壁や他のワンコにもぶつかったりするようになりました。臭覚が研ぎ澄まされ、えさの匂いがするものを口にしたり他のワンコが便をするとそれを食べに行くという行動もありました。
めごの体重は約30キロ。昼夜を問わず異常行動をするたびに、代表がその体を押さえ込んできましたが、なかなか大変。めごのケアについて懇意の動物病院の獣医師に相談することにしました。
■「どれだけ大変でもめごは私の家で看る」
獣医師は、異常行動を起こした際の鎮静注射を処方してくれました。昼夜問わず暴れ出すめごを抑え込んでいたことを思えば、気持ちに余裕が出た代表でしたが、獣医師はこんな話もしました。
「発作や異常行動を、常に起こさないようにするためには、24時間麻酔状態にすること。ただし、これは24時間体制の動物病院に入院させる必要があります。また、麻酔状態にすることで脳死や死亡のリスクもあります」
めごがかかっているいくつかの動物病院は24時間体制ではありません。
仮に24時間体制の動物病院にめごを入院させたとしても、死なせるリスクを高めることだけは代表は絶対に嫌でした。「どれだけ大変でも私の家で看る」と自宅で世話を続けることにしました。
■あまりの苦労に自然と涙がこぼれてくるように…
以降のめごとの生活もまた穏やかではありませんでした。
めごが暴れ出すたびに注射を打てば、一定期間落ち着きます。しかし、その効果が薄まればまた大暴れ。ときに代表はつい感情的になって「どうしてこんなことばっかりするの!」と、めごを怒鳴りつけてしまうこともありました。
すぐに反省しましたが、しかし後になって考えれば、こうやって怒っている間はまだ正常でした。それを通り越し代表の精神状態が極限まで行くと、別のことをしていても、自然と涙が出てくるようになってしまいました。めごの暴れぶりに日々接し続けるうちに心身ともに完全に疲弊してしまったのです。
■「これからは介護をする」と改心
しかし、2024年の正月休みのこと。いつものようにめごに注射を打った後、スヤスヤ寝ているその姿を見て代表は心をあらためました。
「これからはめごの介護をする」「大暴れや食い荒らしなどを、過剰に止めるのではなく、めごのやりたいことをできるだけやらせてあげて、めごが疲れて落ち着くまで一緒に付き合う」
そう考えることにした代表は、眠っているめごのオムツを取り替えながら、不思議と笑顔が浮かんできたそうです。1日でも長くめごが長生きしてくれるように「ダメな飼い主だけど、これからもどうかよろしくね」と話しかけました。
■「私はずっと一緒だよ」
幸い、めごに異常行動やてんかん発作が出ない間は、散歩に出かけることができます。代表はその散歩中に「めごとあと何回この道を歩けるんだろう」とふと思うそうです。そして、出会いからここに至るまでの毎日、日々の世話などのさまざまな場面が浮かんできて、いつも寄り添ってくれためごを愛おしく思いました。そして、心の中でめごにこんなふうに声をかけました。
「これからもずっと1日でも長く一緒にいてね。散歩に出かけられなくなっても私はずっと一緒だよ」
保護犬猫PETS
https://profile.ameba.jp/ameba/pets-adachi203
(まいどなニュース特約・松田 義人)