「亡き父は借金だらけだったはずなのに」50代男性…相続放棄をしたら、意外な財産が出てきて大後悔!活用したい「限定承認」制度とは

故人が残した財産に多くの負債があり、全ての財産を処分してもマイナスとなってしまう場合があります。そういう時は相続放棄の手続きをおこなえば、全ての財産を諦める代わりに負債を相続せずに済みます。ただ、後から故人に財産が見つかった場合、そちらも諦めなければなりません。

Aさん(50代・男性)は先日亡くなった父親の相続問題に直面していました。というのもAさんの父親は、生前に多くの借金をしていたため、全ての財産を計算するとマイナスとなる試算が出ていました。そのためAさんは手順に従って、相続放棄の手続きをおこないました。

それから半年後、Aさんの父親宛に見知らぬ会社から一通の封書が届きます。中身を見ると、銀行口座が使用できなくなっており、非上場株式会社の配当金の振込みができなかったという旨の通知でした。Aさんの父親は家族に知らせず、ある会社の株主になっていたのです。Aさんの父親が保有していた株の価値は、負債の額を上回っているようでした。

慌ててAさんはその会社に事情を説明しますが、相続放棄をしていたためAさんの父親が保有していた株の相続はできませんでした。「亡き父は借金だらけだと思っていました。こんなことなら相続放棄なんかしなかったのに」とAさんは嘆くことになったのです。

   ◇   ◇

Aさんのケースのように、後から故人の財産が見つかることは多いのでしょうか。またAさんはどうしていれば、今回のようなことにならなかったのでしょう。北摂パートナーズ行政書士事務所の松尾武将さんに聞きました。

ー相続放棄をした後に財産が見つかることはあるのでしょうか

はい、あり得ると思います。今回のケースでは家族が知らない非上場株が見つかりましたが、逆に故人が誰かの借金などの保証人になっていたりすると思わぬ負債を負うケースもあります。金融機関を介した取引であれば調査でわかることもありますが、個人間の取引の場合、調査しても判明しないことが大半です。

このように相続を承認した後に故人の負債が見つかって、返済に苦慮する人も少なくありません。

ーAさんはどのようにしていれば良かったのでしょうか

「限定承認」が考えられるでしょうか。これは相続によって得たプラスの財産を限度として、負債も引き継ぐというものです。Aさんの場合、限定承認の手続きをしていれば、一旦、プラスの財産の範囲で負債ごと引継いで清算し、後から判明した株式を引き継ぐことができます。

ーあとから負債が見つかった場合も有効ですか

限定承認をした後に負債が見つかった場合でも、プラスの財産の範囲での相続となるため、トータルとしてマイナスになることはありません。

ーそんなにいいものなら、もっと活用されても良いと思うのですが

2022(令和4)年度の司法統計によると、相続放棄の件数が約27万5千件なのに対して、限定承認の件数800件弱となっています。限定承認が利用されない理由としては、手続きが複雑であることと、相続人全員の同意が必要であること、課税上の問題があげられます。

相続放棄は、個人で書面を作成し、家庭裁判所に提出し受理されれば手続きが完了します。一方で限定承認の場合は、家庭裁判所に申し立てをおこない、公告により債権者がいないか呼びかけます。その際、詳細な財産目録の作成が必要です。

さらに相続人全員の承諾が必要であるため、一人でも連絡が取れないなど応じてくれない相続人がいれば限定承認はおこなえません。相続財産に含み益が生じていた場合には「みなし譲渡所得」として相続発生日から4カ月以内に(準)確定申告をおこなう必要もあります。

なお、限定承認の手続きに携わることが出来る代理人は司法書士か弁護士となるため、専門家に依頼する場合はご留意ください。

◆松尾武将(まつお・たけまさ)/行政書士

前職の信託銀行員時代に1,000件以上の遺言・相続手続きを担当し、3,000件以上の相談に携わる。2022年に北摂パートナーズ事務所を開所し、相続手続き、遺言支援、ペットの相続問題に携わるとともに、同じ道を目指す行政書士の指導にも尽力している。

(まいどなニュース特約・八幡 康二)

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