わずか360gだった命が、こんなにも大きくなって 盲目で脳障害を持つ子猫が成長 我が道を行く“大人にゃんこ”に
わすか360gだった命が、こんなにも大きくなってくれた…。そんな喜びを噛みしめながら日々、愛猫こもちくんの成長を見守っているのは、飼い主ちぼさん。
こもちくんには脳障害があり、わずかに光を感じられるくらいの視力。ちぼさんは、こもちくんが“自分らしい日常”を謳歌できるよう、日々、愛情を注いでいます。
■野良猫が産んだ子猫を保護
こもちくんは、野良の母猫・おもちちゃんが産んだ子。ある日、おもちちゃんは子猫たちと共に、ちぼさん宅の庭に現れたそう。こもちくんは、おもちちゃんに咥えられて移動したようでした。
きょうだいより、ひと回り小さいこもちくんを見て、ちぼさんは保護を決意。体にはノミ・ダニがいましたが、幸い怪我などは見られませんでした。
しかし、初めて抱っこをして目を見た時、焦点が合わない様子を見て、ちぼさんはこもちくんの目が見えていないことに気づきます。
「こもちゃんも何がなんだか分からなかっただろうけど、怯えることはなく、部屋を走り回ったり、クルクル回ったりしていました」
そこで、ちぼさんはこもちくんが生活しやすいよう、できるだけ床に物を置かないようにし、家具も危なくない形状の物に買い替え。家具の配置は変えないように意識するなど、こもちくんファーストな日々を送るようになっていきました。
■てんかん発作との付き合い方に悩む日々を乗り越えて
優しい配慮を受けながら、こもちくんはスクスクと成長。しかし、1歳になる前、予想外の出来事が。てんかん発作のようなパニックを起こしたのです。
以降、ちぼさんは突然起こる発作への対処法に悩むように。動物病院で相談をしたり、SNSで似た境遇の人と話をしたりしながら、なんとか自分たちなりの乗り越え方を築き上げてきました。
発作後には、体に上手く力が入らなくなることも。しかし、そうした時でも、こもちくんは懸命に歩こう、生きようと心に刺さる生命力を見せ、回復してくれました。
「こもちゃんは、その日の調子によって、クルクル回ったり音やニオイに、ものすごく敏感になったりすることもあります。でも、音や気配を察知して、上手に過ごしています」
こもちくんは、ご飯やトイレなどの時に姿勢を保つことが苦手。そのため、ちぼさんは毎食、お皿を持って食事をサポートします。
「その日によって、食べやすい高さがあるみたい。トイレは、自分で近くまで行くけれど入りはしないので、人間が入れて体を支えています」
しかし、こもちくんは何でも自分でやりたい、芯の強い性格。トイレ時、タイミングや支え方が気に入らないと、お怒りモードになってしまうため、ちぼさんにとって、快適なトイレのサポート法は永遠の課題となっています。
■今の姿がこもちにとっても私たち家族にとっても「普通」
サポートを必要とすることがある一方で、こもちくんにはできることもたくさんあります。中でも、ちぼさんが特に驚かされたのは、自分でお気に入りの定位置に行き、のんびりとくつろぐこと。
「座椅子などで寝ていることもあります。見えていないし、真っ直ぐ歩行することも難しいので、びっくりします」
一緒に暮らす中では、ユニークな姿に笑わされることも。実はこもちくん、子猫のようなあどけないお顔に似合わず、声は太め。眠くなると大声で叫び出し、抱っこをせがみます。
「抱っこしてもらわないと寝られません。赤ちゃんなんです(笑)」
また、ある日にはカーペットを咥えて運ぼうと奮闘!全身を使って、なんとかカーペットを動かそうとする努力家な姿には、SNSを通して「かわいい」の声が多く寄せられました。
そんなこもちくんは、同居猫・茶々ちゃんのことが大好き。想いが募りすぎて、パンチや軽いガブッをされても、毎日そばへ。時には距離感が分からず、茶々ちゃんを踏みつけてしまうこともありますが、本ニャンは愛が伝わることを信じています。
「こもちゃんにとっての普通が今の姿なので、私たち家族も脳障害や目が見えないことに対しては、特に何も思っていません。これが、私たちにとっても普通なんです」
こもちくんは「全て」とも言えるほど、かけがえのない存在。好奇心旺盛で我が道を行くこもちくんとちぼさんは、これからも笑顔溢れる思い出を、たくさん築いていきます。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)