保護した猫は両目にハンデ 「里親探しは長期戦かも」 覚悟を決めたスタッフの前に現れた家族 「なでてアピール」で幸せをつかんだ

奈良県では行政が引き取った猫のうち、約9割が殺処分されています。そのうちの約7割が子猫ともいわれます。この世に生まれてきて間もないうちに人間がその命を奪っているのです。

現実を変えようと、1匹でも多くの猫の命を救う活動をしているのが、たかだ地域猫ネットワーク(以下、たかだ地域猫)です。大和高田市に持ち込まれた猫を全て引き取り、第二の猫生へと導いてくれる里親さんとのマッチングを行っています。また、定期的に地域猫のTNR活動(外猫を捕獲し、適切な虚勢避妊手術を行い、その地域に戻す活動)も行っています。

2022年11月、たかだ地域猫が地元でTNRのためにとあるメス猫を捕獲しました。右目が萎縮し左目も白濁。目の白濁は適切な治療を施さないとさらに悪化する可能性があり、TNRで元の場所に戻すのはあまりに危険と判断し保護することにしました。

■警察署への届けでは犬猫は「命」ではなく「物」

TNRから保護に切り替えるため、地元の警察署にたかだ地域猫のスタッフは申し出をしました。すると、「保護=取得する」ということで一定の届け書の提出が必要と説明を受けました。届け書に記載されているのは猫を「物」としたもの。たかだ地域猫のスタッフは違和感を抵抗を覚えました。「猫は物じゃない。命だから、その書類にサインするのはイヤだ」と説明しましたは、「法律上仕方がないのだ」と説得を受け、スタッフは不承不承書類にサインしました。

猫や犬が法律上、「物」として扱われている点、動物愛護が進んだ諸外国では考えられないことですが、今後さらに議論され「犬猫は物ではなく、命を生き物である」と正されることを願うばかりです。

こんな経緯の中で、無事保護されることになったこの猫は、後に「おめめちゃん」と名付けられました。

おめめちゃんは人懐っこい性格です。しかし、右目の萎縮と左目の白濁というハンデがあるため、たかだ地域猫のスタッフは「里親さん探しは、長期戦になるかもしれない」と覚悟しました。しばらくの間は名乗りがなく、おめめちゃんよりも後に来た保護猫が卒業していく状況が続きました。

それでも、かわいく人懐っこいおめめちゃんは、いつもスタッフに甘えてきてくれました。「おめめちゃん、いつか絶対に幸せをつかもうね!」と声をかけながら、スタッフは世話を続けました。

■トライアル先のお父さんの膝の上でゴロゴロ

おめめちゃんを保護してから5カ月ほどが過ぎた2023年3月、スタッフの知人の紹介で、とある家族が「迎え入れたい」と申し出てくれました。まずこの家にトライアルに行くことになりましたが、持ち前の人懐っこさをすぐに発揮。特にこの家のお父さんの膝の上に乗ってゴロゴロと喉をならして「なでてアピール」をしました。

こんなにかわいいおめめちゃんにお父さんもメロメロで顔がほころびます。そしてトライアルの家族に正式譲渡されることが決定しました。

■後見人の娘さんは「ペット可」のマンションを契約

お父さんは高齢でしたが、万一のために娘さんが後見人となり、ペット可のマンションを契約したと言います。おめめちゃんを「家族」として、ずっと大切に世話するという思いを強く感じました。

この優しい家族のもとでおめめちゃんは新たに「メルちゃん」というかわいい名前をもらいました。目にハンデを持ちながらも、受け入れてくれる優しい家族と出会うことができたおめめちゃん改めメルちゃん。いつまでも幸せに元気で過ごしてね。

たかだ地域猫ネットワーク

https://takadaneko.hp.peraichi.com/

(まいどなニュース特約・松田 義人)

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス