転職するなら知っておきたい「フレックスタイム制」…いまさら聞けないメリデメ総ざらい
仕事に対する価値観の多様化に伴い、従来の固定労働時間制に捉われない働き方を求める人が増えています。企業も働き方改革や従業員のニーズに応えるため、多様な働き方を導入する動きが広がっています。
ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、フレックスタイム制を採用している企業で働くのも一つの手段です。フレックスタイム制は変形労働時間制の一種であり、効率的な働き方ができるとして働く人からのニーズが高まっています。
■フレックスタイム制とは?
フレックスタイム制では、固定労働時間制に比べて自由度が高い働き方が可能になります。フレックスタイム制の特徴を確認していきましょう。
▽柔軟な働き方の一つ
フレックスタイム制とは、あらかじめ決められた総労働時間の範囲内で、出退勤の時間を従業員自身が自由に決められる制度です。従業員側で労働時間を調整できるため、効率的な働き方を実現できます。
フレックスタイム制の適用範囲は企業によってさまざまです。すべての従業員を対象とする企業もあれば、特定の部署や一定条件を満たす従業員のみに適用される場合もあります。
たとえば、社外の方とコミュニケーションをとる営業職は、相手の都合に合わせる必要があるため、フレックスタイム制が適用されにくいケースがあります。また、接客業やサービス業は、従業員の労働時間が店舗の営業時間に準ずるため、フレックスタイム制の導入自体が難しいでしょう。
一方、個人で業務を進められる職種では、比較的フレックスタイム制が適用されやすいため、仕事とプライベートのバランスを取りながら柔軟に働けると言えます。
▽フレックスタイム制とフルフレックスタイム制の違い
フレックスタイム制とフルフレックスタイム制の大きな違いは、コアタイムと呼ばれる全従業員が労働しなければならない時間帯の有無です。
フルフレックスタイム制は、従業員が24時間いつでも出退勤の時間を自由に決められる制度で、コアタイムが存在しません。
一方、フレックスタイム制にはコアタイムが存在するため、決められた時間帯は勤務する必要があります。
フルフレックスタイム制は、フレックスタイム制に比べて自由度が高い働き方ですが、採用している企業はまだ少ないのが現状です。
なお、フルフレックスタイム制は「スーパーフレックスタイム制」とも呼ばれています。
■フレックスタイム制の仕組み
フレックスタイム制には、清算期間・コアタイム・フレキシブルタイムと呼ばれる決められた期間や時間帯が存在します。
▽清算期間
清算期間とは、従業員が労働すべき時間を定める期間のことです。従業員は清算期間内で総労働時間を満たすよう、日々の労働時間を調整します。
清算期間の上限は、3カ月です。以前の上限は1カ月でしたが、2019年の労働基準法改正によって3カ月に延長されました。上限が緩和された理由は、月をまたいだ労働時間の調整を可能にすることで、フレックスタイム制の柔軟性をより高めるためです。
たとえば清算期間内に繁忙期と閑散期が存在する場合、繁閑を考慮して総労働時間を調整できます。労働時間を上手く調整すれば、ワーク・ライフ・バランスを実現しやすくなります。
▽コアタイム
コアタイムとは、すべての従業員が労働しなければならない時間帯のことです。業務を円滑に進めるために設定されます。
コアタイムがないと、従業員ごとの労働時間にバラつきが生じ、業務内容によっては業務に支障を来す可能性があるためです。
ただし、コアタイムの設定は任意なので、企業によっては設けていないケースもあります。
▽フレキシブルタイム
フレキシブルタイムとは、従業員が出退勤の時間を自由に決められる時間帯のことです。
たとえば、フレキシブルタイムが6時から8時、17時から20時に設定されている場合、従業員は6時から8時の間で出勤し、17時から20時の間で退勤することが可能です。
フレキシブルタイムを活用すると、通勤ラッシュを避けるために朝は遅めに出勤する、子どもを保育園に迎えにいくために夕方は早めに退社するといった働き方が実現できます。
フレキシブルタイムも任意なので、設定しない企業もあります。
■【最新版】フレックスタイム制を採用する企業の割合
フレックスタイム制は1987年の労働基準法改正により、翌年の4月から正式に導入されました。導入から30年以上が経過しているものの、導入率は決して高いとは言えません。
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査結果の概要」によると、フレックスタイム制を採用している企業の割合は6.8%だったことがわかっています。
また、フレックスタイム制の導入率は、企業規模によって大きく差があります。
従業員を1,000人以上抱える企業の導入率は、全体の平均を大きく上回る30.7%でした。導入率は企業規模が大きいほど高く、小さいほど低い傾向にあります。
※出典元:「令和5年就労条件総合調査結果の概要」(厚生労働省)(http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/dl/gaiyou01.pdf)
「第8表 変形労働時間制の有無、種類別採用企業割合 」
■フレックスタイム制で働くメリット
近年は、フレックスタイム制で働くことを希望する人が増えています。その背景には仕事とプライベートを両立しやすい、通勤ラッシュを回避できるなど、固定労働時間制よりも自由度が高い働き方であることが関係しています。
▽ワーク・ライフ・バランスを実現させやすい
フレックスタイム制は、従業員自身が出退勤の時間を決められるため、労働時間を柔軟に調整できます。たとえば繁忙期に労働時間を増やし、それ以外の時期は労働時間を減らすことも可能です。
公共機関や病院、金融機関などは通常、平日の昼間にしか開いていないため、固定労働時間制では利用しにくい場合があります。フレックスタイム制なら、役所や病院に行ったあとに出勤することも可能になり、自分のスケジュールに合わせた働き方がしやすくなります。
また、育児中の従業員も、子どもの送り迎えに合わせて遅く出勤したり早く退社したりすることが可能です。労働時間を調整することで、プライベートの時間を確保しやすくなり、ワーク・ライフ・バランスを実現しやすくなるでしょう。
▽仕事を効率的に進められる
フレックスタイム制は、従業員自身のスケジュールに合わせて計画的に業務を進めることが可能です。時間に縛られないため、業務効率が高まり、生産性が向上しやすくなるでしょう。
固定労働時間制では、閑散期でも定時前の退社が難しいことがありますが、フレックスタイム制では閑散期には労働時間を減らし、繁忙期には増やすといったことも可能です。これにより、業務量に応じて労働時間を最適化し、無駄な時間を削減できます。
プライベートの時間も生まれ、メリハリのある働き方を実現しやすくなるでしょう。
▽通勤ラッシュを避けられる
フレックスタイム制は出退勤の時間を自由に決められるため、電車やバスが混雑する時間帯を避けることが可能です。
日本は固定労働時間制の企業が多いため、出社する時間が重なり、電車やバスなどで窮屈な思いをしなければなりません。特に人口の多い都心部では、毎朝の通勤ラッシュにストレスを感じている人も多いのが現状です。
フレックスタイム制により、出退勤する時間帯をずらせばストレスの軽減につながります。混雑しない時間帯に電車やバスを利用すれば、座席に座れる確率が高くなり、車内での時間も有効活用できるでしょう。
■フレックスタイム制で働くデメリットとその対策
フレックスタイム制は、さまざまなメリットがある一方、コミュニケーション不足になりやすい、業務効率が下がるなどのデメリットがあります。
▽従業員同士の連携が取りづらくなる場合がある
フレックスタイム制では、従業員の出退勤時間がバラバラになるため、すべての従業員が揃う機会が少なくなります。その結果、社内コミュニケーションが希薄になり、従業員同士の連携が難しくなるケースが考えられます。
急なミーティングや打ち合わせが必要な場合、参加者が出勤していないといった状況が生じるケースもあるでしょう。必要な報告や連絡が遅れ、意思決定が遅れる恐れもあります。顧客や取引先に迷惑をかけてしまう恐れもあります。
こうした事態は、コアタイムを設定している企業では軽減される可能性があります。また、フレックスタイム制で働きたいと考える場合は、連絡や報告漏れを防ぐためにも、メールやチャットなどで頻繁にコミュニケーションを取れる環境の企業を選ぶことが重要です。
▽人によっては業務効率が低下する場合がある
フレックスタイム制は、固定された労働時間がないため、従業員は自らスケジュールを調整する必要があります。このため、適切な時間管理が必要であり、スケジュールをうまく管理できなければ業務効率が低下する可能性があります。
たとえば仕事の優先順位を誤った場合、こなすべき業務が先送りになり、期日までに終了できないこともあるでしょう。業務を計画的に進めるためには、労働時間の適切な管理が必要です。
自己管理が難しい場合は、勤怠管理ツールの利用を検討するのもよいでしょう。企業がこのようなツールを導入していれば、労働時間の正確な把握が可能になります。また、個々の従業員の性格や能力に合わせたサポートが企業から提供されているかを確認することも重要です。
しかし、自己管理能力が低ければ、企業からの評価が下がり、モチベーションの低下につながる恐れがあります。まずは自分でタスクの優先順位やスケジュール調整ができるよう、工夫しましょう。
▽時間外でも業務連絡が入る場合がある
多くの企業が固定労働時間制を採用しているため、顧客や取引先と労働時間が合わない可能性があります。顧客や取引先からオフィスに連絡があったときに、出社していないという状況が続けば、信頼関係を損なうリスクもあるので注意が必要です。
また、フレックスタイム制を採用していても、残業時間が発生することがあります。清算期間における実際の労働時間のうち、法定労働時間の総枠を超えた時間数が時間外労働となります。フレックスタイム制を採用している企業を選ぶ際には、時間外での対応や残業の有無を確認しておきましょう。
■フレックスタイム制の求人を探す方法
日本では、30年以上前からフレックスタイム制が導入されているものの、未だ導入率は高くありません。求人票や会社説明会、転職エージェントを活用すると希望の企業を探しやすいでしょう。
▽求人票で確認する
企業がフレックスタイム制を採用している場合、求人票に記載されているケースがほとんどです。基本的には、コアタイムの有無も求人票に記載されています。
しかし、求人票に記載があっても、必ず自分に適用されるとは限りません。フレックスタイム制は、一部の部署や一定の条件を満たした従業員に限定して適用されているケースもあるためです。フレックスタイム制を採用している企業でも、実際には多くの従業員が固定労働時間制で働いていることがあります。
フレックスタイム制の求人を探す際には、採用の有無だけでなく、適用されている職種や範囲などの実態も併せて確認するようにしましょう。
▽会社説明会や選考過程で確認する
企業がフレックスタイム制を採用しているかを確認する方法として、会社説明会や選考過程で直接質問するのも一つの方法です。
ただし、人事担当者や面接官に質問する際は、聞き方に注意する必要があります。フレックスタイム制に関する質問ばかりだと、企業側に「制度が目的なのかもしれない」「労働意欲が感じられない」といったネガティブなイメージを持たれる可能性があります。
そのため、あくまでも働くイメージを持つために聞いたというスタンスを保ち、質問しましょう。
▽転職エージェントを活用する
フレックスタイム制を採用している企業の求人を探す際は、転職エージェントを利用するのも選択肢の一つです。
転職エージェントは、求職者と企業を結びつけるサービスで、専任のキャリアアドバイザーが求職者をサポートし、企業の細かい情報を確認することも可能です。転職エージェントと企業のつながりが強ければ、フレックスタイム制の実態を把握できる可能性もあります。
ただし、転職エージェントはサービスによって特徴が異なるため、自分に適したサービスを選ぶことが大切です。
■フレックスタイム制の採用企業で理想的な働き方を実現しよう
近年は仕事に対する価値観の多様化により、テレワークやハイブリッドワークなどのさまざまな働き方を希望する人が増えています。柔軟性の高い働き方を選ぶと、仕事とプライベートを両立しやすくなります。
フレックスタイム制は、清算期間内であれば労働時間を自由に調整できる働き方です。特に、フルフレックスタイム制はコアタイムが存在しないため、より柔軟性の高い働き方を実現できるでしょう。
ただし、フレックスタイム制を採用している企業はまだ少なく、すべての従業員に適用されるわけではありません。フレックスタイム制で働くことを希望する場合は、採用の有無や実態などを事前に確認するようにしましょう。
(まいどなニュース・20代の働き方研究所/Re就活)