薬局で薬剤師が病状を聞くのはなぜ?「さっき医師に説明したのに…」話題になった疑問を薬剤師が解説、実はとても重要なことだった!

「『薬剤師がなぜ症状聞いてくるのか』は全部説明出来てないけどこんな感じです。まだまだ発信足りなかった」

福岡県で薬剤師をされながら、YouTube等で動画発信されている中野昇【ナカショウ】さん(@sho_molth)。X(旧Twitter)に投稿された、「薬剤師が症状を聞く理由」についての話に注目が集まりました。

事の発端は、お笑い芸人のかまいたちが司会を務める『これ余談なんですけど・・・』(テレビ朝日系)という番組。2月28日の放送回で、出演者が薬局に関する疑問を語る場面がありました。

出演者が処方箋を持って薬局に行った際、先に病院で話しているにもかかわらず、薬剤師から症状をあれこれ聞かれることについて、「全然いらん時間」「しんどいからはよ帰らせて欲しい」と主張。他の出演者たちも「分かる!ソイツ(薬剤師)に言ったって薬変われへん」「薬剤師さんも医者に憧れみたいなのがあるんちゃう?」などと便乗し、盛り上がりました。

しかし、そのような意見に対し、中野さんは薬剤師として「待った」をかけます。

薬剤師が患者に対して症状を聞くことには、実はとても大切な理由があったのでした--。 

■薬剤師の症状の確認は、実はこんなに重要

中野さんは、以前YouTubeにアップされた動画『【えっ、そんな理由、、】薬局で薬剤師が症状聞いてくる理由』をXに再掲しました。

中野さんによると、その理由は主に2つあるといいます。

ひとつは、薬の処方に間違いがないかチェックをするため。

処方箋には症状の記載がなく、患者さんから直接聞かないと、処方ミスがあった場合に気づくことができません。また、同じ薬であっても、症状によってその量が変わったりすることもあるため、問題がないか確認する必要があるとのことです。

そしてもう一つは、副作用が出ないか確認するため。

中野さんによると、「血圧の薬で歯茎が腫れる」といった、患者さんが想像していないような副作用が出ることもあるそうです。そのため、当人の状態を聞くことで、処方する薬が適切かどうか確認しているのです。

さらに、番組内での「薬剤師に言っても薬は変わらない」という発言に対しても、中野さんはXにて「薬変わる場合普通にあるよ~」とコメント。

中野さんの解説に、リプ欄にはたくさんの称賛の声が寄せられています。

「薬の出し間違いを防ぐ大事なお仕事ですよね」

「処方箋に書かれたクスリを機械的に出すだけなら薬剤師要らん。なんのために医薬分業にしたのか」

「私がお世話になっている薬剤師さんは店頭でいろいろと確認と説明をしてくださいます。薬剤師さんは医師の処方ミスをも防ぐ最後の砦です」

「1度子供の薬が処方箋のだと副作用的に良くないからって変更してくれたなー」

「薬の組み合わせが良くない事に薬剤師が気づいて、先生に電話で確認をとってくれたおかげで、そのまま飲まないで済んだ経験がある」

 「薬剤師の仕事や役割が広く知られていないことを改めて実感しました。私の家族からも似たような反応があるので、これは一般的な認識なのだろうと思いました」

今回の一連の出来事について、このように語る中野さん。かくいうご自身も、薬剤師になる前は同じように感じていたといいます。しかし、動画で説明されている通り、これは患者さんのリスクを低減するうえで非常に重要なことです。

同番組の公式サイトでは後日、番組内での発言について「不適切な内容がありました」と謝罪文を発表。Xを通じて謝罪をされた出演者の方もいました。

「少しでも理解を深めてもらえたら幸いです」(中野さん)

■問題点や課題にも取り組んでいきたい

大切なことを教えてくださった中野さん。しかしその一方で、そこには課題もあるといいます。

大きな課題として挙げられるのは、薬剤師と患者さんとのコミュニケーション。すべての患者さんに対し、同じように対応できるわけではありません。

例えば、患者さんのなかには込み入った会話をすることが難しかったり、早く帰って安静にしなければならなかったりする状態の方もいるでしょう。その点では、番組の出演者の「しんどいから早く帰りたいのに…」という思いにも、うなずける部分があります。

さらに、今回のXのリプ欄には、薬剤師としての主張や立場に理解を示す方が多かった一方で、このような辛口な意見もありました。

「(薬剤師が症状を聞いてくる時に)大声ではやめてほしい」

「オープンスペースで病名や症状を聞かれるのはすごくいやです。多少待ち時間が出ても、仕切りのあるところで1人ずつ聞いてほしい」

「症状は完全にプライバシーなものです」

病院・クリニックでは基本的に、患者は診察室で医師に症状を説明しますが、薬局では開かれたスペースで、不特定多数の人たちがいることもあります。そのような環境で病名や症状を聞かれたり、説明したりすることに抵抗を感じてしまう方もいるでしょう。

このような課題を中野さんはどのようにとらえ、取り組まれようと考えているのでしょうか?お聞きしました。

--薬剤師との会話が「しんどい」と感じる方もいるかもしれません。そのような方に対して、どのように対応したいと思われますか?

中野さん:患者さんとどのようにコミュニケーションを取るかは、薬剤師にとって非常に重要な課題です。体調の悪い患者さんに対しては、その気持ちを理解するように努め、優先順位が高く重要な情報を伝えることが必要だと考えています。

--「プライバシーの配慮」についての指摘も多くありました。

中野さん:以前(今回紹介の動画を)投稿した際にも、薬剤師との会話が他人に聞かれることへの不満や、薬剤師のプライバシー配慮に関するコメントが多く寄せられました。病院の診察室と異なり、多くの薬局が個室ではないため、他人に聞かれたくない情報も漏れがちです。構造的な問題はすぐには解決できないため、小声で話したり、必要な情報を紙に書いて示すなどの対応が必要だと思っています。

--他に、薬剤師として皆さんに伝えたい、分かって欲しいことがありましたら教えてください。

中野さん:薬局が空いているように見えても、処方箋の処理があったり、外出中の患者さんが多かったりして、待ち時間が発生することがあります。この点を理解していただけると、患者さまのストレス軽減につながると思います。また、薬不足の問題から、薬がすぐに用意できない場合があります。薬局側もできる限りの対応をしていますので、この現状を分かりやすく広めることが、双方にとって有益だと考えています。

  ◇  ◇

今回の動画については、以前にも「薬局なのに症状を聞かれる理由に『納得』『経験ある』→薬剤師ユーチューバーが解説『医師もミスある』」という記事でご紹介させていただきました。

薬剤師の役目について皆さんに知って欲しいと願いつつ、課題も見据えて真摯に仕事に取り組んでいる中野さん。

薬局や薬にまつわるお役立ち情報も、YouTubeやXにて発信されています。

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・竹中 友一(RinToris))

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