声優 役者そして映画監督 津田健次郎の尽きない表現欲 「葛飾北斎」が理想とする人 「恐ろしく大胆なオリジナリティがある」

 声優としての活躍はもちろん、俳優業、映画監督など幅広い表現に挑む津田健次郎。最新作アニメーション『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』では、仲里依紗演じるスイセンの絵画の師匠・キンモク先生の声を演じている。津田にとって表現の師匠とはいったい誰なのだろうか--。

■50歳になり「もう一度芝居を見つめ直す」

 声優として輝かしい活躍は言うまでもなく、舞台、映像など俳優としても活躍の場を広げている津田。さらに2019年には『ドキュメンターテイメント AD-LIVE』で映画監督デビューするなど表現者として突き詰めていく姿も披露している。

 今年53歳になる津田だが、湧き出る表現への追及は尽きることがない。

 「あまり年齢を重ねたからいろいろな表現ができるようになってきたのかなという意識はないんです。ただ声優というお仕事を重ねていくなかで、映像で演じることや、その他のやりたいことを聞いていただける環境になってきたのかなというのはとてもありがたいことだと思っています」

 もう一つ大きなモチベーションになっているのが「難しさ」という。

 「やっぱり新しい仕事をする際もそうですが、いくら経験を重ねても失敗することってあるじゃないですか。その都度反省したり凹んだりする。特にここ数年、声優にしても俳優業にしても『もっと丁寧にできたかな』と思うことは増えてきています。50歳ぐらいになって、もう一度芝居を見直すというか、立ち上げ直す良い機会だなと思っているんです」

 具体的により深く考えるようになったのが、どうすればフィクションの時間をしっかりと生きられるか……ということ。

 「それは何十年も前から思っていたことなのですが、改めて実践していくことの難しさを感じています。いろいろな仮説を立てて、一つずつやってみて……。トライ&エラーの連続ですね。本当に芝居で表現することは奥が深いです」。

■長編映画監督に「牛歩ですが少しずつ」

 声優、俳優としての表現。さらに映画監督として作品に思いを乗せて伝えるメッセージも大きなライフワークにしていきたいと思っている。

 「ありがたいことに短編映画は撮らせていただいたのですが、まだ長編映画にはトライできていないので、それはやっていきたいです。自分のなかで物語作りを進めていて、脚本に起こす前段階ぐらい。本当に牛歩なのですが、少しずつ実現に向けて頑張っています」。

 一つ一つの表現を突き詰めていくことで「毎日が充実している」という津田。『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』では、おしりたんていのかつての相棒・スイセンの絵画の師匠キンモク先生を演じる。

 「『おしりたんてい』は子供たちと楽しんで観ていた作品。タイトル、キャラクターを含めてパンチ力がありますよね(笑)。子供も楽しめるけれど、面白い仕掛けがあって大人も観入ってしまう。僕が演じるキンモク先生は芸術家らしい繊細さを持っているキャラクターなのですが、映画オリジナルなので、劇場版における役割を考えながら注力しました」。

 匠の技で魅せる声の演技、そして俳優としての表現、さらに映画監督としての野望……。そんな津田にとっての永遠の師匠とは--。

 「これまで出会ってきたアーティスト、芸術家、エンターテイナーの皆さんから大きな影響を受けているので、その意味ではみんな師匠なのですが、なかでも葛飾北斎は『すげぇなー』と感嘆してしまう存在。基本はしっかり押さえつつ繊細であり、恐ろしく大胆なオリジナリティを持っている。こんなすごい人がいるんだなと思います」

 津田が考える表現の究極が詰まっているという葛飾北斎。「あのすごさに一歩でも近づけたらいいなと思っています」。

『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』は3月20日より全国ロードショー

(まいどなニュース特約・磯部 正和)

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