マンション高騰のあおりで離婚できない! ペアローンで購入した部屋、娘と住み続けたいのに…値上がり益がほしい夫の間で二転三転
2010年の平均を「100」としたとき、2023年11月分のマンション(区分所有)の不動産価格指数は「193.4」と、まさに1.9倍超になっています。マンション価格高騰の状況は相変わらずの高止まりで、その状況は国土交通省が四半期ごとに調査・公表する不動産価格指数でも数字として表れています。
その影響で中古マンション市場も活況。十数年前に購入したマンションを売却したい場合は「良い環境」となっています。
「持っていたマンションが思っていたより高く売れそう!」といううらやましすぎる状態ですが、それが原因で大きな問題に発展してしまったある元ご夫妻のケースについて聞きました。
■ペアローンを組んだマンションが原因で離婚話が進まない!?
Aさん(首都圏在住、40代、共働き)夫婦が住むマンションは、いわゆるペアローンを組んで購入した物件でした。夫婦共働きで、それぞれ住宅ローン減税の恩恵を受けるため、夫婦折半のペアローンを組んだそうです。
収入も勤務スタイルも似ていたため、家事も生活費も折半、夫婦共同の生活口座を作って同額を振り込むという形で結婚生活を続けてきましたが、出産後から少しずつお互いに違和感を覚えることが増え、ついに離婚話に。
離婚自体はお互いに納得していて、親権も養育費分担についても争うことなく、スムーズに進むかと思っていたのですが、大きな「障害」になったのがペアローンを組んでいたマンションでした。
Aさんは同額のペアローンを設定し、持ち分も50%ずつ。学区を変更したくない娘さんのために、夫の名義のローンを買い取り、そのままマンションに住むことを希望しました。
はじめはマンションのローン残債を解消し、名義をAさんに移すことに同意していたAさんの元夫氏。ですが、不動産会社で営業をしている知人に「今、その周辺の中古マンションの価格は上がっている。特に、2009年に販売されたファミリータイプマンションなら当時の販売価格より上がっていてもおかしくない」と聞いて「売却して利益は折半」を主張するようになってしまいました。
確かに人気のマンションで、売却益がそれなりに出ることが判明。家族向けの3LDKに娘と二人で暮らすのも広さを持て余すような気もするし、いっそ売却して会社の近くの小さめマンションを借りた方が、会社から家賃補助も出るので楽なのでは?とぐらついたAさんだったのですが…。
■「価値あるマンション」だからこそ二転三転する意見
こんどは元夫側が「よく考えれば、将来的にまだ価値が上がるかもしれない。このまま共同名義で残して、ローンの支払い分を養育費とするのはどうか。ちょうど娘が成人になるときにローン完済だから、その時に精算すればいい。その代わり、離婚後の面談には定期的にこの家に来させてほしい」と言い出しました。それはそれで離婚後も元夫と財産を共有するようだし、離婚後も夫が家にやって来るのはストレスがかかりそう。
実際に査定に出してみると、不動産会社によって数百万の差があって実際にどれくらいで売却できるのか不安になったり、銀行には思ったよりも高いローンの借り換え手数料を提示されたりと、検討材料がありすぎて肝心の離婚話がまったく前に進まなくなってしまったそうです。
双方離婚の気持ちは固まっているのに、お互い資産であるマンションから出ていけず、冷たい空気の流れるなか毎週末のようにマンションについて話し合うことに…。
最初の案通り、Aさんが元夫分のローンを借り直すことで合意し、最終的にすべての離婚手続きが終わるまでに1年ほど時間がかかってしまいました。
「ペアローン組むときに親から『何かあったら面倒なことになるぞ』って言われたことを思い出しました。将来どうなるかなんてわからないし、大きな買い物の判断は本当に難しいですよね」とAさん。
マンション高騰、意外なところに影響がでるものですね。
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▽参考:国土交通省-不動産価格指数(令和5年11月・令和5年第3四半期分)
(まいどなニュース特約・中瀬 えみ)