「5歳娘との最後の思い出に」閉館した老舗ホテルに届いた手紙に涙…再開を目指す支配人の思いとは

「誰もいないホテルのフロントに無造作に置かれた封筒の数々。請求書と意味のないDM。その中に手書きの封筒が・・・。涙が止まりませんでした。」

静岡県東伊豆町・熱川温泉にて60年にわたり営業されてきたものの、今年の1月31日をもって閉館となったホテル・熱川温泉ブルーオーシャン(@atagawablue)にて、代表取締役(SNSでは“支配人”と紹介)を務めていた関野さん。お客様からの手紙に「涙が止まらなくなった」というエピソードをX(旧Twitter)に紹介しましした。

差出人は、昨年の夏、家族で宿泊をされたという女性でした。その日は、その方の娘さんの5歳の誕生日でもあり、ホテルにサプライズをお願いしていたといいます。

当日は、夕食後にケーキが提供され、さらにサックスの演奏があったり、他のお客様方もまじえ皆で「Happy Birthday」を歌ったりと、とても感動的なサプライズだったといいます。娘さんにとっても、楽しい旅行となったようでした。

しかし、娘さんは先日、小児がんのために亡くなってしまったといいます。

手紙には、家族の最後の想い出を作ってくれたホテルの方々への、感謝の言葉が綴られていました。

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熱川温泉ブルーオーシャン 支配人様

2023年8月に家族で宿泊させていただきました〇〇と申します。

5歳の娘の誕生日に宿泊させていただきました。

予約の後、サプライズのお願いをしたところ快くお受けいただき当日は何が起きるか、主人ともワクワクして夕食に望みました。

食事も終盤を迎えた時に、支配人さんとレストランの外国人スタッフの方がケーキを持ってきてくれて、その後ろからはサックスの演奏を。

テーブルにケーキを置いていただいたあと

「みなさんもご一緒に!」とHappyBirthdayを歌っていただき、他のお客様も一緒になって歌ってくださったときは正直、涙が止まりませんでした。

フロントの女性の方が動画を撮って送ってくださったのを何度も何度も見てそのたびに思い出して涙があふれます。

来年も、と思っておりましたが、今月、娘は小児がんのために旅立ってしまいました。

あの日にはもうわかっていたことなのですが、家族そろっての旅行が最後思い出となってしまいました。

先日、娘の遺品を整理していたところ見覚えのないキーホルダーが出てきました。買ってあげたことがないので、きっとそちらで頂いたものだと思います。よく見たらケースに「熱川温泉ブルーオーシャン」と印刷がありました。

娘が大事にしていた箱の中から出てきた宝物です。

主人と話をして、落ち着いたらもう一度泊りに行こうということになりました。

しかし・・・。

支配人さんの投稿から閉館を知りました。

残念ですが、いろいろな事情があったのだと思います。

娘との最後の思い出をつくって頂いたことへの感謝は一生忘れません。ほんとうにありがとうございました。

もし再開することがありましたらその時は必ず宿泊させていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

長文になってしまいましたが、これにて失礼いたします。

(※熱川温泉ブルーオーシャンのXの投稿より、手紙の内容の部分を引用)

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関野さんは、その時に撮影した動画の編集作業を担当していました。その娘さんの元気な姿をいまでも覚えているといいます。関野さんは、娘さんのご冥福を祈るとともに、その娘さんが生まれ変わった時、またご両親と楽しい思い出を作ってもらえるよう、ホテルの再開を誓いました。

このような関野さんのお話に、たくさんの感動の声が寄せられています。

「気がついたら泣いていた」

「とても素敵な演出。娘さんも嬉しかったでしょうね。ご両親にもかけがえのない思い出になりましたね」

「温泉は想い出を刻みに泊まりに行く所…熱川は亡き母と泊まりに行った事があります。今でも記憶に残ってます」

「多くのかたの想い出の場所として、これからも在り続けられることを願い、再建を心より応援致します」

「お客様の予想をはるか超える満足度。凄いですね!」

「同じくホテルで働く者ですが、素晴らしいおもてなしに感動いたしました」

■ホテルの再開を目指して、熱川温泉の発展を

長きにわたりたくさんの人たちに愛されながらも、残念ながら閉館となってしまった熱川温泉ブルーオーシャン。

関野さんによると、閉館を決めた理由には、物価高騰による収益の悪化や、人件費の高騰などの事情が重なったことがあったといいます。

しかしながら、関野さんは現在、ホテルの再開を目指して活動を続けています。

“月”がとても綺麗であり、また太平洋側であることから“日の出スポット”としても人気がある--東伊豆をそんな素晴らしいところだと紹介する関野さん。

しかし、一方で「現状では熱川温泉にパワーがありません」と、課題も語ります。

ホテルを再開するためには、設備の交換や客室のリノベーションなど、かなりの額の再投資が必要になります。もちろん、熱川温泉の人気が高まり、ホテルに投資をしてくれる新たなオーナーが現れたりすれば、それは可能でしょう。しかし、今の状況ではまだ難しい、と関野さんは考えます。

「まずは、ここ熱川温泉を“行ってみたい場所”にすることが先決だと考えています」

関野さんはそのような思いから、街の再興を図る活動に乗り出しています。

熱川温泉では、地域活性の取り組みの一環として4月6日にイベントを計画。「熱川台湾提灯プロジェクト」として、800個の台湾提灯で街を彩ります。

また、関野さんは同イベントにて、伊豆の名産・金目鯛を使った“金目鯛ラーメン”の出店を計画。「ビジュアルも味も最高」という自信作です。

「観光地が盛り上がっていくためには“名物”、“名産”、“オンリーワン”を作り上げていくしかありません」(関野さん)

地域のホテルや飲食店が集まって、金目鯛ラーメンのコンテストを開催する。その取り組みがメディアに紹介され、熱川=金目鯛ラーメンという評判が広がれば、全国からラーメン好きが集まって街は活性化するでしょう。このように、名産という地域の強みを活かした宣伝にも、関野さんは意欲をみせています。

このように、熱川温泉が全国の人たちに注目してもらえるような取り組みを、関野さんは熱川温泉組合、青年会、商工課の人たちとも協力しながら行っています。

クラウドファンディングを通じた資金集めも検討しているとのことです。

  ◇  ◇

「ホテル業に長く携わると、いろいろな物語を見させていただけます」

Xの投稿で、関野さんはこのように語りました。

今回のご家族のエピソードをはじめ、熱川温泉ブルーオーシャンではたくさんの人たちによって、物語が紡がれてきました。

これからもたくさんの人々に感動してもらうため、関野さんは街の再興とホテルの再開を図るべく、活動を続けています。

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・竹中 友一(RinToris))

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