鎌倉の森に残された広大な昭和の遺構 近代建築の研究所跡地、ただいま一般開放中

昭和中期の1966(昭和41)年に建てられた近代的な外観の4階建てビルが廃屋になっていて、誰でも敷地内へ立ち入ることができるという。元々は野村総合研究所の鎌倉研究センターとして建設されたが、今は鎌倉市が管理している。このような遺構が、一般に開放されている事例も珍しいのではないだろうか。同市の公的不動産活用課に聞いた。

■敷地は一般開放されているが建物へは立ち入り禁止

広大な森林の中、ぽっかり空いた土地に建つ近代的なビル。正面入り口からの進入路は、途中でいったんループさせて、近未来感を演出しているように見える。

ここは鎌倉市梶原にある、旧野村総合研究所鎌倉研究センター跡で、1966年に建設された。1988(昭和63)年に移転して以来、長らく使われないまま廃屋になっている。

全国で廃屋になっている施設はいくつかあるが、建物の老朽化やメンテナンスなどの事情で一般的には立ち入りが制限されていることが多いようだ。だが、この旧野村総合研究所鎌倉研究センター跡は、建物には入れないが敷地内は12月29日から1月3日を除いて午前9時から午後5時まで一般公開されており、駐車場や仮設トイレもある。ただし、通路の途中にある橋の通行は2トン車以下に制限されている。

鎌倉市によると、敷地面積は約17ヘクタールあって、図で示す赤線で囲まれている範囲が敷地だそうだ。

このような施設が、一般開放されている事例は珍しいと思うが?

「グラウンドを含む自然豊かな敷地を、スポーツや散策などにご利用いただけるよう一般開放しています」

職員が常駐していないため、実際にどれくらいの人が訪れているかは分からないそうだが、近隣の保育園が園児たちのお散歩コースや遊び場として敷地内を利用したり、グラウンドなどで親子連れや学校帰りの子どもたちが遊んだりしているという。

「一般社団法人鎌倉ドローン協会様と当課の間で協定を結び、ドローンの練習場としてご利用いただいていることなど、様々な方々が多様な目的をもって利用されていることを確認しております」

なるほど、広い敷地に建物と森林があるから、ドローンの練習には最適かもしれない。

■自然環境を活かした利活用を模索中

ところで、この建物や土地は、今後どのように利活用されるのだろうか。

この場所を利活用する業者を2020年に公募し、既存の建物は事業者が解体することになっていたそうだ。しかし、事業者が辞退したため、計画は実行されず現在に至っているという。

「仮に再度、民間事業者を公募することとなれば、前回公募したときの条件を参考にしながら実施することを想定しておりますが、現在、土地の利活用について検討を進めている段階であり、確定したものはありません」

これからのことについては、2018年3月に策定された「鎌倉市公的不動産利活用推進方針」で定めた「自然環境を生かした利活用(市民への開放を含む)と企業誘致」の基本方針のもと、引き続き、民間事業者による利活用を目指して事業を進めていきたいと考えているとのこと。

一方で、この場所は市街化調整区域に位置しているため、土地利用の制限が厳しいという。また、神奈川県企業庁から「老朽化した配水施設の更新に当たり、当該地に配水設備を整備したい」という協議依頼を受け、協議中だそうだ。

これらの両立の可能性も含め、検討を進めていくとのことだった。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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