飼い主死去で持ち込まれた元狩猟犬 迫る収容期限 「もう無理か」スタッフはあきらめかけた

2023年暮れ、福岡県の動物愛護センターに3匹の元狩猟犬が収容されました。この元狩猟犬はかつて猪狩りに使われていましたが、飼い主の70代男性が死去。70代の奥さんにはどうしても飼育が続けられず、息子さんがやむを得ず連れてきたのだそうです。

元狩猟犬たちの存在を知ったのが福岡県のボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)のスタッフ。あいにく、はぴねすに参加する預かりボランティアさんや関係先は、複数の保護犬を抱えています。スタッフは「この状況をどうすべきか」と考えあぐねていました。

■保護先を徹底して呼びかけたものの… 

幸い、3匹のうち2匹は他の保護団体が手を挙げ、引き出されることが決まりました。しかし、残る1匹のタローというワンコには引き出される気配がありませんでした。後ろ脚がかなり弱っており、将来的には「立てなくなる」恐れがあることも、引き取り手が現れない理由だったかもしれません。

スタッフはなんとかタローを引き出してくれる団体や個人が現れることを願ってブログで周知。はぴねすの支援者などが賛同し複数の問い合わせがありました。タローを適切なところに迎えいれてもらわなければ、再び行き場を失うことになります。そのため迎え入れる上での難しさも包み隠さず伝えました。「申し訳ありませんが、うちでは難しそうです」という返答でした。

■タローの収容期限延長を所長に直談判

譲渡先が見つからず、タローの収容期限が迫ってきました。期限が過ぎれば殺処分のリスクが高まります。

この状況をなんとかしてほしいと、はぴねすのスタッフは動物愛護センターの所長を訪ね直談判。本来なら、譲渡先が決まっていない収容犬の期間延長はいっさい認めてもらえないものですが、所長は「わかりました。命が繋がる可能性が少しでもあるなら、期間を延長しましょう」と承諾してくれました。スタッフは問い合わせがあった相手に、タローの現状を説明しました。が、この時点で譲渡先は見つかりませんでした。

■「もう無理かもしれない……」

スタッフは絶望的な気持ちになりました。そして、動物愛護センターで真っ直ぐな瞳でスタッフを見つめていたタローを思い出し、やりきれない気持ちにもなりました。

「どうしたら良いんだろう」と問い合わせがあった連絡先の最後の1件に連絡しました。内心「もう無理かもしれない」と諦めかけながら、タローを迎え入れることのハードルの高さを包み隠さず伝え、電話を切ろうとすると、意外な返答が返ってきました。

「家族でいろいろ話し合いました。最悪のケースも想定しています。それでもタローを助けたいんです。我が家で余生を穏やかに過ごしてもらいたい。田舎で近隣とも離れている環境なので、少々吠えても大丈夫です。うちには小さな子どもも先住犬もいません。きっと大変なこともあると思います。ですので、メインの飼い主の家族に加え、そしてサポートする家族の承諾も得ています。つまり、2家族体制でタローちゃんをしっかり最後までお世話します。どうか私たちにタローちゃんを迎えさせてください」

スタッフは頭が真っ白になり、目に涙が浮かびました。そして、この家族の思いを信じ、タローの迎え入れをお願いすることにしました。

後日、タローははぴねすを通して、里親希望者さんと対面しました。タローも運命を感じたのか吠えるようなことはなく、すぐに「僕の新しい家族なの? よろしくね!」と言わんばかりにうれしそうな表情を浮かべていました。

「行き場を失ったワンコの命を助けたい」という多くの人の気持ちと行動が、タローの命を救ってくれました。現在、タローは体調面でも元気を取り戻し、里親さんにしっかりなついて幸せな日々をおくっているそうです。

わんにゃんレスキュー はぴねす

https://ameblo.jp/happines-rescue/

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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