交通事故で半身不随になっても…お腹の子どもを守るため歩道まで這って逃げた妊婦猫 望みは叶わずも命は取り留め、希望をつなぐ
■交通事故に遭った妊婦猫
かあちゃん(年齢不詳・メス)は、2024年2月末、大阪市内で通勤時間帯に交通事故に巻き込まれた猫だった。半身不随になってもお腹の子を守るために、自力で歩道まで這って力尽き、うずくまっていたという。
かあちゃんを発見した人は、かあちゃんを助けようと思ったが威嚇されたため手出しができず困っていた。その時、近くで愛護活動をしている高野さんがポスティングした譲渡会のチラシを見たのを思い出し、藁にもすがる思いで高野さんに電話をかけて助けを求めたという。
高野さんは仕事中だったが、緊急性を感じて現場に急行。保護をした後に、保護活動仲間のWINさんに繋いだ。
「すぐに病院に搬送しました。さくら耳でもなかったし、時期が時期なので妊娠してなきゃええけど…と言った途端、看護師さんが『お腹が膨らんでいるから妊娠しているかもしれない』と。エコーで確認してもらうと、4匹はお腹に入っていて妊娠後期、じきに産まれると言われました。」
獣医師が「赤ちゃんいる!!」と言った時に、WINさんを含め3人が、「母ちゃん!」と声が出てハモったので、かあちゃんという名前になったという。
■緊急帝王切開
かあちゃんは、脊髄を損傷、骨盤がズレていたため、緊急入院することになった。
「頭を打っている可能性がある猫に麻酔はかけられないし、そうこういう間に子猫が産まれてくる。下半身不随で産めるのか?毎日担当医と話し合いました。担当医は、『膣に力は入るから自然分娩にしよう』と言いました。」
一方、事故直後に子猫の心音は低下したが、翌日には心音が戻った。獣医師は、毎日のようにエコーで子猫とかあちゃんの状態を管理してくれたという。
「この段階で、堕胎という選択は私にはありませんでした。母猫が命をかけて、這ってでも逃げて守った赤ちゃんでしたから。」
ところが、3月3日の朝、かあちゃんは高熱を出した。エコーで見ると産道で1匹亡くなっていたため緊急帝王切開することになった。お腹を開けたら、子宮が膿んでいたという。
「子猫にももちろん影響がありました。3匹産まれましたが、呼吸をさせるのが大変だったそうです。獣医師の指示により、カテーテルで2時間に1回人工授乳をしましたが、全員お空へ...」
かあちゃんは、WINさんの家で隔離していたが、数日後に容態が急変し、再入院した。
「1週間後に退院となるまで、病院のスタッフの方が隔離ルームにて強制給餌をして、命を繋ぎながら懸命に治療をしてくれました。おかげで、今は復活しました。」
■歩けるかもしれない!
かあちゃんは半身不随になっていたが、片方の後ろ脚に神経が通い出したようだった。
「もしかしたら歩けるのでは?と思い、希望が少し見えてきました。毎日私がリハビリをしています。
もう片方は、血流も悪く無反応なので、歩けるようになったら断脚をして、3本脚になるかもしれません。」
かあちゃんは、自力で排尿できるのでオムツを履いている。
「履き替えさせる時に怒りますが、普段は撫でて欲しくて、顔周りを撫でられるとゴロゴロ言って甘えています。ゆくゆくは赤い糸を見つけてあげられるように、歩ける希望に賭けてお世話をしています。里親募集をする時は、この子が助かったチラシにきっと意味があると思うので、高野さんの平野ろまねこ会の譲渡会に参加させます。近々実現できると思います。」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)