がんの痛みに耐えるシニアのシーズー犬 近づく命の終わり 不安を和らげるための看取りの日々
2023年11月、福岡県の動物愛護センターにメスのシーズー犬が収容されました。後につけられた名前は「みやちゃん」。推定11歳以上のシニア犬で、飼い主からの迎えを待ち続けていましたが、名乗りがなく収容期限を迎えてしまいました。
みやちゃんのお腹には大きな腫瘍ができていました。足の付け根にも鼠径ヘルニアがありました。日に日にぐったりしてきて、とうとう食べなくなってしまいました。みやちゃんの状況を知り、引き出すことにしたのが福岡県を拠点に保護活動を行うボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)。
知った当日は別の予定がありすぐには引き出しに行けませんでした。そのため、はぴねすと懇意のドッグサロンのオーナーさんが代わりにみやちゃんを引き取ることになり、動物愛護センターの職員が仕事外にもかかわらずこのドッグサロンまで連れてきてくれました。
■「完治は難しいが、削除すれば痛みが軽減する」
動物愛護センターの職員によると、収容された当初のみやちゃんは触ると唸ってかもうとしてきたそうです。
ドッグサロンのオーナーさんもはぴねすのスタッフも覚悟をしていましたが、ここではなぜかかみつきません。異臭を放つ体をきれいにしてあげトリミング。翌朝に動物病院へと連れていきましたた。
獣医師によると、お腹の大きな腫瘍は「乳腺腫瘍」で体中に転移している可能性が高く、このままにしていると激痛で食べられなくなり、普通に生活することができなくなる恐れがあるとのこと。完治は難しいが、切除で痛みを軽減できるとのこと。ここではぴねすの代表は足の付け根にあった鼠径ヘルニアと合わせて手術を依頼しました。
余生はそう長くはないかもしれませんが、少しでも痛みが消えてくれるならと願っての判断でした。
■術後、足取りが軽くなり表情も明るくなった
手術は無事終了しましたが、みやちゃんには貧血気味で入院することに。期間は一週間。退院時に代表がみやちゃんを迎えに行くと、激痛が取れたことからか足取りが軽くなっていました。家に帰ってエサを与えるとパクパク食べてくれ、どことなく表情も明るくなった気がしました。
その後、抜糸が済みはぴねすの預かりメンバーの家で世話をしてもらうことになりました。当初は元気な様子でしたが、ある日、預かりメンバーから「後ろ足がおかしい」と連絡がありました。
■「余命は半年持てば良いほう」
みやちゃんを診てもらうと、がんが骨に転移し、麻痺が出ている可能性があるといいます。さらに、肺にも転移がみられ「手の施しようがない」と。肺の腫瘍は小さいものの「半年持てば良いほう」という厳しい診断でした。
やりきれない思いになった代表。それでもがんばり続けるみやちゃんを見て我に帰りました。これ以上改善の処置ができないのなら、できるだけ痛みを抑えられるよう緩和ケアを決意しました。
痛み止めの薬を飲ませても、体の痛みは強いようで触られることを極度に嫌がりました。オムツをしようにも触ると噛みつき、トイレシーツの取り替えで体を持ち上げようとすれば苦痛な表情を浮かべました。代表とメンバーは連絡を取り、痛みがないようトイレシーツを取る方法を考えたり、体力を付けさせる食事を準備したりと様々な工夫をしました。
やがてみやちゃんの食欲が激減。代表とメンバーは、みやちゃんの処置を違う方法にしたほうが良いのかもしれないなど話し合っていた矢先、預かりメンバーから連絡が入ました。「今、みやちゃんの呼吸が止まりました」と。
「半年持てばいいほう」と言われていましたが、わずか10日でみやちゃんは旅立ってしまいました。
小さな体でがんばったみやちゃん。新しい家族を見つけてあげられなかったことをンバーは悔やみました。しかし、術後に回復したときに一瞬だけ見せた明るい表情を思い出し、「みやちゃんが命の終わりへと近づく不安を、少しでも取り除けていたのなら、ここまでの自分たちのお世話は間違いではなかった」とも思うのでした。
わんにゃんレスキューはぴねす
https://ameblo.jp/happines-rescue
(まいどなニュース特約・松田 義人)