ワンコの保護団体の多くは定期的に譲渡会を開催しています。

SNSだけでは伝わりにくいワンコ個々の性格や様子を、里親を希望する人にリアルで見てもらいます。お見合い的な意味もありますが、譲渡会に参加できるのはおおむね人馴れや他のワンコとのコミュニケーションが進んだワンコのみで、警戒心が強かったり、凶暴だったりするワンコは不参加となることが多いものです。

2023年春、福岡県の動物愛護センターに収容された、元野犬のメスのきくちゃんも、その警戒心の強さから譲渡会に参加できないままでした。きくちゃんの警戒心は他のワンコとは比較できないほど強く、特に人間に引っ張られるリードを頑なに拒み、リード自体を噛み切ろうとしてしまうこともあります。

こんなきくちゃんに「みんなと一緒に譲渡会に行こうね」と優しく応援するのが、保護したボランティアチーム·わんにゃんレスキューはぴねす（以下、はぴねす）のスタッフ。今日もきくちゃんと一緒にトレーニングを続けています。

■近寄れば小さく唸る一方、噛みつくことはなかった

動物愛護センターから保護した当初から、きくちゃんの人間や他のワンコに対する警戒心はかなり強く、人間と目を合わさないどころか「私はここにはいません」とばかりの気配を消して固まっていました。近寄れば「こっちにこないで」と小さく唸り、ときに口を出そうとする素ぶりを見せましたが、しかし実際には噛みついてきませんでした。

そんなきくちゃんの様子を前にスタッフは「きっと怖くてたまらないんだよね。自分の身を必死に守ろうとしているんだよね」と優しく声をかけ、きくちゃんのペースを最優先に根気強く接し続けました。すると、後には「この人は信用できる」と思ったスタッフには、尻尾を振ってくれるようにもなりました。

そして、改めて分かったのがきくちゃんの遊びが大好きな一面。スタッフの家に来た当初は、先住犬にも逆らわず、おとなしく過ごしていましたが、馴れ始めると他のワンコたちとワンプロに興じる姿を度々見せるようになりました。

■過去の譲渡会には不参加。里親希望者さんも現れず…

きくちゃんの初めての人の前での警戒心は以降も続き、一時ドッグトレーナーさんの指導も受けましたが、改善には至りませんでした。そのため、譲渡会参加を目指しものの断念せざるを得ず、里親希望者さんの申し出もないままでした。

しかし、スタッフは特にこの時期のきくちゃんに、手厚くトレーニングを続けています。それは5カ月ぶりの開催となる春の譲渡会に、他のワンコたちと一緒にきくちゃんをどうしても参加させたいからでした。

■スタッフが「今回こそは」とこだわる理由

きくちゃんが保護されてからちょうど1年ほどの時期に、譲渡会は開かれます。そして、多くのワンコの命を救い幸せへと繋いできたはぴねすの10周年を記念する会でもあり、これらの節目としての意味もあるからです。

こんなめでたい日に、根っこはとってもかわいいきくちゃんにもいつか絶対に幸せをつかんで欲しいとスタッフは願っています。譲渡会への参加はその一歩です。

「保護から1年できくちゃんは心身とも大きく成長してくれました。ビビリな性格は相変わらずですが、なんとか譲渡会に参加してほしいと願っています。期待しすぎるがあまり、きくちゃんがみんなと仲良く歩いてくれる姿ばかり想像して過ごしています」

譲渡会は4月29日、福岡県の遠賀総合運動公園で実施予定です。その日が、警戒心強めのきくちゃんの譲渡会デビューになりますように。

わんにゃんレスキューはぴねす

https://ameblo.jp/happines-rescue/

（まいどなニュース特約・松田 義人）