首輪をつけた保護犬 飼い主は名乗り出なかった 猫カフェで第2の犬生スタート 何匹もの猫を救うも忍び寄る病魔
10年ほど前の福岡県内でのこと。首輪をつけ、ぎこちなく歩いているメスのワンコがいました。見つけたのが、地元で猫カフェを営むCafé Gattoのスタッフでした。
放っておくことはできず、ひとまず保護。保健所や警察署などに連絡し、飼い主を探しましたが、残念なことに名乗り出る人はいませんでした。
スタッフはワンコを飼ったことがなかったものの、このワンコが行き場を失い殺処分対象となることだけは避けたく、「これも何かの縁」と家族として迎え入れることにしました。その薄茶色の毛並みにちなんで「きなこ」と名付けてあげました。
■生まれつきの障がいと持病があった
迎え入れた後も、初めて見たときの「ぎこちない歩き」は治らなかったため、動物病院へと連れていきました。獣医師によれば、後ろ脚はおそらく生まれつき変形しており、そのためぎこちない歩きをしているのだろうとのこと。さらに心臓に持病があり、定期的な通院が必要とも。
後には、腫瘍ができ大手術も受けることになったきなこですが、スタッフや獣医師の愛情をしっかり受け止めてくれ、次第に笑顔と健康を取り戻してくれるようになりました。
■行き場を失った子猫を何匹も救ったきなこ
元気になったきなこは、不自由な脚をかばいケンケンしながらもうれしそうに散歩に行くようになりました。
そして、散歩の道中では、これまでに何匹も行き場を失った子猫を何匹も見つけてくれました。猫たちにとっての「命の恩人」です。スタッフが「すごいねー、きなこ」とほめてあげても当のきなこはいたって普通。「私、そんなに大きなことしているの?」と穏やかな表情を浮かべます。
■きなこの体に異変が…
最初の保護から10年ほどが経過し、きなこもすっかりシニア犬となりました。2023年5月頃からは、どうも脚の調子が悪いようで、あれだけ好きだった散歩にも行きたがらなくなってしまいました。そして、あるとき排泄をする際に倒れたため、スタッフは慌てて動物病院へと連れていきました。
獣医師によれば「脚の負担がかかっており、強い痛みがあるかもしれない」と言います。スタッフはいったんきなこを自宅へと連れて帰り、その晩に関係者と「手術すべきかどうか」と相談していました。その矢先、スタッフの横できなこの頭が左側に傾き、右目の黒目が右から左へと繰り返し動き、さらに平衡感覚がおかしくなったのかバタンと倒れてしまいました。
きなこ自身も驚いでいる様子です。「これはまずい」とスタッフは翌朝一番に動物病院に連れていきました。
■1日でも長く生きて欲しい
獣医師に診てもらったところ、脳に腫瘍かできものがあり異常が出ているのではないかと言い、結果的にきなこは入院させることになりました。
スタッフはあのような発作が頻発しないことを、ただただ祈ることしかできません。投薬の効果もあってか、ほどなくしてきなこの体調が回復。動物病院に来たスタッフを見つけ「良くなってきたよ。ありがとうね!」と言わんばかりの表情を見せてくれました。
後日、スタッフはきなこを家に連れて帰ります。スタッフの自宅前にあるきなこが大好きな空き地に出してあげたところ、うれしそうに表情をして落ち着いたそぶりを見せてくれました。
歩くのは難しそうですが、それでもきなこがスタッフや猫たちを大好きなであることには変わりはありません。きなこが大好きだった猫が虹の橋を渡った際には、その猫から離れずにずっとそばにいました。
健康とはいえません。でも自らの犬生をしっかり生き、猫たちの見張り番的お姉さんであり続けるきなこ。1日でも長く生きてね。
(まいどなニュース特約・松田 義人)