9カ月連続赤字「このままで終わりたくない…」 バイトをしながら店舗を維持!?「ストレス解消店」のサバイバル挑戦

日々に忙殺されていると、言葉にできない気持ちのぶつけ場所に悩むことがある。愛知県名古屋市北区にある「ぱりんぱりんハウス」は、そんな感情の受け皿になってくれるユニークなお店だ。

このお店、実はストレス解消専門店。防音室でビンを投げて割ったり、サンドバックを叩いたりして、溜め込んだモヤモヤを発散できるのだ。

■バーの来店客から「ビンを割りたい」と言われて…

オーナーの西脇久展さんは、もともとバーを経営しており、飲食店関係以外のビジネスにもチャレンジしたいと考えていた。

そんな時、訪れたのがコロナ禍。誰もがストレスを抱える状況下となった、ある日、バーに来たお客さんが外出自粛に関するストレスを吐き出し、「ビンを割ってみたい」と吐露。そこで、店のスタッフに店内の壁に向けてビンを投げてもらったところ、思った以上の爽快感を得た。

面白さを感じた西脇さんは、他の破壊系アミューズメントをリサーチ。ヘルメットや防護服などで体を守りながら、防音室で安価にビン投げが楽しめる“ストレス発散店“を作った。

「割れた瓶はリサイクル工場に持っていき、新しいビンはバーで繋がりのある酒屋にもらっています」

安全かつ安く楽しめるお店なら、色々な人に受け入れてもらえるのではないだろうか。西脇さんはそう考えていたが、現実は想像以上に厳しかった。開店当初、来店客は1週間でわずか3人。最長で9カ月連続赤字となった。

その後、徐々に客足は増え、土日祝には30人ほどが来店してくれるようになったが、お店は今も赤字の状態。西脇さんはバーを経営する傍ら、車屋でバイトもし、お店を維持している。

■ストレス解消後の笑顔で「やっててよかった」を噛みしめる

思うようにならない状況を突き付けられ、正直、お店を続けていこうか悩んだこともある。だが、ニーズがないとはどうしても思えなかったため、SNSなどで魅力を配信。より多く人にお店を認知してもらおうと努力し続けてきた。

「ビンを割って防音室から出てこられた時、笑顔になっている方って結構いるんですよね。その瞬間を見ると、嬉しい。ストレス解消になるだけでなく、ビンを割るという、やったことがない経験で高揚感も得られるようです。そういう姿を見ると、やっててよかったと思うんです」

お店では素手でビンをコンクリートブロックに投げる「ビン投げ」(大人12本/500円)の他、鉄筋でビンをフルスイングする「ビン砕き」(大人15本/750円)も体験可能。

ビン割りが体験できる防音室ではBluetoothスピ-カーで好きな音楽を流すこともできるため、より自分の世界に入り込みやすい。

「壊している感がMAXなのは、ビン砕き。ビン投げは12本コースだけでなく、MAX45本のコースもあるので、ストレスの度合いや体調に応じて選び、楽しんでほしいです」

■明日の活力を与えられる場所になりたい

物を壊すことは日常生活の中で、“やってはいけないこと”。そのため、お店に足を運ぶことを躊躇する人もいることだろう。そんな方の心理を理解した上で、西脇さんは「まずは一度、来てみてほしい」と訴えかける。

「合う・合わないはあると思うけれど、壊す=ダメなことという先入観を捨てて楽しんでもらえたら嬉しい。きっと思いの他、楽しいと感じてくれる人は多いような気がします」

今では人気なカラオケボックスやバンジージャンプだって、広まる前は同じように人々から受け入れられるか分からなかったはず。そう思うからこそ、西脇さんは試行錯誤しながら、できる限りお店を維持しようと奮闘する。

「訪れる人にとって、ここが明日の活力になったら嬉しい。その人が抱える悩み自体は解決してあげられないけれど、気分転換にはなると思う。スッキリしたから明日も頑張ろうと思ってもらえたらいいですね」

今後はより集客に力を入れ、経営を安定させたい。そして、ゲーム性があるメニューも取り入れるなど、新しい挑戦もしていきたい。そう意欲を燃やす西脇さんの店舗作りから、今後も目が離せない。

▽「ぱりんぱりんハウス」

住所:愛知県名古屋市北区平安2-2-8 1F

営業日:水、土、日、祝

営業時間:13:00~21:00(※水曜のみ13:00~22:30)

(まいどなニュース特約・古川 諭香)

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