昨年1年間、動物虐待の摘発最多 目撃者の通報は増加しているが…動物愛護ボランティア「摘発は、氷山の一角」
犬や猫などの動物を虐待したとして、昨年1年間で警察が摘発した事件が181件を数え、統計を開始した2010年以降で過去最多と警察庁が今月11日に公表。前年より15件増え、摘発件数のうち犬と猫への虐待事件が162件と全体の9割を占めているとのこと。これもコロナ禍を経て、近年のペットブームを背景に虐待事件が増加傾向にあるとみられています。また虐待は飼い主ではなく、近隣住民など第3者による通報で発覚するケースが多いとか。
今回警察庁が公表した動物虐待の摘発件数に、東京を拠点に動物愛護ボランティアとして活動中の高沢守さんは「摘発されているのは、(動物虐待の)氷山の一角」と指摘します。自身も猫などの虐待問題にも取り組み、SNSで情報発信や啓発活動を続けているという、高沢さん。これまで遭遇した虐待事案などについて、お話を聞きました。
■SNSに動物虐待の動画や目撃情報の投稿 警察に通報する人たちが増加か
--昨年1年間で警察が動物愛護法違反容疑で摘発した事件が過去最多に。どう考える?
「動物虐待は昔からあったと思いますが、事件化されなかっただけ。最近はSNSを通じて動物を虐待する動画や虐待の目撃情報といった投稿も目立ってきて、目にした方々からの通報が増えてきて警察も動くようになったと感じます。今までは動物だからということで見逃していた人たちや、近所の手前犯人は知っているんだけど、大ごとにしたくなかった人たちが大半だったかと。また動物を飼う人が増えたから虐待件数も増加しているというのもあるでしょう。とにかく虐待の摘発事件が増えたのは、動物犯罪への意識が高まってきたと考えます」
--また昨年秋、東京都足立区の荒川河川敷でイノシシやシカの脚を挟んで捕獲する狩猟用のわな「トラバサミ」が見つかった事件について、情報発信や啓発活動に取り組まれましたが。
「トラバサミが荒川河川敷で見つかったのは9月26日夕方。地域猫のお世話をするボランティアらが発見し、その1週間ほど経ってからわなにかかって負傷した猫が保護されました。警察も鳥獣保護管理法違反や動物愛護法違反の疑いで捜査していますが、いまだ犯人は捕まりません。
とはいえ、事件を受けて国土交通省が河川敷に『動物虐待は犯罪です』と啓発する看板を立ててくれました。ただ看板も事件が起きた周辺に限られており、可能であれば河川敷全域に啓発看板を立ててもらいたいものです。というのも、河川敷を私がパトロールすると、必ず猫がいるスポットがあるんです。猫が増えてしまったのも、河川敷に猫を遺棄する人がいるから。遺棄、虐待を未然に防ぐためにも看板をはじめ、防犯カメラなどの設置を強く訴えます」
■「トラバサミ」事件に、猫の餌に毒を盛られた事案など…動物虐待対応の専門機関「アニマルポリス」全国設置を
--このほか、保護活動をされていて事件化されていないが虐待だと考えられる事案にこれまで多数遭遇したとか。
「東日本大震災を機に10年ほど、東京から赴いて福島県の原発事故が起きた周辺で猫のTNR(Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻すこと)活動に取り組んでいますが、山間部に行くと足のない犬や猫がいます。それは全て人間が仕掛けたトラバサミにかかり、足をなくした子たちです。福島に限らず、地方に行くと多い事例かと思います。
また住んでいる東京でも、お外の猫たちが餌に毒を盛られ、死んでしまった可能性が高い事案もありました。あくまでも警察庁が明らかにした摘発件数の181件は氷山の一角。今も近所で起きた場合には、周囲の人間関係を気にして通報できないことも多々あります。事件化されないものも含めたら、虐待事案はもっと多いはずです」
--今後動物の虐待事件への警察の対応について、期待していることを教えてください。
「一番理想なのは、日本全国に動物虐待について対応する専門機関『アニマルポリス』ができること。とはいっても、動物虐待に関する摘発事件が増えているわけですから、警察もさらに動物犯罪への意識を高めていただければと期待しております」
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)