「あの中に入ると捕まる」捕獲器を警戒する迷子猫 猫と人の知恵比べ、25日後の結末は

2023年11月、民家の縁側の窓から飼い猫がスルッと外へと出てしまいました。名前は「アルさん」。グレーの毛並みが特徴の気品あるメス猫です。

外に出てしばらくの間、民家の庭で過ごしていました。飼い主さんはアルさんが遠くに行かないよう、できるだけ刺激しないように捕獲器を仕掛けました。しかし、捕獲器には野良猫が入ってしまい、アルさんは姿をくらましてしまいました。

■強い警戒心を受け捕獲器をいったん撤去

このアルさん、もともとは地域の野良猫出身でTNRの経験がありました。

TNRを受けてからも、この家にアルさんが毎日エサを食べに来るため、家主さんはやがて「飼い猫」として迎え入れ一緒に生活していました。

これらのバックボーンから、アルさんは家に戻ってくることが考えられましたが、近隣の土地勘があり、TNRで捕獲された経験があるため捕獲器の意味も認識しているはず。放っておいて事故にでも遭ったりしたら大変です。家主さんは猫のサポートを行う会社「ねこから目線。」に捜索を依頼しました。

スタッフは過去の経験から「一般的な捕獲器はいったん撤去したほうが良い」と判断。その代わり、付近にカメラとエサを置き、アルさんが現れてくれることをしばし待つことにしました。

■カメラにアルさんが映り込んだものの…

翌日、カメラをチェックしてみたところ、野良猫たちと混ざってアルさんも一緒に画像に映り込んでいました。スタッフは夜間に「警戒心強い子向け捕獲器」を設置。張り込み捕獲を試みましたが、現れてくれませんでした。

明るくなった後、周辺のカメラを改めて確認すると、この晩は付近に現れたものの、捕獲器を発見したのか、引き返してしまったようでした。以降カメラにアルさんの姿は映り込まなくなってしまいました。

■またも捕獲器に気づき姿を消した…

想像以上に警戒心が強いアルさん。遠くに行ってしまったことも想定し、迷子猫捜索のチラシも作成し、ポスティングして情報を募ることにしました。

すると、程なくして110メートルほど離れたエリアの複数の家から、アルさんらしき猫の目撃情報が寄せられました。スタッフは目撃された付近にカメラを設置。ここでも野良猫が多く映りましたが、その中にまたしてもアルさんの姿が。スタッフはこのエリアでも警戒心の強い猫向けの捕獲器を設置しましたが、またもやアルさんはそれに気づいてしまいました。

なかなか手強いアルさん。スタッフは作戦を再考することにしました。

■「アルさん捕獲器馴らし作戦」へ

カメラ映像でアルさんの去っていった方向の先には空き家があります。「アルさんはこの空き家に来るかもしれない」と考えたスタッフは、そこにエサとカメラを設置。すると、この空き家付近にアルさんが現れたことがわかりました。

スタッフはまずは捕獲器馴らしを試みました。板状ワイヤーにエサを置き、それを食べてもらうところからスタート。徐々に、この板状のワイヤーを捕獲器風の形状に近づけていき、「これは猫を捕まえるものではありませんよ」と認識させた後、一気に捕獲するというやり方です。

■ついに捕獲。25日ぶりの帰宅を果たした

「アルさん捕獲器馴らし作戦」は10日もの時間を要しましたが、見事アルさんが捕獲器に入ってくれました。最初の脱走から25日。スタッフは「長かったー」と汗をぬぐいつつ、長期間捕獲に協力してくれた家主さんにお礼を伝えました。

家に戻ったアルさんは、久々のお家に安心したのか家主さんにベッタリ。「もうしょうがないなぁ。もう絶対に外に遊びに行かないでね」と、愛猫をつい許してしまう家主さんでした。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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