迷子猫の捜索中に見つけたシャム猫 下半身不随で厳しい診断 「生きたい」という思いが奇跡をもたらした
主に関西エリアを中心に猫にまつわる困りごとをサポートする会社「ねこから目線。」では、日頃からTNR、迷子猫の捜索などを行なっています。こういった活動の場面ではたびたび地域で暮らす野良猫たちに出くわすことも多くあります。
2023年、とある迷子猫の捜索中、オスのシャム猫を見つけました。遠目から見れば、のんびりたたずんでいるように見えましたが、近づいてみると、身動きを取ることができず倒れたままの子。スタッフに「シャー」と威嚇します。
「なんか変だな」とスタッフは思いましたが、よく見るとシャム猫の周辺には出血の跡。このシャム猫を保護することにし、すぐに動物病院へと連れていきました。
後に付けられたこのシャム猫の名は「殿くん」。獣医師の診断では、膀胱に異常があり「翌日まで命が持つか分からない」とも。この診断にスタッフは言葉を失いましたが、点滴などの応急措置をしてもらい、なんとか生き抜いてくれることを願いました。
■一命を取り留めるも下半身付随という障がいが残った
なんとかその夜を乗り越え、後日殿くんは別の動物病院へ転院しましたが、さらにわかったことがありました。
動けなくなったのは、なんらかの強い衝撃を受け神経が損傷したようです。下半身が全く動かず、今後も不随のままだろうとも。スタッフは診断結果と依然として辛そうな殿くんの姿に胸が締め付けられました。
それでも「生きたい」という殿くんの強い思い、動物病院での医療ケアのおかげもあり、少しずつ回復。スタッフの不安な気持ちを和らげてくれたのは殿くんの食欲でした。「いっぱい食べて元気になって」とスタッフは声をかけ続けました。
■「迎え入れたい」という里親希望者さんが現れた
4カ月の入院を終えた殿くんは、大阪の譲渡型の保護猫カフェ「猫の惑星にゃーくる」に入店。人馴れが不十分、下半身不随で圧迫排尿が必要という殿くんでしたが、この猫カフェのスタッフからのたっぷりの愛情を受け、少しずつ新しい環境になじんでくれるようになりました。
猫カフェ入店から2カ月ほどが経過したある日、「殿くんを迎え入れたい」という里親希望者さんが現れました。この方は「圧迫排尿」が必要な猫の飼育経験があるとのこと。一定期間のトライアルを経て、殿くんは見事この方の家で第二の猫生を過ごすことになりました。
■殿くんと心ある人たちの思いが一つになった
健康体の猫に比べれば、ハンデがある猫は里親さんとのマッチングのハードルが上がりがちです。
しかし、殿くん自身の「生きたい」という強い思い、動物病院の獣医師、猫カフェのスタッフ、殿くんを保護しずっと見守ってきた「ねこから目線。」スタッフ、そして「そんな殿くんだからこそ迎え入れて、お世話をしてあげたい」という里親希望者さんの思いが全て一つになり、殿くんは無事に第二の猫生を掴むことができました。
下半身付随というハンデがあり、日常的に特別なケアが必要ではあるものの、ここまで生き抜いた殿くん、その第二の猫生はきっと素晴らしいものになるはず、と信じたいです。いつまでも優しい里親さんの元で幸せに過ごしてほしいと願うばかりです。
(まいどなニュース特約・松田 義人)