TNR後も捕獲器に戻ってしまう 訴えかけるような2匹の子猫にスタッフは泣いた 「連れて帰って幸せへつないであげよう」
2021年夏、和歌山県・紀の川の河川敷に、きょうだいと思しき2匹の猫が彷徨っていました。後につけられた名前は「いちろー」と「じろー」。
河川敷付近には多くの野良猫が暮らしていますが、いちろーとじろーは状況から推測するにもともとは飼い猫の様子。近隣の人によれば、3カ月ほど前から2匹の姿を見るようになったことから、飼い主にこの河川敷に棄てられたようでした。
2匹とも重篤な持病がありました。いちろーは先天的な日光過敏症のようで耳が真っ赤にただれ、じろーも耳ダニによる病気があり皮膚はボロボロ。
■野良猫が多く暮らす河川敷を捨て場に選んだ?
飼い主は「どうせ野良猫が多い河川敷なのだから、2匹もうまくやっていけるでしょう。じゃあね」といった気分だったのでしょうか。
身勝手に捨てた場面を想像すると胸が苦しくなりますが、ボランティア団体・城下町にゃんこの会 和歌山(以下、城下町にゃんこの会)が2匹を引き取ることにしました。とは言っても、もともとこの2匹の存在を知っていたわけではなく、この河川敷周辺でスタッフがTNRを実施した際のとあることがきっかけだったと言います。
■何度も何度も捕獲器に戻る2匹
この河川敷周辺で暮らす大半の猫たちと同様に、捕獲後、適切な避妊去勢手術を施した後、いちろーもじろーも元いた場所へリターンするつもりでした。しかし、2匹はリターンの際も捕獲器から出してもまた入り、これを何度も繰り返しました。
「この河川敷で暮らすのは嫌なんだ」「元いた家に帰りたいんだ」と2匹が訴えているように映り、スタッフの1人が泣き出しました。
「もうあかん。この2匹は連れて帰ろう。そして、お世話をして絶対に幸せへと繋いであげよう」
■後に回復。安心した表情を浮かべるようになった
このような経緯から、いちろーとじろーは保護されましたが、スタッフの献身的な世話と適切な医療ケアによって2匹はやがて元気を取り戻してくれました。2匹とも安心した表情を浮かべてくれるようになり、悲惨な生活を感じさせないほど成長してくれました。
後には2匹を一緒に迎え入れてくれる里親希望者さんと出会い、見事「ずっとのお家」をつかむことができました。
あの日「連れて帰ろう」と言ったスタッフは巣立っていく2匹の姿をいつまでも見ていました。
いちろーもじろーも里親さんからのたっぷりの愛情を受けながら、不安のない幸せいっぱいの日々を送っているとのこと。2匹の穏やかな生活が長く続いてくれると良いなと思いました。
(まいどなニュース特約・松田 義人)