副業先の労働時間、もしかしたら「時間外」扱いになるかも? 気をつけたい割増賃金のルール【社労士が解説】

転職・求人サイトとして有名なdoda(デューダ)が、公式サイトで2024年1月29日に「副業をしている会社員の割合は? 副業の実態調査【最新版】」という記事を公開しました。このなかで、15,000人の社会人を対象とした副業に関するアンケート結果が掲載されています。

アンケート結果によると、副業をしている人の割合は今回(2023年度調査)で8.4%となっており、前年度調査の8.2%、2021年度調査の8.0%と比べて増加し、徐々に副業が広まっていることがわかります。また、副業をしているタイミングについては、休日や勤務終了後と回答した人が多いようです。

このように、正社員として働きながら副業をおこなう場合、通算の労働時間が増えてしまうことが多いのですが、労働時間に関して注意すべき点があることはご存じでしょうか。どのような点に注意すべきなのか、社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞いてみましょう。

ー副業で労働時間が増える場合、どのような点に注意すべきですか

大きく分けて2点注意しなければなりません。1つは時間外労働に対する割増賃金です。労働基準法では、1日8時間、1週40時間を法定労働時間と定めています。これは会社ごとに当てはまるのではなく、個人に紐づきます。

仮にA社で正社員として1日8時間働いている人が、副業としてB社でアルバイトをした場合、B社での労働時間は時間外労働扱いとなり、通常の賃金に加えて2割5分以上の割増賃金が発生します。具体的にはB社での時給が1,000円だった場合、割増賃金を含めて1,250円以上が受け取れます。

ー割増賃金については、副業がアルバイトの場合も適用されるのですか

雇用契約を結ぶ場合は適用されるため、正社員・契約社員だけでなくパート・アルバイトも対象です。この割増賃金に関しては、雇用契約の内容や残業の発生状況によって、金額やどちらの雇用主が支払うのかが変わってくるのでけっこう複雑です。

ー実際、副業先に割増賃金を要求するのは難しいのではないでしょうか

割増賃金が発生すると雇用してもらえないと考える労働者が、正社員として働いていることを隠して応募することが多いそうです。ただこの場合、労働者が副業を辞める際に事実を明らかにし、後から割増賃金を要求することもありえるので、雇用する側は面談などで事実関係の確認が必要でしょう。

ー個人事業主やフリーランスであれば労働時間は気にしなくてもいいのですか

個人事業主やフリーランスの人は、割増賃金に限っていえばその通りです。ただ、注意するべき点の2つ目、健康面に配慮する必要があります。副業に時間を割くあまり、本業のパフォーマンスを落としていては本末転倒です。この点は、企業側が副業を解禁しない理由としてあげる場合もあります。

また企業側は、労働安全衛生法で労働者に対して安全配慮義務があると定められています。仮に会社に報告せずに副業をしていた社員が、急病で倒れた場合には、安全配慮義務を怠ったと判断される可能性もあります。

ー副業を解禁するには企業側に大きなリスクがあるように思います

厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、企業に対して労働時間管理や健康管理を行うように呼びかけています。20ページにわたるガイドラインなので、通常業務に追われる人事・総務担当者が理解するには困難かもしれません。

ただこのガイドラインに従い、企業は副業・兼業規定を作成し、従業員に周知することが求められます。

ー副業をする従業員が注意すべき点はありますか

本業として働く先と、副業として働く先に正直に話をすることが大事です。隠して働いていて、何か後からトラブルになっては問題ですから。

ーちなみに副業を上手く本業に取り入れている企業もあると聞きましたが

例えば、副業としてSNSマーケティングをやりたいと言っている社員に対して、就業時間内に副業をしてよいとした企業があります。社員が副業でスキルアップできれば、本業にも活かせると考えたからです。就業時間内であれば、別途労働時間を把握する必要もないですし、企業にとっても労働者にとってもWin-Winといえる形かもしれません。

副業解禁が進むなか、企業側も労働者側も詳細を把握していないケースが多く見られるようです。しかしトラブルになってからでは手遅れのため、疑問に思うことがあれば、事前に調べたり、専門家に相談しつつ、副業を検討してみてはいかがでしょうか。

◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 

人脈ゼロから事業を成長させ200社以上の経営を支え、「社労士オタク」と称されるほど就業規則に熱中。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。個性を活かし幸せに働く職場環境づくりに貢献している。

(まいどなニュース特約・八幡 康二)

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