TNR現場で保護された人馴れ猫 仲良し猫と一緒に優しい飼い主さんのもとへ 保護団体が提言する「TNRと保護」のあり方

2023年夏、和歌山県のとある住宅地で野良猫たちのTNRが実施されました。複数の猫が捕獲されましたが、その中の1匹でキジトラのオス「とらお」は最初こそ人見知りする一方、すぐに馴れてゴロニャーン。

推定1歳ちょっとでおとなしい性格でもあるため、TNRを実施した地元の団体・城下町にゃんこの会 和歌山(以下、城下町にゃんこの会)のスタッフは、数ヶ月後に「とらおの人馴れぶりなら、保護して家猫にしてあげたほうが良いだろう」と考え直し、きょうだいとおぼしき「ちゃた」という猫と一緒に改めて保護。たっぷりの愛情を与えてくれる家族を探すことを目指すことになりました。

■人馴れ抜群、他の猫との社交性もバッチリ

預かりボランティアさんの家にやってきたとらおは、初めての「家」の中で、キョロキョロオドオド。ちゃたと身を寄せ合いながら少々緊張する素ぶりを見せました。しかし、安心して過ごせる場所だと悟ってくれてからは、すぐに持ち前の明るく甘えん坊ぶりを発揮してくれ、人間はもちろんこの家にいる先住猫とも仲良く過ごすようになりました。

何より大好きなのはおやつの時間。その時間になると、預かりボランティアさんのほうに大好きな「ちゅーる」を求めて「そろそろですよね?」と無言の訴え。望み通りにすると、まん丸の目をさらに丸くしてうれしそうに食べてくれました。

■きょうだい一緒に「ずっとのお家」をゲット

穏やかな性格だけでなく、健康状態も良好だったことから、2024年に入って里親募集を開始。すぐに里親希望者さんが現れ、きょうだいのちゃたと一緒にこの方の家に迎え入れられることになりました。

ここまでとらお・ちゃたのお世話をしてきた預かりボランティアさんは、2匹が巣立っていくことを寂しく思いながらも、見事に「ずっとのお家」を見つけてくれたことを祝福。「それもこれもとらおとちゃたが、お利口さんだったからだよ」と褒めてあげました。

■好例を前に改めて考える「TNRと保護」の重要性

かつては外で暮らし続け、TNR現場から見事幸せをつかんだとらお・ちゃたですが、猫を取り巻く全体を俯瞰で見てみれば、これはとても良いケース。

城下町にゃんこの会のスタッフはこの幸せ報告に加えて、改めてTNRと保護の重要性を語ってくれました。

「TNRや保護に関しては人それぞれさまざまな考え方があると思います。それらのどれが正しく間違いだとは言いませんが、現状の問題は『外で生きる猫が多すぎる』ということです。

特に毎春の子猫の出産時期になると、保健所や動物愛護センターは生まれたばかり子猫であふれ、大半がうまく育たずに亡くなるか殺処分となります。さらに、空き地や路上などではその何十倍もの子猫たちが亡くなっています。

そして、母猫も年に2度の出産で体はボロボロとなり短い一生を終えます。こういった不幸な猫を減らすことがまずすべきことで、そのためにTNR、あるいは保護が重要だと考えています。

とらおやちゃたの他にも当会では、1300匹の命を預かり幸せへと繋いできました。これからも殺処分や病死する猫がいなくなるための活動を続けていきます」

人間社会の都合で起きてしまう猫の悲劇をこれ以上増やさないためにも、TNR や保護の重要性はさらに多くの人が知り、議論を重ねることが大切だと思いました。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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