ペット不可の市営住宅 ケージの中の子猫を残し飼い主は失踪した 必死に生き抜いた5匹に訪れた幸せ
2023年12月、和歌山県田辺市の市営住宅の1室に猫が置き去りにされました。
聞けば、飼い主は6年ほど前、ペットショップでオス・メス混在の複数の猫を購入。その後子猫が生まれ、別のもらい手へ巣立っていったと言います。しかし、その半年後には再び母猫が5匹の子猫を出産。
この2度目に生まれた5匹の子猫たちはもらい手は見つかりませんでした。そして、この子猫たちは全てメス。元飼い主は「これ以上、猫が増えたらまずい」と子猫たちを全てケージの中に閉じ込めました。
そして、ケージの中に入れたままの生活が5年ほど続いた後、突然飼い主が姿をくらましました。のちに行政手続きなどにより、第三者がこの猫たちのお世話をすることになりました。
■元飼い主の行動はどれもが無責任
そもそも市営住宅がペット不可であること、そして、オスメス混在で過ごさせながら適切な避妊・去勢手術をしていなかったこと、生まれてきた子猫をケージに閉じ込めたままにしたこと、さらに姿をくらましたこと…どれを取っても無責任かつ身勝手さに憤りを感じますが、不幸中の幸いだったのは、ケージの中で暮らしながらも、猫たちが生き抜いてくれたことです。
このことを知ったボランティア団体・城下町にゃんこの会 和歌山(以下、城下町にゃんこの会)のスタッフは、必死に生き抜いてきたこの5匹の猫たちを幸せへと繋ぐべく保護することに決めました。
■ケージの外に出たことで姉妹が言い争うように…
スタッフが市営住宅の現場に保護に出向くと、猫たちはケージの中から「あなた誰?」といった様子で警戒するようにこちらを見ていました。
「もう大丈夫だよ。ここから外に出て、思いっきり遊び回れるお家を見つけようね」とスタッフは優しく声をかけ、1匹ずつケージの中から解放。その後、動物病院に連れていき検査をしてもらいましたが、幸いいずれも健康優良児。満足な運動もできなかったことを考えれば奇跡とも言える診断結果でした。
ただし、問題はその後。1匹1匹は良い子ですが、ケージの外に出たことで、一緒にいた姉妹の猫をお互いに威嚇し合うようになってしまいました。その様子は、「もしあのケージの中に戻るんだとしたら、お前が行け」「いや、お前のほうが行け」と言わんばかりにも映り、スタッフは心を痛めました。
■5匹別々にひとりっこ状態で幸せを掴んだ
しかし、城下町にゃんこの会のブログやSNSなどで、この5匹の子猫の話を紹介したところ、続々と里親希望者さんの名乗りが上がり、1匹ずつバラバラに「ずっとのお家」をつかむことができました。しかも、どの家にも先住猫がおらず、ひとりっこ状態で里親さんの愛情を独り占めできる環境でした。
かつて、劣悪な環境で5年も過ごした5匹の猫それぞれが、今では自由に過ごし、そして里親さんにスリスリゴロゴロの生活を送っているとのこと。それを聞いたスタッフは「どの子も幸せになってくれて本当に良かった」と胸を撫で下ろしました。
(まいどなニュース特約・松田 義人)