「引越し先、飼えないから引き取って」高齢女性から棄てられた14歳のシニア犬 預かりボランティアと安息の毎日 第2の犬生へ朗報待つ
2023年12月、保護団体・アイドッグ・レスキュー隊のもとに、動物愛護センター経由で女性から連絡がありました。
「犬を引き取って欲しい」という女性からで、理由は「今の家(マンション)を出てアパートで暮らすことになったが、そこでは犬が飼えないから」と言い、さらに引っ越しは3日後だとも。電話を受けたスタッフは愕然としました。
女性とワンコの年齢を尋ねると、女性は80歳を超え、ワンコは14歳だとも。ということは、この女性が60代の頃に子犬で迎えたということになります。
スタッフは無駄だと思いながらも「後見人がいない場合、60歳を超えたら子犬を迎えてはダメなんですよ」と、保護団体として伝えるべき最低限のことを伝えました。そして、「3日以内って…私たちはお金と引き換えに引き取る業者でもないです」とも伝えました。
しかし、14歳という高齢のワンコを保護する団体は多くありません。断れば行き場を失うことになるため、緊急に引き取ることにしました。
■40代の息子との二人暮らしだった
後日、女性の家にワンコを引き取りに行くと、驚くことがありました。女性が高齢となり単身で過ごしているのだと思っていましたが、40代ほどの息子と2人暮らしだったのです。さらに、当のワンコは明らかにきちんとした世話がなされていなかった様子。スタッフは複雑な気持ちになりました。
ともあれ、「引き取る」と決めたからには、今すべきことはこのワンコを世話をし、幸せな晩年へと導いてあげることです。ワンコは薄茶色の毛並みが特徴のシュナウザーミックスの「マロン」。元の家でこの名がつけられていたようで、スタッフもそのままの名前で呼ぶことにしました。
■シニア犬でも元気いっぱい
マロンを保護した後、スタッフの新人トリマーさんに依頼し、まずは体をきれいにしてもらいました。
新人トリマーさんは、トリミングだけでなく動物病院にも連れていってくれ、最低限の検査をしてくれていました。歯があまり残っていないことと、多少の心雑音がありましたが、月齢相応の健康状態でした。去勢手術も実施し、マロンはしばらくの間、預かりボランティアさんの家で過ごすことになりました。
14歳というシニア犬のため、覚悟をしていた預かりボランティアさんでしたが、マロンは新しい環境に気負うことなくすぐにお家の中を探検。ソファの上から飛び降りたりする様子も見せてくれ、かなり元気なワンコであることがわかりました。
■マロンはお星様になった
散歩も大好きで、上手に歩いてくれました。日差しを浴びながら気持ち良さそうに歩くその姿を見ると、ほっこりした気持ちになるスタッフでしたが、長時間歩かせるわけにもいかず、日々15分程度のゆるい散歩を続けていました。
散歩を終えると、マロンのお休みタイム。気持ち良さそうにスヤスヤ眠るマロンを前に、預かりボランティアさんはたびたびこう話しかけていました。
「この年齢だけど、最後まで諦めずに『ずっとのお家』を探そうね。それまではここがマロンの『家』だから安心して過ごしてね」
しかし、マロンにとってこんな穏やかで夢のある日々はそう長くは続かず、保護から約3カ月後に虹の橋を渡っていきました。
高齢で飼育放棄されたことを思うと悔しさが込み上げます。しかしそれでも犬生の後半で心ある人たちと触れあえ穏やかな日々を送れたことを、マロンがお空の向こうで喜んでくれていると良いなと思いました。
(まいどなニュース特約・松田 義人)