こじれた夫婦関係…修復か離婚か、どう判断する? 専門家らが考える「一発アウト」のサインとは

夫婦関係がこじれてしまった場合、離婚か関係修復か、どちらを選べばよいのかわからないという方もいるでしょう。今回は、経験豊富な4名の夫婦カウンセラーから、修復可能な基準や一発アウトという離婚の基準などを聞きました。また、夫婦関係に悩む方々にとって、夫婦カウンセラーとはどのような存在なのかについてもお話しいただきます。

■男性のカウンセリング依頼が増加中

--カウンセリングを依頼される方の男女比はどれくらいですか。

すみよし:カウンセラーによって異なりますが、私の場合は男性が多いです。

渡辺:最近は男性が増えたと思います。男性からのお申込みで夫婦ペアカウンセリングを行うことも増えました。

--男性からの相談が増えたというのは、社会的な変化も関係しているのでしょうか。

高草木:それはあると思います。女性側のモラハラも多くなってきているようなので、それに対し「助けを求めていいんだ」「相談してもいいんだ」と行動に移す人が増えてきたのではないでしょうか。

大野:男性だと「女性の心理が知りたいから」と女性カウンセラーに相談する方も多いです。

--みなさんは女性ですが、どのようなスタンスでカウンセリングに臨まれているのですか。

高草木:女性の相談者から「私の味方になって旦那に言ってやってください」というスタンスでご相談に来られる方もいるのですが、私としてはそれはできない。

すみよし:それはどちらかといえば弁護士、代理人の進め方だよね。

高草木:たまにそういう方がいらっしゃるので、必ず最初に「私はどちらかの味方ではなく、立場的にはお二人の間の通訳として、かみ砕いたりわかりやすくして双方に伝える夫婦カウンセリングスタイルです」と伝えています。

■修復か、離婚か。その見極めは?

--相談者自身が「どうしたいかわからない」といった場合には、修復か離婚かどのように見極めるのでしょう。

大野:修復した方がよいケースは、話し合いで何とかなるケースだと思います。価値観の不一致や、お互いの勘違い、受け取り方の違いであれば修復できるのではないかと思うんです。

私自身の経験談なのですが、女性関係、ギャンブルや暴力が理由なら、我慢せず、相手が変わることも期待せず離婚して自分の幸せをつかんだ方がよいのではないかと思ってしまいます。

すみよし:モラハラの場合は、「自分が悪いから相手が怒るのだ」と思わされてしまうので、まずはそこに気付いてもらうことと、離れた方がいいのでは? というお話をすることが多いです。

高草木:私たちは言語を持っているのだから、それを使えばよいだけの話であって暴力は一発アウトです。

暴力も長年のモラハラもアウトではあるのですが、先ほど(大野)まり子さんが言ったように、話し合いはしたのかと。腹を割った話し合いを重ねたうえで離婚というのなら仕方ありませんが、そこまで話し合いをしたことがないのなら、まだ離婚のレベルではないでしょう? まだいくらでも話し合えるんです。

渡辺:理想は穏やかな話し合いができる夫婦になることじゃないですか。感情的になって泣いたり怒ったりすると相手には本当の思いは伝わらないのではないかと思います。

みなさんの話と重複しますが、身体的に傷つけられたり、相手が重度のギャンブルやアルコール依存症の場合は難しいですよね。我慢や無理は長続きしないので、頑張りすぎる必要はないと思います。

大野:浮気の1回や2回は仕方ないこともあるかもしれませんが、不特定多数と繰り返す人は依存に近いですよね。

■選択肢を提示するのが夫婦カウンセラーの仕事

--この4名の間では、修復と離婚に対する共通認識が見えたのですが、他のカウンセラーさんに相談することで、相談者の選択が変わることもあるのでしょうか?

すみよし:「他のカウンセラーにはこう言われました」と何名かに相談している方もいらっしゃるようです。きっとこの4人の中でもそれぞれ違うと思うので、自分に合う人に相談すればいいと思いますけどね。

高草木:カウンセラーによっては自身の経験をもとに感情移入しすぎる余り「こうした方がいい」と決めつけてしまう方もいるようです。

でも私たちのスタンスというのは、私たちが相談者の選択を決めるわけではないということ。話をよく聞いて「こういう方法もありますよ」と提案して、ご本人に考えてもらうんですよね。

大野:私たちは後悔してほしくないからこそ、ご自分で決めてほしいんですよ。私たちが決めてしまって後から「こんなはずではなかった……」と思われても責任が取れるわけではありませんから。

夫婦カウンセラーはいろいろな案を出す人ではあるけれど、もちろん強制はしませんし、最終的に決めるのはあなたです、とお伝えします。

すみよし:いろいろなケースを知っているので、似たようなケースの場合に「こうした人がいた」「別の方法をとった人もいた」とお伝えする。そのうえで、どれかを選んでもいいし、全く別でもいいし、とにかくやれることは全部やりましょう、という思いです。

高草木:選択肢を並べて、「私(僕)はこういう方向がいい」と決まったら、それに向けて全力でお手伝いをします。

渡辺:カウンセラーの良さはたくさんの事例を知っていることですからね。たくさんの事例を見ているので傾向がわかる。一般論でいうとこうした方がいいかな……という傾向はお伝えしても押し付けたりはしません。

大野:正直、何が正解かというのはご本人が決めることです。たとえば、「離婚してすごく幸せだ」と決めるのも「頑張って再構築して幸せだ」と決めるのもご本人なのです。

とにかく、私たちはご本人を真ん中にして常に寄り添う伴走を心がけている4人です。

■夫婦カウンセリングで効果を得やすいのは「素直な人」

--夫婦カウンセリングの効果を得やすい人と、そうでない人の違いについて教えてください。

大野:素直に受け入れてもらえなければ、どんなアドバイスをしても全く変わらないです……。

すみよし:モラハラをする側ってなかなか変わらないですもんね。相手が悪い理由を1時間並べたりして。

渡辺:「でも」「だって」と反論が来ますね。素直な人が一番幸せになる(笑)。

--相手を変えようとする人は難しいのかもしれませんね。どちらかというと、モラハラを受けている人の方がカウンセリングを機に変わりやすいのでしょうか。

すみよし:「変わりたい」と思って自分が変わることができる方ですね。相手が変われば自分が変わると思っている方も多いのですが、順番が逆で、まずは自分が変わらなければ。

■やはり夫婦問題は早期発見、早期治療

--日本はカウンセリング文化が根付いておらず、困っているにも関わらず夫婦カウンセラーにアクセスする人が少ないように感じます。どのような方に夫婦カウンセリングを受けてほしいですか?

渡辺:やはり夫婦問題は早期発見、早期治療なんですよ。あまりこじらせてしまうと修復できるものも難しくなることがあるので、少しでも違和感があれば早めにカウンセリングを受けてほしいと思います。

高草木:インターネットの情報だけではなく、リアルな情報を受け取ったうえでいろいろな選択肢を知りたいという方に来てほしいです。

自分だけで悶々と考えてもわからないし、ネットに載っているケースが自分に当てはまるかどうかもわからない。自分のケースについて一緒に考える存在がいると、すごくいいと思うんですよね。

すみよし:ネットで回答しているのは一般の方が多く、それを読んで余計に悩む方もいるようです。

高草木:「別居〇年以上で必ず離婚できます」「探偵は〇万円以上かかります」など、誤った情報が流れている場合もあるので注意が必要ですよね。

すみよし:あとは経験者のお友達に相談するケース。お友達の時はそうだったかもしれないけれど、自分が同じようにしたからといってうまくいくとは限りません。

--一人ひとりにカスタマイズした提案をしてもらえるのがカウンセリングならではの良さですね。

大野:夫婦によって背景は違いますから。子どもがいる/いないであったり、子どもの年齢であったり、そのご家庭の事情を知らなければよいアドバイスはできません。

夫婦カウンセラーの中にも、たとえばDV案件に強いカウンセラーさん、熟年離婚に詳しいカウンセラーさん、男性に寄り添ったカウンセラーさんなどたくさんの選択肢があるので、「風邪をひいたら内科に行く」といった感覚で私たちを選んでくださればと思います。

一生を左右するかもしれない内容なので、セカンドオピニオン的に何人かのカウンセラーとお話されて、ご自身に合う方を選んでいただきたいですね。

すみよし:カウンセリングが最初の1回だけでもいいので保険適用になればいいのにと思いますね。

大野:本当に。3割負担でもいいです。

■まるで身内のように、とことんまで寄り添う存在でありたい

--最後に、相談者にとってどのような存在でありたいか教えてください。

渡辺:カウンセラーは昔でいう「おせっかいおばちゃん」なのかなと。核家族になって子育ても大変ですし、夫婦のもめ事も外からは見えません。イライラしている人にあえて「大丈夫?」と声をかけて話を聞く。そしておせっかいを焼きつつ伴走する存在でしょうか。

高草木:私は「相談者」という枠組みよりも「身内」のようなスタンスです。たとえば、お若い方であれば「私が〇〇さんのお母さんだったら、こういうふうに思うんじゃないかな」というふうにお伝えしている。

この人が私の親戚だったら、兄妹だったらどういうふうにアドバイスをするかなと考えると、相手に伝える言葉が重みを持ちますし、相手にも伝わりやすいんですよね。

--相談者としてもそこまで親身になってもらえると、とても嬉しいと思います。

すみよし:私の場合は男性の相談者が多いので、「今まで誰にも話せなかった」という方がすごく多いんですね。そのため否定しないことをお約束して「とにかく全部吐き出して」とお伝えしています。

30代前後の方であればお母さん的な感じで「うちの子だと思って話しちゃうよ」と言ったりして(笑)。何が苦しいのか、何がつらいのか、どうしたいのかを聞きだして一緒に解決するための作戦をたてようというお話をします。

大野:相手の浮気やギャンブルなど……私は自分の経験談を交えながら、割と同じ目線でお話することも多いです。

そうすると親近感を持っていただけるので、ラポール(心理学用語で、主にカウンセラーとクライエントの相互の信頼関係のこと)を築けるんですよね。信頼関係ができると、こちらのアドバイスを素直に聞き入れてくださるので、その後がすごくスムーズに進みます。

私自身は夫のことで悩んだ時にカウンセラーに相談してないんですよ。当時、生後半年の娘をお昼寝させている間にパソコンで過去の裁判事例を調べたりしていました。その時は目の前のことしか見えていなかったけれど、振り返ると、誰かに相談すればよかったと後悔している部分があるんです。

そういう後悔をしてほしくないという思いもあって、同じ目線のお友達であり、お姉さんであり、母親であり……そういう関わりをしていきたいと思っています。

 ◇   ◇

◆高草木 陽光(たかくさき・はるみ)夫婦カウンセラー/「リコ活」専門家

これまで9,000人以上のカウンセリングを行い、夫婦問題・家族問題で悩む人を解決に導くお手伝いをする夫婦カウンセラー。美容師、育毛カウンセラーを経て、結婚して専業主婦となるが、夫の束縛や価値観の押し付けに違和感を覚え「結婚生活とは何か」ということを深く考え始める。書籍に「なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか」(左右社)、「心が折れそうな夫のためのモラハラ妻解決BOOK」(左右社)、メディア実績にNHK総合「あさイチ」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」、テレビ朝日「羽鳥慎一 モーニュングショー」、「ABEMA Prime」などがある。

◆渡辺里佳(わたなべ・りか)夫婦カウンセラー/「リコ活」専門家

30代半ばで離婚を経験し、子どもたちが成人する頃に「夫婦関係や離婚に悩む人の助けになりたい」「人の役に立ちたい」という想いが膨らみ、2011年、夫婦問題研究家・岡野あつこ主宰の「離婚カウンセラー養成スクール」に通学。 夫婦問題に特化したカウンセリングを学び、同年9月「離婚カウンセラー」資格を取得、52歳でカウンセラーに。

心理を深く学ぶため、日本プロカウンセリング協会認定「心理カウンセラー2級」資格を取得。現在、法務省認証の民間調停機関「家族のためのADRセンター」主催の「パパとママの離婚講座」の講師を担当。ライター、エディターとしても活動している。

◆すみよしひさこ 夫婦カウンセラー/「リコ活」専門家

子どもの成人を待って48歳で熟年離婚を経験。結婚前はピアノ調律師、結婚や出産を経て専業主婦ののちに医療事務の勉強、いくつかのクリニックと精神科クリニックでも受付と医療事務の仕事を経験。2年ほど生命保険のセールスレディも経験。2011年に夫婦問題に特化したカウンセリングの勉強をして夫婦問題相談室「リカプル」を開業。2015年からは匿名電話相談サイトでの専門カウンセラーとしての仕事も開始、さまざまなお悩みのご相談もお受けして経験を積んでいる。

◆大野まり子(おおの・まりこ) 夫婦カウンセラー/「リコ活」専門家

2013年~現在 夫婦問題カウンセラー、ファイナンシャルプランナー(AFP)として活動中。2012年 弁護士をつけずに調停離婚を経験。2013年 NPO法人日本家族問題相談連盟認定離婚カウンセラー資格取得「さいたま夫婦問題カウンセリングセンター」運営 。2019年 2級ファイナンシャルプランニング技能士/AFP資格取得。2020年 夫婦のご縁とお金の円をトータルサポートする「オフィスえん」設立。埼玉県男女共同参画推進センターにて県共催事業で「後悔しないための離婚講座」セミナー主催、家族のためのADRセンター離婚テラスにて「パパとママの離婚講座」講師、他講師実績多数。

(まいどなニュース/リコ活)

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