「この子を死なせない」寄せられた50万円 脱臼と複数の骨折がある黒柴は手術に耐えた 数カ月後、奇跡の姿がSNSに

2023年12月、群馬県動物愛護センターに1匹のメスの黒柴が収容されました。かなり衰弱した様子でセンターの公示には「骨盤骨折」とありました。

このワンコのことを知った保護団体・Delacroix Dog Ranch(以下、D.D. Ranch)のメンバーは引き出しに向かおうとしましたが、公示に気づいたのは金曜日午後5時過ぎ。センターの業務が終了した後でした。

実はメンバーは、過去に衰弱したワンコを引き出す決意をした一方、この業務時間の縛りで連絡の時差が生じ、結果的にそのワンコの命を救えなかった経験をしています。だからこそ今回こそは「絶対に助けたい」と決意。

土日の間に、黒柴の無事を祈りながら受け入れ先の動物病院を手配。万全の準備をして月曜日の朝一番にセンターに連絡。「命だけはなんとか救ってあげたい。収容期間中、動物病院に通院させてもらえないか。その手配は私たちで行うので」と職員に直談判しました。

■熱意を受け、センター職員が特例を認めてくれた

異例の申し出でしたが、メンバーの熱意が職員の心を動かしました。一定条件の上で黒柴の収容期間中の通院を認めてくれたのです。

メンバーは連携するボランティアメンバーと協力し、黒柴をいったん迎え入れ手配していた動物病院へと連れていきました。

■「絶対にこの子を死なせてはいけない」

この黒柴の診断結果は「仙腸関節脱臼」「寛骨骨折」「股関節形成不全」「座骨骨折」。さらには「パテラ」もあるだろうとも言います。

まずは脱臼と複数箇所の骨折箇所の手術を行うことが先決ですが、仮に手術がうまくいってもリハビリが必要で、術後には神経症状が出てしまう可能性もゼロではないとも。当の黒柴は、想像を絶する痛みに耐えているはずですが、診察中は唸ることも口を出すこともなく、グッと耐えていました。

メンバーの目に悔し涙が浮かびました。

「こんなにいじらしく我慢強い優しい子を、こんな体の状態で元飼い主はどうして捨てたのだ。絶対にこの子を死なせてはいけない」

後日、手術を実施しました。しかし、獣医師からからはあらためて「術後、『脱臼の整復が必ずできる』ことは約束できない」とも告げられました。聞けば、受傷から時間が経っている場合、筋肉が固まっていて戻らないことがあるとのこと。「一般的には、受傷から10日経過すると戻らない」とも聞かされました。

この時点で黒柴は5日が経過。メンバーは祈ることしかできませんでした。

■多くの心ある支援者から寄せられた寄付

これだけの手術を実施するとなれば、高額な医療費がかかります。メンバーはしばらく呼びかけを控えていたものの「今回ばかりは」と寄付の呼びかけをSNSで行いました。

この黒柴のこと、そしてメンバーの熱い思いを受けた多くの人々から寄付金が集まりました。その額は約50万円。メンバーは多くの人々からの心ある支援に胸が熱くなりました。

「本当にありがたい。そして、これだけの多くの人たちからの思いを残念な結果にしないよう、なんとしてでも黒柴の命を救ってあげたい」

■「みんなのおかげで動き回れるようになったよ」

黒柴には後に「山茶花(さざんか)」という名前がつけられました。その花言葉は「困難に打ち勝つ」。彼女にぴったりな名前でした。

痛みに耐えながら、治療やリハビリに臨む山茶花の姿もSNSで公開。多くの人の心を打ち、たくさんの応援メッセージが届きました。心ある人たちの願いが通じたのか、数カ月後のSNSには元気いっぱいで走り回る山茶花の姿がありました。

「みんなのおかげでこんなに動き回れるようになったよ。ありがとうね」。その姿はまるで応援してくれた人々へのお礼のようにも映りました。

怪我が大きかったため完全な元通りにはなりませんが、生活に支障がないほどまでに回復しました。以降は特に継続した治療は必要なくなり、様子を見ながら無理のない生活を続けていくことになりました。

最悪の事態や命を落とすことだけはなんとか回避できました。これだけの困難を乗り越えてくれた山茶花。その表情が、今後さらに明るいものになってくれることを願うばかりです。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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