スピード出しすぎ、車の衝突事故が多かった直線道路 リアルな人形に「速度取り締まり!?」、警察官も驚きの裏側
長い直線道路を走っていると、移動式オービスで交通取り締まりをする警察官とパトカーが視界に入って「おっと、いけない」と思ったのか、スピードを落とす車が続出。車どうしの事故が多く、しかも通学路でもある。地元の交通安全に貢献したいという会社経営者・宮田守さんが設置した、リアルすぎる人形がⅩ(旧Twitter)で話題になっている。
■自社で制作したディスプレイ用の人形とパトカーが超リアル
兵庫県丹波篠山市を走る国道176号線。JR宝塚線・南矢代駅の少し北に、宮田さんが営む会社の倉庫がある。その敷地内の道路からよく見える場所に、男性警察官と移動式オービス。その少し後方には、ミニスカート姿でストレートヘアの女性警察官とパトカーが配置されている。今まさに速度違反の取り締まりを行っている情景が、ここに再現されているのだ。
宮田さんによると、この付近は長い直線道路でスピードを出しすぎる車が多いため、車どうしの事故が少なくないという。しかも通学路にもなっているので、学校の行き帰りには子供たちにも危険が及ぶ。
「僕らのほうでも、事故防止で何か地域に貢献できたらいいなあと考えていたんです」
宮田さんの本業は建設業・株式会社ヨシミツを営んでおり、事業の一環としてディスプレイ用のアニマルオブジェをつくる会社「M-CLASSGARDEN」がある。つまり、本物そっくりなオブジェをつくるプロなのだ。
オービスを操作する男性警察官は、数年前に制作したものをもってきたという宮田さん。では、相棒の女性警察官はどうかというと、「あれはもう完全に僕のタイプの女性をつくりました」とのこと。
パトカーも、市販タイプの乗用車を自ら塗装して仕上げたという。パトカーそっくりの外観にするため、警察の許可も取った。ただ、ボディの側面は警察を表す「POLICE(ポリス)」ではなく「PEACE(ピース=平和)」となっている。これも大人の事情によるもの。
「このパトカーは以前、いちど売却しているんです。そのときもSNSでバズったんですが、購入された方があまりの反響にビックリされ、対応しきれなくなって私の元へ返却された経緯があります」
それほどクオリティの高い仕上がりで、機能として自力走行もできる。だが、パトランプを付けているため、実際に路上を走らせることはできないそうだ。よく見ると、ナンバープレートも付け替えられている。オービスは、一斗缶を上下に重ねてそれらしく塗装してある。それでも車を運転しながら、遠目に本物と見間違えるには十分なクオリティだ。
■人形を見てスピードを落とす車が続出 「映えスポット」にも
たんに警察官の格好をした人形を置いただけでなく、速度違反の取り締まりを再現した情景は、実際に効果が表れているようだという。
「走行しながらフロント部分が沈んで、やや前のめりになっている車が多いんですよ。これを見たドライバーがブレーキを踏んで、速度を落としているからだと思うんです」
人形が設置されたのは5月1日で、取材をしたのが5月5日のこと。わずか5日間で、もう顕著な効果が表れている。
「ご近所のおじいちゃんやおばあちゃんは、お孫さんの通学路が安全になるといって喜んでくださっています」
また、宮田さんもある程度は予想していたと思われるが、SNSで拡散され「映えスポット」にもなりつつある。
「この道路はツーリングの道になっていますので、バイクに乗っておられる人が人形と一緒に写真を撮る姿を見かけます」
もうひとつ気になるのが、本物の警察官がやってきて「事情聴取」「そして連行……」とXに投稿されていたこと。
許可を取ったはずなのに、何らかの不備があって署まで連れていかれたのかと心配になった。
「警察内でも話題になっていて、面白いからと見に来られたのです。連行というのは、パトカーの中もご覧になりたいというので案内しただけで(笑)」
実際には「地域貢献になっていると思います。助かります」と喜ばれたそうだ。
この人形とパトカーは期間を限定せずに設置され続けるそうで、車のスピードの出しすぎによる危険から地域住民はもちろん、ドライバー自身の安全にも貢献している。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)
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