荒れた環境、隅っこで固まっていたね 60匹もの多頭飼育現場から救出されたミックス犬 「楽しい・うれしい」をいっぱい味わってほしい

北関東の郊外に10年以上前から行政指導を受けているワンコの多頭飼育現場があります。

地元ボランティア、警察、動物愛護センターなど、多くの人が介入し、適切な飼育をし増えすぎたワンコを引き渡しのお願いなどの説得がなされてきましたが、飼い主はワンコを増やし続けていました。

避妊去勢していない犬が混在し、子犬が生まれては、なんとか地元のボランティアが引き取っていました。引き取られるワンコは良いほうで、中には飼い主が引き渡しを拒んで野犬状態になった犬もいます。

その数は約60匹。複数の保護団体が介入を重ねるなか、保護団体・Delacroix Dog Ranch(以下、D.D. Ranch)では交渉から1年半越しで、1匹のワンコを保護しました。「梛(なぎ)」という推定8~9歳のミックス犬です。

■「人馴れに時間がかかるかも」の心配をよそに…

梛は荒れた環境の中、隅っこで固まって過ごしていました。その様子から「人馴れには時間がかかるかもしれない」と思われていましたが、預かりボランティアさんの家に着くと、すぐに笑顔を見せてくれるようになり、また聞き分けも良く覚えも良いワンコでした。

トイレは決まった場所ですることができ、リードを使っての散歩も上手。他の犬とのコミュニケーションもバッチリ。激しく吠えるようなことはめったにありませんでした。

■梛がある日突然吠え出した

お利口さんの梛ですが、意外な一面を見せるようになったのは、保護当初からしばらくした経過した後のこと。

今後の梛のことを考え、1年半過ごした預かりボランティアさんの家から、別の預かりボランティアさんの家へと引っ越した後のことでした。

当初はこの家の先住犬や子どもたちとも仲良く過ごしていましたが、ある日のこと、いきなり寂しそうに「ウォォォーンッ!」と遠吠えをし始めました。

あの劣悪な環境から迎えてくれた最初の預かりボランティアさんのことを思い出し、寂しがっているようにも見えました。

そんな繊細な思いを秘めた梛を前に、今の預かりボランティアさんはよりいっそうの愛情をかけてあげるべきだと心に決め、できるだけ多くふれあい一緒に過ごす時間をこれまで以上に増やすことにしました。

■「人間が心から寄り添う生活」を楽しむ梛

その思いが通じたのか、梛の遠吠えは減りましたが、それは「一度信じた人のことをずっと忘れない」忠実な性格でもあるように映ります。こんなに優しい性格の梛が、10歳ほどになるまで、適切な世話をされてこなかったことが悔しすぎますが、しかしメンバーはそれでも「だからこそ梛の未来を幸せなものに結びたい」と言います。

梛はシャンプーや抱っこはちょっと苦手です。このほかにも克服しなければいけない課題がいくつか残されていますが、それでも梛の表情はどこか楽しそうに映ります。

これから先の梛に、「楽しい・うれしい」をより多く感じられる未来が待っていることを願うばかりです。

Delacroix Dog Ranch

https://ddranch.jp/

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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