イライラ、ガブッ なぜあなたは荒ぶるの? 棄てられたチワワと保護団体代表の根比べ 「お前はいいよ」と少しだけ信じてくれた
ワンコの命を救う保護団体の多くは、常に「迎え入れれるキャパシティ」との葛藤を抱えつつ、1匹でも多くの命を救うために活動をしています。
東京・足立で保護活動を行う保護犬猫カフェPETS(以下、PETS)もいつも大・中・小、複数のワンコがいますが、あるとき、懇意の別団体から「飼い主の外国人から棄てられたチワワの子がいるのですが、受け入れてもらえませんか」と相談が持ちかけられました。
「今いっぱいですけど…チワワくらいの小型犬なら大丈夫ですよ」と代表は返答。ほどなくして、そのワンコがPETSに来ましたが、想像とかけ離れたチワワだったのです。
■保護初日からイライラ
そのワンコ、引き受けた初日からイライラ。敵意を表し、噛みつくような素ぶりを見せるワンコでした。後につけられた名前は「チクワ」。
このままでは、里親さんを探すどころかカフェで他のワンコたちと過ごさせることも難しそうです。ひとまず隔離し、スタッフに馴れさせること始めました。
■何がそんなに嫌なのか慎重にチェック
チクワが、どんなことに怒るのか、あらゆる方向から試していき、その原因を探っていきました。
まずは「守る癖」をチェック。チクワの近くに物を置いた後、それを取ろうとすると手を近づけただけでチクワは噛みついてこようとします。どうも「守る癖」は強そうですが、しかしゆっくり話しかけると聞く、考える素ぶりも見せてくれました。
そして「体に触れさせてくれるかどうか」をチェック。ここでは物を取ろうとする以上に強く威嚇。かつての生活で虐待経験があったかどうかは不明ですが、かなり人を警戒しているようです。
それでも代表は慌てません。
「私は初対面で、急にベタベタ体を触りたがる人間ではありませんし、チクワくんいったんはそのまま良いですのよ~!」と、この日はあえて構わずそのままにしてあげました。
■放置した後に「お前はいいよ認定」
以降もチクワの様子は収まることはなく、代表は苦戦。「チクワが飼い主にどんな飼われ方をしていたのか」「どうして棄てられたのか」「何語で話をされていたのか」など、細かいところまで推測しチクワに接しました。そんな矢先、チクワが代表の右手をガブッ! 久しぶりに噛まれた痛みを耐えながら、代表は「これがチャンス」とばかりに「噛んじゃダメ!」としっかり言い聞かせました。しかし、それでも聞く耳を持たずにガウガウしまくるチクワくんです。
なかなか気難しい性格ですが、ここであえて放置プレイ。チクワ本人から「俺に構え!」と言ってくれるまで待つことにしました。
こうしたやり取りを経て、チクワは代表にだけは「お前はいいよ認定」を与えてくれたようで、噛まなくなりました。さらには甘えてくれるようにも。
もともとのチクワの性格、間違ったしつけ、社会経験不足、棄てられたショック。心の傷は深そうです。代表は「犬を棄てるということは、ここまでワンコの心を傷つけるということ」とも言い、今後チクワの「お前はいいよ認定」をさらに多くの人に与えてくれることを願い今日もお世話し続けています。
(まいどなニュース特約・松田 義人)