人慣れしていない猫を保護→最初はびくびくしていたが、兄弟猫とおいかけっこするように
■「外さ放せ!」
瓈菜(りな)ちゃん(4歳・メス)は、2022年2月の終わりに宮城県在住の出山さんと出会った。出山さんは、瓈梦(りむ)くんという茶トラの猫を捕獲するために捕獲機を仕掛けていた。ところが、中に入っていたのは瓈菜(りな)ちゃんだった。
「それまで一度も見たことがない猫が入っていたので、とても驚きました。当時、私は保護活動家でも何でもなかったので知識もそれほどあるわけではなくどうしようかと。身体が小さかったので子猫かと思い、とりあえず病院に連れて行きました。」
獣医師は、2歳前後で、乳腺が腫れているから授乳中かもしれないと言った。つまり、出産したということだった。
出山さんは、「もしそれが本当だったら子猫だけ置き去りになっているかもしれない!大変だ!」と思い、自宅に帰ってから近所の保護団体を探して電話をしてみた。
「事情を説明して、母猫に似たような子猫はいないか、子猫だけで置き去りになっているところはないか確認しようとしたのですが、話の途中でいきなり『うちは引き取りはしてないからね!』と男の人の声で怒鳴られてしまいました。」
その男性はしきりに「外さ放せ!」「外さ放せ!」と繰り返し、話にならなかった。終いには誰のだかわからない携帯番号に電話しろと言われ、話は終わってしまった。仕方なく今度は言われた携帯番号に電話をしたら女性が出てきて、話もろくに聞かず「外さ放せ!」と連呼されたという。
■獣医師が断りもなく堕胎
今さら外に放したところで、子育てするかどうかも分からないし、不妊手術をしなければまた出産してしまう。交通事故にあうリスクもある。出山さん夫妻は、外に放す選択肢はないと思った。
りなちゃんは、1ヶ月後に避妊手術を予約して家の中で静かに暮らしていた。
「ところが、その避妊手術の時にお腹に子どもがいることが発覚したのです。5匹ぐらいいたそうです。獣医師は、何の連絡もせず勝手に堕胎していました。どのみち過度な妊娠出産の繰り返しで、子宮も弱っていて、お産に耐えられなかったかもしれないとも言われました。あまりにもショックで、夫婦揃って言葉を失いました」
たまたま保護した猫のお腹に赤ちゃんがいて、その子猫の命をお金を払って奪ったという現実にしばらくついていけなかった出山さん。耐えられず、しばらく鬱々と過ごしていたという。
「それでもしばらくして、奪った子猫たちの分まで、りなをしっかり育てようと決意し、正式に出山家の三女として迎えました」
■外に放さなくて良かった
最初、りなちゃんはびくびくしていた。人に全く慣れていない猫を迎えるのはこれが初めてだったので何の知識もなく、先住猫たちを撫でる感覚で頭を撫でようとしたら噛みつかれ、病院で手当してもらいました。
出山さんは、「故郷の千葉県ではそろそろ菜の花が咲く頃だなあ」と思い、瓈菜(りな)という名前にした。
りなちゃんはまだまだ人慣れ修業中のビビりちゃん。抱っこはおろか、膝に乗せることもできない。「最近アゴは撫でさせてくれます。これだけでも大きな進歩なので、すごく嬉しいです!」
茶トラのりむくんと追いかけっこするのが大好き。一緒に暮らす猫は何匹かいるが、りむくんのことだけは特別大好きで、いつも追いかけてくっついている。
「りなが本当に心を許しているのは、りむだけなんだなあと思います。りむりなコンビの写真を見ると本当に和やかで、何枚撮ってもどれもベストショットです!保護した時、外に放さなくて本当に良かった。これからも娘(りな)が健康に長生きできるよう尽力しようと思っています」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)