ビビりな元野犬 心開いたきっかけは信頼する仲間の存在 緊張が解け元気な甘えん坊に変身したね
元野犬の保護犬は他のワンコとのコミュニケーションには長けている一方、人間が苦手というケースが多数あります。それまで育った環境では感じたことがない「音」「物」も苦手であることが多く、結果的にビビリとなり「ここは安心」「この人は大丈夫」とわかるまでは心を閉ざしがちになります。
ピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)で新しい里親さんとの出会いを待つミックス犬・ミシェルも元野犬で、かなりビビリでした。端っこのほうで固まり、目を合わさず、人間が近寄れば体を震わせていました。
■ハーネスにビクッ。体に触れればビクビクッ
スタッフがミシェルを散歩に連れていくため、ハーネスを準備しただけでビクッ。さらに体に触れようものならビクビクッ。スタッフは、ハーネスに馴れてくれるようゆっくり時間をとり、静かに近寄り優しく装着するよう心がけました。
幸いミシェルは散歩が大好きだったので、数日間これを繰り返すと、「これをつける後は、大好きな散歩の時間なのだ」と理解し、渋々ながらもつけさせてくれるようになりました。
■「仲間たちが信頼しているのなら僕も…」
あるとき、同じ施設にいる元野犬たちがスタッフに甘える様子を、ミシェルは遠くから不思議そうに見つめていました。元野犬は「何やってんの?一緒に遊んでもらおうよ」「人間が苦手なら僕たちだけで遊ぼうよ」と言わんばかりの様子で、ミシェルに何かとコミュニケーションを取ろうとしていました。
ある日のこと。あれだけ遠巻きにしていたミシェルがスタッフの元に歩み寄り、背中の匂いをクンクン。やがてミシェルも他のワンコたちと同様にスタッフに信頼を寄せ、甘えてくれるようになりました。
やはり元野犬です。スタッフの目には「仲間のワンコたちが信頼している人間なら、僕も信じても大丈夫かも」と思ってくれたように映りました。
■人間には見えにくい元野犬同士の信頼関係
こういったことを繰り返すことで、ミシェルは見違えるような成長を遂げました。施設に来たばかりのような緊張した様子がなくなり、元気な甘えん坊という本来の姿を見せてくれるようになりました。
あれだけ嫌がっていたハーネスも、スタッフが持っただけで「早くつけて! 散歩に行こうよ!」と尻尾をフリフリ。さらに散歩に連れていくと、工事中の音やバスなどの大型車の音にも動揺することはなく、リードを持つスタッフを振り返りながら楽しそうに歩くようになってくれました。
短期間に、一気に成長したミシェル。スタッフの献身的な世話が功を奏したことは言うに及びませんが、もしかしたらそれと同じか、それ以上に「仲間の存在」が大きかったのかもしれません。元野犬は保護される前、いつも仲間同士で群れをなし、コミュニケーションを取りながら生活をしているケースが多いものです。人間には感じ取れないところで、絆を結んでいるのかもしれませんね。
(まいどなニュース特約・松田 義人)