能登半島地震が引き裂いた飼い主と黒柴の平穏 生活再建のため苦渋の決断 愛犬が乗った車が見えなくなるまで見送った

令和6年能登半島地震。多くの被災者が今も厳しい生活を強いられています。

被災したある男性は、かつては地元でお店を営んでいたものの、地震の影響で店、家、車全てが崩壊。残ったのは大切に世話していた黒柴のワンコ・ケンシロウくんでした。大好きな相棒・ケンシロウくんが助かったことは何よりでしたが、避難生活は続いています。

様々な支援があり当初よりは過ごしやすくなったものの、飼い主の男性は、生活基盤をゼロから築く必要がありました。それに伴う負担や辛い思いをケンシロウくんに強いることはできない、飼い主男性は苦渋の決断をしました。ピースワンコ・ジャパンにケンシロウくんの「ペットの一時預かり」を依頼したのです。

■飼い主男性がケンシロウくんをベタ褒めし続けた理由は…

依頼を受け迎えに行ったスタッフを前に、飼い主の男性はケンシロウくんをベタ褒め。その言葉通りケンシロウくんは人懐っこくスタッフにもジャンプしてあいさつしました。

飼い主男性はケンシロウくんを褒め続けます。後になって思えば、ケンシロウくんとの別れが辛くなんとかして気を紛らわそうと、あえて話し続けていたようにも感じました。

お別れの時間がきました。

お迎えの車が来ると、複雑な思いを振り切るように、今にもあふれそうな涙をこらえ、「ケンちゃん、バイバイ!」と別れを告げました。あえて明るい口調で。

ケンシロウくんは一瞬、飼い主男性の足元に近寄った後、そのままスタッフのリードについていきました。

飼い主男性は、ケンシロウくんが乗った車を見えなくなるまでずっと見送っていました。車が見えなくなると、男性のほおを大粒の涙がつたいました。

「もうケンちゃんに会えないわけじゃないからね。生活を取り戻したら、また会えるからね…」

■「大好きなお父さんが待ってくれているからね」

ケンシロウくんはしばらくの間ピースワンコの施設で過ごすことになり、今日も明るく元気に過ごしています。

飼い主男性と再び会える日が今はまだいつになるかはわかりませんが、ケンシロウくんはたびたび笑顔を見せてくれます。その表情は、「いつか僕、絶対お家に帰るんだ。だって僕の大好きなお父さんが待ってくれているんだからね」と言っているようです。 

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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