余命宣告された80歳の父、生きる希望は…孫娘とのコスプレ!全ての瞬間が愛しい「エレガァァァント!」な撮影の秘話を聞いた
「80歳、孫との初めてのコスプレは『エレガァァァァント!! 』」とつぶやき、雷(ライ)さんだー(@asobiworld)さんがX(旧Twitter)に投稿した写真が大きな注目を集めた。
雷(ライ)さんは、チャンネル登録者数 348万人を誇るYouTube番組『あそびわーるど』を運営するコスプレイヤー。投稿された写真に写っていたのは、アニメも話題のコミック『SPY×FAMILY』の人気キャラクター、アーニャ・フォージャーに扮した次女、まあさちゃんと、長い白髪と片眼鏡(モノクル)が印象的なヘンリー・ヘンダーソン先生に扮した父の笑顔。
孫娘と向き合い、エレガントな笑顔を浮かべていた雷(ライ)さんのお父さんは、80歳の誕生日を迎える少し前、ステージ4の肺がんが発覚。余命を宣告されたという。雷(ライ)さんはその後の経緯について、4月17日にXに投稿していた。
■悔いなく「今」を精一杯生きて楽しんで
「私の父がね、1年前にステージ4の肺がんが見つかって、余命1年を宣告されてから余命を現在5ヶ月過ぎて生きている。
昨年、コスプレをしたいと言って、冬の間に衣装もウィッグも準備して、だけど肺炎になると死に繋がるから風邪だけは引かせないために、『春になって暖かくなったら…』そう思って冬を越えた。そしたら2月の終わりに肺炎をこじらせて入院して肺に後遺症が残ってしまい、酸素ボンベを常時着けていないといけない状態になってしまった。
冬はまだ元気で、外も出歩いたり買い物も運転もできていたのに、退院した今でももう外出もできないし、ほとんど寝て過ごすしかできなくなってしまった。それで私は本当に後悔した。
人はいつ動けなくなるかわからないから、今が最善の状態であると考えて、できる時に動かないといけない。動ける時に会っていないといけない。1ヶ月先にはもっと身動き取れない状態になっているかもしれないんだから。
今でも父が『あのウィッグは、セットとかしないといけないんやろ?』って、かすれた声で聞いてくる。私は泣きそうになる。
父がとても楽しみにしていた、孫のアーニャと一緒にコスプレができると張り切って、『SPY×FAMILY』のアニメを1話からDVDで全部見て、ことあるごとに『エレガント!エレガント!』と言っていたと母から聞いていた。
暖かくなったら…なんて先延ばしにしなければ良かった。寒くても暖房を入れてスタジオで撮ってあげていれば良かった。酸素チューブを着けている今となってはスーツに着替えさせることも…
だから、私も今の状態が一番動ける状態かもしれないと思って動くだけ。誰でも明日も元気でいる保証はないから、悔いなく今を精一杯生きて楽しんでほしい」
■エレガント!ベリー・エレガァァァァント!
そして、「悔いなく今を精一杯生きて楽しんでほしい」という思いから、お父さんの体調を鑑みた、あるアイデアでコスプレ撮影を敢行。「エレガァァァァント!」なコスプレ写真が投稿されると、11万以上のいいねがつくと共に、多くのコメントが寄せられた。
「最高ですね!まさにエレガント!!」
「こんな幸せなコスプレは初めて見たかもしれない」
「お孫さんと一緒に夢の世界を、別の物語を生きることが出来る素敵な思い出作り。コスプレの新しい可能性を見た思い」
「ステラを無限にお贈りしたい(涙)」
多くの感動の声が寄せられた愛娘と父のコスプレ写真について、雷(ライ)さんだーさんにお話を聞いた。
■父の希望を叶えた「おひるねアート」
ーーお父さんの体調を考慮して、「自宅のカーペットの上で赤ちゃんのお昼寝アートと同じ形で撮影をしています」とポストされてましたね。
「4月に投稿した父の容態についてのポストに対して、『赤ちゃんのおひるねアートのように、負担がない形での撮影はどうでしょう?』というリプライを頂いたんです。素晴らしいアイデアにビビっと来たのですが、すぐにお返事ができず、いざ返信しようとした時にはもうそのリプは消えていて…。
なので、どなたがご提案くださったかわからないままなのですが、おかげで父は寝たまま、念願だった孫とのコスプレ撮影ができました。寝た状態だと髪や服のヒラみも表現出来て、走ってるポージングもしやすく、コスプレだけでなく、御年配の方の写真撮影に最適ではないかと、おひるねアートの新たな可能性を感じました」
ーーそもそもお父さんはなぜ「コスプレをしたい」と?
「父は昨年の9月に初めてスマホに持ち変えたのですが、その際にYouTubeアプリを入れてあげたら、私のYouTubeチャンネル『あそびわーるど』の動画を毎日何時間も見ることにハマってしまい、『SPY×FAMILY』のアーニャのコスプレをして踊る次女のまあさのダンスを真似たり、『可愛いねぇ、すごいねぇ』と、LINEで逐一感想を報告してくるようになりました。
そして昨年末、『SPY×FAMILY』の映画が公開されると知り、『観に行かないかん!』と張り切り出し、『ジィジもまあさとコスプレやってみたいな、ジィジにやれるキャラあるかな?』と楽しそうに話す姿を見て、これは父の希望の1つになるかもしれない!と嬉しくなりました。
父は癌と言われてから毎日沈んでいたのですが、自分もコスプレができる、大好きな孫と動画や写真が撮れると決めてからは、次女が踊るダンスや、『SPY×FAMILY』のヘンリー・ヘンダーソン先生のセリフを真似することが父の生き甲斐になりました」
■「コスプレ」で家族が笑顔に
ーー「頭つるつるの父がロン毛になって見違えた~」とポストされていましたね。初めてコスプレをしたお父さんの様子は?
「久々の髪の毛の存在に、父は何度も鏡を見てました(笑)。1本でも髪が乱れていると、『ここ、前に出てきてる!揉み上げ浮いてる!』と気にしていました(笑)。何よりその姿を見た母が声を大にして喜んでいて、『ピシッとしたらやっぱりカッコいいねぇ~!気品があるね~!』と、大喜びで父をほめてました」
ーーアーニャ姿のまあさちゃんと向き合う表情も、まさにヘンダーソン先生の口癖「エレガント」でしたね。
「コスプレはその年齢だからこそ滲み出るピッタリのキャラがあるので、ヘンダーソン先生は絶対に似合うと思っていました」
ーー撮影中のお父さんとまあさちゃんの様子は?
「2人の自然な笑顔が出るように、撮影中は私がずっと茶々を入れていました。寝転がっている時は、私が『2人で指相撲して!ジィジ強いよ!』と言いながら、2人が自然に指を取り合って楽しそうにはしゃいでいる姿を、数年前からの知り合いであるマサ(@Masa_404)さんに撮ってもらいました。
『アーニャ、顔もっとジィジに近付けて~』『なんか顔…近くない…?』『そう?俺、この距離感好きだな、トゥンク…』と、私が横で話すのを聞いて、2人とも笑っていました」
■父の病気を機に気づいたこと、父に伝えたいこと
ーー3月に予定していた撮影を延期されたことを後悔されていたそうですね。お父さんのご病気を機に気づいたことはありますか?
「母と私は今、命の時間を事前に知らされることは決して不幸なことではない、と感じています。うちの実家では、お金の管理など、ほとんどのことを父がやっていたので、銀行のことや必要なことを前もって母に伝達しておける時間があったのは良かったよね、と家族で話しています」
■今の自分があるのは「父のおかげ」
ーーお父さんに今、どんなことをお伝えになりたいですか?
「余命を宣告された時に父が、『俺は娘に何もしてあげられなかった』と悔やんでいた、と母から聞きました。だけど私は、小さい頃から母が仕事で忙しく、その分、父に可愛がられて育てられたことを、父がずっと撮ってくれていたビデオを通してよく知っています。
それもあって、子育てをする姿、子供と遊ぶ親の姿、楽しそうに親子で過ごす姿を動画に残すことの大切さを私自身が痛感しているので、今私は父と同じように、子供たちの成長記録として、共に遊び、共にコスプレで楽しむ姿を動画に撮って残しています。
たまたまそれをYouTubeで驚くほどたくさんの方に見て頂いているだけで、私が今していることは、父から受けた愛情そのものなんです。今の私があるのも、『あそびわーるど』というYouTubeチャンネルがあるのも、私がユニークなのも、すべて器用な父親から譲り受けたものであり、父のおかげなんです。なので、何もしてあげられなかった…なんて悔やまないで欲しいです」
◇ ◇
今回のコスプレ撮影について話を聞くなかで、「皆さんに与えられた大事な時間は、皆さんそれぞれの命の1秒、1時間、1日です。SNSに発信する言葉も写真も動画も、誰かを傷つけるために使うのではなく、あなたが幸せになるための時間に使って欲しい、と切に願います」と語っていた雷(ライ)さん。
年齢や病の有無に関わらず、一瞬先の誰の未来にも命にも保障はない。自分に与えられた限りある時間を、あなたはどう使いますか?
※コスプレボランティア・チーム「よかeco面隊」としても活動中の雷(ライ)さんと次女のまあさちゃんは、2024年6月1日に「博多キャナルシティ」(福岡県)で行われる「コスプレde海ごみ大作戦at福岡」にアンバサダー・コスプレイヤーとして参加するとのことです。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ かな)