足はアスファルト焼けし尻尾は断尾 必死に生き抜いた野良猫 皆に見守られ虹の橋を渡った 「あなたの子猫は幸せに暮らしているよ」

2021年、和歌山市内のあるエリアで野良猫のTNRが実施されました。生まれて間もない子猫2匹と一緒に捕獲されたのが母猫・ささでした。

TNRを実施した地元の団体・城下町にゃんこの会和歌山(以下、にゃんこの会)では、捕獲後、成猫は予定通りリターンし、子猫はできる限り「保護」に変更するようにしていました。全ての野良猫を保護し、家猫にしてあげたいというのがスタッフの本心ですが、団体のキャパシティや費用面で難しく、成猫は適切な避妊去勢手術を実施した後リターンするしかありませんでした。

「子猫たちはささに変わってちゃんとお世話するからね。元気に過ごすんだよ」と声をかけて、ささを元いた場所にリターンしましたが、翌2022年に再会したささはリターンしたときとはまるで違う姿でした。

■リターン後の過酷な生活が、ボロボロの体に表れていた

尻尾は断尾し、足はアスファルト焼け。外での生活で様々なけがを負いながらも、日々を必死に生き抜く様子が伝わってきました。

スタッフは、ボロボロになったささの姿に胸が締め付けられ、「さすがにかわいそうすぎる」とささを保護。医療ケアを施し、世話をすることにしました。

ささは推定7~8歳。失った尻尾は戻ってきませんが、ボロボロだった体は獣医師の適切な医療ケア、そしてスタッフの献身的なサポートによってみるみる回復し、それと合わせて穏やかな表情を浮かべるようになりました。

「良かった。本当に良かった」とスタッフはささに寄り添い、ささもスタッフに心を寄せ、いつもゴロニャーンと甘える素振りを見せてくれました。しかし、平穏な生活は長くは続きませんでした。約1年半後の2024年冬、ささは静かに虹の橋を渡りました。

■旅立つささの前でスタッフが改めて思ったこと

旅立つささを前に、スタッフは過酷だったであろう野良猫時代の生活を振り返り、「大変な生活を生き抜いて、最後はうちに来てくれてありがとうね。よくがんばったね」と見送りました。そして、最後のお願いをしました。

「どうか、野良猫として生まれ変わらないでね。まだ私たちにはやらなければいけないことがいっぱいあるから」

「ささみたいに外で苦労する猫はまだまだいっぱいいる。私たちが行うTNRや地域猫はあくまでも『野良猫ゼロ』への過程。本当の目標は『野良猫ゼロ』で全ての猫が『お家猫』になること。TNRや地域猫だけでは本質的に解決しないんだ。また、保護や譲渡だけでも絶対に解決しないんだ。私たち人間がみんなでがんばれば、きっとその先が見えてくるはず。そう信じているんだ。だからささは、野良猫として生まれ変わらないでね。もう少し虹の向こうで待っていてね」

保護したささの2匹の子猫は、ゆずちゃん、むぎちゃんと名付けられ、優しい里親さんと幸せな猫生をおくっています。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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