保護猫に難病門脈シャントの診断 50万円の手術を一度は断念 健気な姿にスタッフの心は揺れた 「諦められない」「命を救いたい」
2023年のある日、関西のとある場所で多頭飼育崩壊が起きました。行き場を失った幼いメス猫がいました。後につけられた名前「あめちゃん」。
美形の猫ですが、保護し世話することになった団体・城下町にゃんこの会和歌山(以下、にゃんこの会)のスタッフが保護後、動物病院で検査してもらったところ、「門脈体循環シャントの疑いがある」という診断。門脈体循環シャントは腸などから肝臓へ伸びる門脈という血管から余計な血管(シャント)が伸び、食事で得られた栄養素が肝臓を通らず全身の血管に流れ込むという病気です。放置すれば高アンモニア血症、肝肺症候群、肝性脳症などを起こし寿命を縮めます。
恐ろしい病気ですが、根本治療の手術には約50万円の費用がかかり、さらにその成功率は50%とも。
■予算オーバーで手術を断念…
スタッフは肩を落としました。
多くの保護団体では運営費の資金繰りに追われ、スタッフ個人の持ち出しなどで賄われてるケースもあります。にゃんこの会の懐事情も潤沢とは言えず、「できる範囲」での運営で、保護猫1匹の病気にかけるお金は「20万円まで」と決めていました。
つまり、あめちゃんの手術費は限度額の倍以上です。スタッフは手術を諦めた上で、賄える範囲内での対症療法に徹し、できる限りあめちゃんが苦しまないように世話しようと考えていました。
スタッフが日々接するあめちゃんは本当に素直で優しいお利口さん。持病さえなければ、全く申し分のない性格です。優しいあめちゃんの姿を前に、スタッフは胸が苦しくなりました。やがて、「やはり諦められない」「なんとかしてあめちゃんの命を救いたい」と考えるようになり、改めて「20万円まで」のボーダーをなんとかクリアできないか、知恵を絞りました。
まず考えたのが「応援カレンダー」の販売。にゃんこの会を卒業し、幸せをつかんだ猫たちのかわいい写真を載せたカレンダーで、この販売収益をあめちゃんの手術費に充てたいという目算を立てました。そして、来年以降のカレンダーに持病を乗り越えた元気なあめちゃんを載せることも願いました。
■多くの心ある支援によって手術費を確保できた
この応援カレンダーの販売のほか、あめちゃんのことを知った多くの心ある人たちからの寄付などを受け、見事手術費を確保するることができました。スタッフは多くの支援に涙しました。
あめちゃんは2023年11月に初めての手術を実施し無事成功。その3カ月後には2回目の手術に臨むことに。あめちゃんを思う多くの人たちの思いが通じ、2回目の手術も無事成功。
くしくもあめちゃんが2回目の手術を乗り越えた2月22日は「猫の日」。後にアンモニア数値も標準に達し、このままいけば病気を克服できそうです。スタッフは「一時は諦めかけたあめちゃんの手術ですが、実施することができて本当に良かった」と、あらためて多くの支援に心から感謝しました。
まだ完全に克服したとは言えず、投薬などの相応の世話が必要でしたが、この春さらにうれしい知らせがありました。「あめちゃんを迎え入れたい」という里親希望者さんが現れたのです。そして、この5月末には、めでたくこの方の家へと巣立っていくことが決まりました。
多くの人たちの思いを受け、2度の手術を乗り越えたあめちゃん。これからの猫生ではがんばった分以上の「幸せ」な日々が続くと良いなと思いました。
城下町にゃんこの会
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(まいどなニュース特約・松田 義人)