目も見えず、腎臓もボロボロ…多頭飼育崩壊から救出された子猫 延命か苦痛からの解放か苦渋の決断「次は幸せな家に」

■ゴミ屋敷で起こった多頭飼育崩壊

ちょこ丸くんは、福岡県大牟田市で多頭飼育崩壊した女性Aさんが所有していた子猫だった。大牟田市の現場には複数のボランティアが入り34匹の猫を保護したのだが、その中にちょこ丸くんはいなかったという。

「Aさんは最初、『ボランティアに譲らない』と言い張っていました。ところが、不妊手術の費用を全て私たちが持つと知ってから態度が急変。1匹を除いて猫のことは任せると言い、突然、もともと住んでいた糸島市から連れてきた猫だと言ってちょこ丸を出してきたのです。」

Aさんは大牟田市に引っ越す前に糸島市に夫と住んでいたのだが、離婚後はアパートの退去を迫られ、子どもや猫と一緒に車の中で暮らしていた。子どもたちのことを不憫に思った近所の人が行政に通報して保護されたという。

「知人の男性の仕事を手伝うために大牟田市に引っ越してきたそうです。大牟田市ではゴミ屋敷に住んでいて、そこでも立ち退きを迫られていたので、私たちは猫の引き取りを急ぎました。」

■突然見せられたボロボロの猫

33匹を保護して全頭不妊手術をしてほっとしたのも束の間、Aさんが、糸島の知人に預かってもらっていたと言って、それまで誰も見たことがない猫を出してきた。

「隠していたのか、どこかから連れてきたのかは分かりません。他の猫と同じくガリガリにやせていて、体重はわずか2.4kgしかありませんでした。片目がなく、腎臓はボロボロ。Aさんは糸島市にいる時にみんなで餌をあげていた子だと言っていましたが…」

ちょこ丸くんは明らかに体調が悪く、生きているのが不思議なほどボロボロだった。

「仮にみんなでご飯をあげていたとしたら、その中で誰1人として病院に連れて行ってくれなかったということですよね。そもそも、こんな身体でご飯なんか食べられません。そんな地獄のような場所でこの子は生きてきたんです。」

ちょこ丸くんはボランティアに預けられ、治療をすることになった。腎臓の数値が悪く毎日補液を続けていた。

「少しずつ食欲が出て、1日にパウチを2袋食べられるようになりました。失われた腎臓の機能は戻りませんが、動きも良くなり順調に回復しているように見えました。」

■苦渋の決断「苦痛に耐えて生きるより」

その後、真菌疑いと診断されたちょこ丸くん。よく動くようになったので補液を嫌がり、毎回何度も打ち直ししなければならず、採血も大嫌いなので保定袋に入れて二人がかりで抑え込んだ。ちょこ丸くんは大声で鳴き続けて最後は「大丈夫?」というくらいぐったりしていた。

ボランティアは延命するのをやめた。

「ちょこ丸に残された時間があとどれくらいあるか分かりませんが、苦痛に耐えて無理に延命するより、残された時間、少しでも美味しい物を食べて快適に過ごしてほしいと思いました。もっと早く、適切な対応が出来ていれば、もっと生きられたかもしれません。やっと劣悪な環境から解放され、今から幸せに暮らせるはずが。かわいそう過ぎます。」

それでも諦めきれない気持ちもあり、ボランティアはちょこ丸くんが亡くなる2日前まで補液を続けた。譲渡会が終わって家に戻り、「ちょこちゃん、すぐ戻ってくるよ」と部屋を出て1時間後に戻ると、ちょこ丸くんは息絶えていた。

「腕の中で見送ることはできませんでしたが、最期までご機嫌で、手をニギニギして声をかけると返事をしてくれました。あんなに頑張ったのに助けてあげられなくて悲しい。次は元気な身体で、生まれた時から愛される、幸せに満ちた暮らしができますように。」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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