嘘だろ!?風景画を描いていたら→知らない子どもがゴリゴリ上塗り…作者が止めなかった理由とは

海外で風景画を描いていたら、知らない子どもが突然…。観客の前で絵を描く過程を見せる「ライブペインティング」の途中で起きたハプニングが、SNSで注目を集めている。日本人男性が描いていたのは、緑豊かな風景画。「どうかなぁ…」と絵から離れて確認しているうちに、小さな子ども2人が筆を持ち、上塗りを始めたという。作者は驚いて焦ったが、子どもたちを止めなかった。広い心で受け入れた思いを聞いた。

■原色の赤や黒で…ゴリゴリ

作者は、金沢美術工芸大学大学院の博士後期課程3年・桜井旭さん(27)。油絵を中心に、風景画や肖像画、静物画など、現実主義の絵を描く。共通するのは、現場でモチーフを観察しながら描くことだ。制作プロセスの面白さを伝えるため、ライブペインティングのパフォーマンスにも取り組む。

今回のハプニングは、ベルギーの農場地帯で開かれた展覧会で起きた。青や緑など、桜井さんが使っていた色を塗り始めた子どもたち。桜井さんは「え?!ま?!」と困惑したが、「少しならいいか」と様子を見守っていた。その後、子どもが「赤色を使いたい」と言ったため、パレットに出してあげた。しかし、桜井さんが離れて写真を撮っている間に、子どもが勝手にパレットに大量の赤色を絞り出し、ゴリゴリと上塗り。赤や黒色でニコちゃんマークやハートが描かれていった。

「原色の赤をこの絵に乗せるのは流石に…と思ったのですが、楽しそうな子どもを見ると止められないし…。自分には絶対にできない描き方をするな、との見方ありました。なので、この状況を楽しんでしまおう、と思いました」。桜井さんがトイレに行っている間、子どもの父親が絵を破壊したことに気付き、パニックになっていたという。

■「考えさせられる作品になった」

でもなぜ、寛大な心で許したのだろう?「僕自身、現場で描くことでいろんな出来事が絵に影響することを承知していて、コンセプトでもあるんです」ときっぱり。

絵が台無しになった感覚も少しあるというが、「本当ならあり得ない事故のような過程は、ある意味で美しいと感じます。外からの圧倒的なパワーで絵画の制作過程が崩壊させられる経験を上手く解釈できていませんが、時間をかけて出来事の意味を言語化していけたらと思っています」と、博士論文に活かす意気込みも語った。

(まいどなニュース・山脇 未菜美)

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