動物病院の玄関に置かれた猫用キャリーバッグ 5千円札が挟まれ中には三毛猫 遺棄と思ったら予想外の展開に

2023年9月上旬の残暑厳しいある日、東京・江戸川にある動物病院・たんたんペットクリニックの玄関前に、猫用のキャリーバッグが置かれていました。よく見ると、その扉には5千円札が挟まれており、その中には三毛猫がいました。

この状況、「この猫を飼えなくなったから、そちらで引き取ってください。5千円で」と遺棄したとみなすのが一般的でしょう。同院を運営する依田さん姉妹もそう解釈しました。憤りと悲しみを覚える一方、どんな人にも心があることを信じ、SNSなどで「心当たりのある人は名乗り出てください」と呼びかけました。

■キャリーバッグの猫は授乳期だった

依田さん姉妹は三毛猫の健康状態をチェック。するとオッパイからミルクが出る状態です。出産して、引き離された子猫がどこかにいる可能性も考えられました。

「出産した外暮らしの猫一家を救ってほしいが、まずは母猫から」ということなのか。それとも「TNRのつもりで出産直後の母猫をキャリーバッグに入れて置いていった」のか、「この母猫の子猫たちを5千円で探してほしい」という意味なのか……謎は深まるばかりでした。

いずれにしても子猫と離ればなれになっているわけで、子猫たちのことを思うと気が気でない依田さん姉妹でしたが、後日この件が急展開しました。

■キャリーバッグを置いていった人が現れた

なんとキャリーバッグを置いていった人から連絡があったのです。

聞けば「遺棄ではなく外で暮らしていた猫一家がかわいそうで、母猫をまず保護し、たんたんペットクリニックに連れていったところ、休診時間。仕方なくそのままキャリーバッグごと置いていってしまった」とのこと。

話を聞いた依田さん姉妹は愕然としました。ただ話を聞く限り本当に悪気がないようで、「外で暮らす猫を家の中に入れてあげたい」という思いからの行動のようでした。

蒸し暑い時期、狭いキャリーバッグに入れたまま何時間も放置すれば熱中症で亡くなる可能性があること、5千円札を挟んでおくと、そのまま持って行かれてしまうことがあること、そして何かの行動を起こしたり相談をする場合は事前に連絡をしてほしいことなどを伝えました。

依田さん姉妹はこの三毛猫の保護と世話をすることにし、子猫たちの保護にも成功しました。

■結果的には猫一家全匹幸せを掴むことに成功!

三毛猫一家は、たんたんペットクリニックと提携する預かりボランティアさんの家で過ごすことになりました。母猫も健康で、子猫たちも元気に成長し、後にはそれぞれ「ずっとのお家」をつかむことができました。

当初は遺棄と思われたキャリーバッグ置き去りですが、「結果的に猫親子が幸せになって本当に良かった」と胸をなでおろす依田さん姉妹、そして預かりボランティアさんでした。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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