インフラエンジニアの仕事とは?…システムエンジニアとの違い、年収・キャリアパスを徹底解説
IT市場が急成長している現在、IT製品やサービスへのニーズが高まっています。多くの企業がIT人材を求めていますが、働き手不足は深刻化する一方です。
そのため、未経験の業種への転職を検討する際は、IT業界を目指すのも手段の一つでしょう。
IT業界のなかでも、IT基盤の構築を担当する職種がインフラエンジニアです。
■インフラエンジニアとは?
インフラエンジニアとは、ITインフラの設計・構築・運用・保守に携わる技術者です。ITインフラとは、システムを有効に機能させるための基盤となるOS・ネットワーク・ハードウェア・サーバーを指します。
インフラエンジニアのおもな業務は、ITシステムの要件定義に沿った機器の調達、機器の設置と通信ケーブルの配線、ソフトウェアのインストール、ネットワーク設定などです。担当する業務は多岐にわたり、企業やプロジェクトによっても異なります。
インフラエンジニアはIT業界だけでなく、金融業や製造業などさまざまな業界で必要とされる人材です。
■システムエンジニアとの違い
ひとくちにエンジニアと言ってもさまざまな種類があります。インフラエンジニアとシステムエンジニアとのちがいは何でしょうか。
システムエンジニアはITシステム全般の開発を担当します。クライアントの要望に基づいてシステムの設計を行い、プログラマーやほかの技術者に具体的な指示を与える役割です。プログラマーの上位職にあたります。システムが完成しテストを通過すればプロジェクトが終了するのが特徴です。
一方、インフラエンジニアはITインフラ関連の業務に携わり、システムの保守や運用を担当します。システムエンジニアが設計したシステムを適切に動作させるために連携することもあるため、両者の業務は密接に関連しています。また、システムが正常に稼働するように努めるだけでなく、必要に応じてシステム改修にも関与します。
■インフラエンジニアの種類
一口にインフラエンジニアと言っても、担当する業務内容によってさまざまな種類があります。
【サーバーエンジニア】
サーバーエンジニアは、サーバーの運用に関する業務全般を担当する職種です。具体的な業務内容は、次のとおりです。
・サーバーの選定
・サーバーの設計
・サーバーの構築
・サーバーのテスト
・サーバーの保守 など
システム障害が発生したときの対応のほか、サーバーと機器をケーブルでつなぐといった物理的な作業もサーバーエンジニアが担当します。サーバーやOSにはさまざまな種類があるため、サーバーに関する知識だけでなく、OSについても理解しておく必要があります。
また、近年はクラウド化が進んでおり、サーバーエンジニアに求められる知識も物理的なサーバーからクラウドに変化しつつあります。
【ネットワークエンジニア】
ネットワークエンジニアは、データを安定して送受信できる環境を構築する業務を担当する職種です。ネットワークエンジニアには、通信プロトコルやネットワークセキュリティなどの知識が求められます。
具体的な業務内容は、次のとおりです。
・ネットワーク機器の選定
・ネットワーク機器の設定
・ネットワーク機器の運用
・ネットワーク機器の保守
・ネットワークの設計図作成 など
ネットワークエンジニアはネットワークの設計図を作成し、それに基づいてネットワーク環境を構築していきます。
また、構築後に故障やトラブルが発生することがあります。ネットワークエンジニアはいち早く原因を突き止め、円滑なネットワーク環境を維持する役割を担います。
【データベースエンジニア】
データベースエンジニアは、データベースに特化した職種です。具体的な業務内容は、次のとおりです。
・データベースの設計
・データベースの構築
・データベースの運用 など
データのフォーマットとの関係性をシステムごとに定義し、データの格納環境を構築します。
データベースには、OracleやMicrosoft SQL Serverなどさまざま製品があり、それぞれ管理ツールが異なります。転職では、特定の製品についての知識や経験を求められることがあります。
【セキュリティエンジニア】
セキュリティエンジニアは、ITシステムのセキュリティ全般を担当する職種です。具体的な業務内容は、次のとおりです。
ネットワーク内にファイアウォールを設置して不正アクセスを防止する
サーバーにセキュリティパッチを適用させて脆弱性を解消する
脆弱性診断を実施してセキュリティ対策を強化する など
近年はオンラインでのやり取りが増えるなかで、マルウェアやランサムウェアなどのサイバー攻撃が増加しています。セキュリティエンジニアはITシステムのセキュリティを強化し、サイバー攻撃から守る役割を果たしています。
■インフラエンジニアの労働環境
ここからは厚生労働省の「職業情報提供サイト」をもとに、インフラエンジニアの気になる労働環境を紹介します。
なお、職業情報サイトでは、インフラエンジニアの別名システムエンジニア(基盤システム)と表現されています。
【年収・月額賃金】
厚生労働省の「職業情報提供サイト」によると、インフラエンジニアの平均年収は660万4,000円、月額賃金は33万4,000円です。
正社員の平均年収が328万円のため、インフラエンジニアの平均年収は平均よりも大幅に高いことがわかります。
【就業形態】
インフラエンジニアの一般的な就業形態は、正社員が76.3%で最も多いことがわかっています。
<一般的な就業形態と割合>
正社員:76.3%
パートタイマー:1.7%
派遣社員:8.5%
契約社員・期間従業員:15.3%
自営・フリーランス:18.6%
経営層(役員など):1.7%
アルバイト(学生以外):0%
アルバイト(学生):1.7%
不明・その他:0%
正社員の次に多い就業形態は、自営・フリーランスの26.2%です。契約社員・期間従業員として働く人も、15.3%います。また、アルバイトとして働く学生も1.7%いることがわかっています。
【有効求人倍率】
有効求人倍率とは、求職者一人に対してどのくらいの求人があったかを示す数値です。求人数が求職者数よりも多いときは、有効求人倍率が1を上回ります。
インフラエンジニアの令和4年度の有効求人倍率は、1.76です。正社員の有効求人倍率は1.02のため、求職者数よりも求人数が多い売り手市場であることがわかります。
そのため、転職しやすい状況であると言えるでしょう。
■インフラエンジニアとして働くメリット
インフラエンジニアは専門性が高い職種です。インフラエンジニアとして働くと、さまざまなメリットが期待できます。
【安定した需要が見込まれる】
厚生労働省の「人材開発分野をめぐる状況の変化」によると、2030年にはIT人材の不足が約45万人に増加する見通しです。
<IT人材不足数の推移>
2018年:22万人
2019年:26万835人
2020年:30万680人
2021年:31万4,439人
2022年:32万5,714人
2023年:33万7,838人
2024年:35万532人
2025年:36万4,070人
2026年:38万856人
2027年:39万8,183人
2028年:41万5,387人
2029年:43万2,270人
2030年:44万8,596人
IT人材不足は今後も続く見込みです。そのため、インフラエンジニアとしての経験を積むことで、希少価値が高まり、年収や労働条件の良い環境で働ける可能性があります。
【社会貢献に対する実感が得られやすい】
IT機器やサービスは、現代社会において不可欠な存在です。私たちの生活や仕事は、便利さや安全性を保つためにITに依存しています。ITインフラにトラブルが生じると、人々の生活や業務に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
インフラエンジニアは、その基盤となるITインフラの設計や構築、運用、保守に携わります。仕事を通じて社会を支えているという実感を得られるでしょう。やりがいやモチベーションアップにもつながります。
【ITに関するスキルや知識を身に付けられる】
インフラエンジニアとして働くと、仕事を通じてITに関する幅広いスキルや知識を習得できます。
より幅広いスキルや知識を習得することで、キャリアの選択肢が広がるでしょう。
さらに、高いスキルや知識を持ち合わせている人材ほど、好待遇での転職を実現できる可能性もあります。
■インフラエンジニアに求められるスキル・知識
インフラエンジニアとして仕事をするにあたって、ITに関するさまざまなスキルや知識が求められます。
【サーバーに関するスキル・知識】
インフラエンジニアには、サーバーに関するスキルや知識が必要です。
サーバーにはWindowsやLinux、UnixなどのOSが搭載されており、どのOSを扱うかはクライアントや案件によって異なります。そのため、インフラエンジニアとして働くには、どのOSにも対応できる知識を身に付けておかなければなりません。
また、災害時や故障発生時に速やかに復旧できるような技術力も求められます。
【ネットワークに関するスキル・知識】
ネットワーク上でトラブルが発生した際は、原因を迅速に突き止め、改善する必要があります。そのため、インフラエンジニアには、ネットワークに関するスキルや知識が欠かせません。
特に通信規格やプロトコル、LANといった基本的な概念は、最低限理解しておく必要があります。
【セキュリティに関するスキル・知識】
インフラエンジニアとして働くためには、セキュリティに関するスキルや知識も必要です。
ITインフラは、常にサイバー攻撃の脅威にさらされています。サイバー攻撃から守るために、セキュリティを強化するクライアントが増えているのも現状です。
サイバー攻撃を受けると、システムの停止や機密情報の漏洩など、深刻な被害が発生する可能性があります。
インフラエンジニアは、クライアントが安心して利用できる環境を構築するために、ファイアウォールや暗号化などのセキュリティに関する知識を身に付けておく必要があります。
【プログラミングに関するスキル・知識】
インフラエンジニアが仕事をする上で、プログラミングスキルは必須ではありません。しかし、習得しておくと業務効率化や業務範囲の拡大に役立ちます。
たとえばサーバーの自動処理を行いたい場合、シェルやバッチ処理の知識があるとサーバーの設定がスムーズです。
プログラミング言語のスキルや知識があれば、スキルアップにつながるでしょう。
■インフラエンジニアの業務に役立つ資格
インフラエンジニアとして働くためには、資格が必須ではありません。しかし、IT関連の資格を取得しておくと、スキルや知識を習得していることを証明できるため、転職で有利に働く可能性があります。
【<業務全般に関わる資格>基本情報技術者試験】
基本情報技術者試験は、ITを活用した設計、開発、運用などに関するスキルや知識があることを認定する国家試験です。ITに関する基礎的なスキルや知識を身に付けられるため、エンジニアの登竜門的な試験に位置づけられています。
基本情報技術者試験に合格すれば、インフラエンジニアとして欠かせない基礎知識があることを証明できます。合格後は、基本情報技術者試験の上位試験である応用情報技術者試験を目指すことも可能です。
【<サーバーに関わる資格>AWSクラウドプラクティショナー】
AWSの関連資格は、レベルに応じて12種類が設けられています。基礎コースが1種類、アソシエイトが3種類、プロフェッショナルが2種類、専門知識が6種類です。これからAWS関連資格を取得する場合は、基礎コースのAWSクラウドプラクティショナーがおすすめです。
AWSクラウドプラクティショナーは、AWSプラットフォームの基本的な知識を持っていることを認定する資格です。試験では、クラウドの概念やセキュリティ、データ保管などに関する問題がよく出題されます。
【<ネットワークに関わる資格>シスコ技術者認定】
シスコ技術者認定は、ネットワーク機器を提供しているシスコシステムズ社による認定資格です。シスコシステムズ社の機器に関する知識や操作方法などを習得していることを証明できます。
試験は、エントリー・アソシエイト・プロフェッショナル・エキスパートの4つのレベルが用意されています。これからインフラエンジニアを目指す場合は、エンジニアの登竜門的な位置づけのエントリーがおすすめです。
【<セキュリティに関わる資格>情報処理安全確保支援士試験】
情報処理安全確保支援士試験は、情報セキュリティに関する知識や技能が問われる試験です。基本情報技術者試験と同様に国家資格の一つです。試験に合格すると、経済産業大臣から合格証書が交付されます。
ただし、基本情報技術者試験に比べると、難易度は高い傾向にあります。これからインフラエンジニアを目指す場合は、基本情報技術者試験に合格してから挑戦するのがおすすめです。
■インフラエンジニアのキャリアパス
インフラエンジニアとしての経験を積むと、さまざまなキャリアパスが見えるようになります。代表的なキャリアパスの例は、次のとおりです。
・プロジェクトマネージャー
・ITスペシャリスト
・ITコンサルタント など
プロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体の進行を管理する職種です。業務内容には、スケジュール管理やコスト管理、リスク管理なども含まれています。プロジェクト終了後は振り返りを行い、問題点や改善点を検証します。
ITスペシャリストは、プロジェクトの技術面をサポートする職種です。インフラエンジニアからITスペシャリストになるためには、経済産業省が定める一定のITスキルを保有する必要があります。
ITコンサルタントはITシステムを活用し、企業の課題を解決に導く職種です。また、インフラエンジニアはIT業界だけでなく、多くの業界からのニーズが高いため、異業種へのキャリアチェンジも期待できます。
■インフラエンジニアは未経験からでも目指せる
インフラエンジニアとして働く上で必須の資格はありません。しかし、ITに関するスキルや知識は必要です。
これからインフラエンジニアを目指すなら、エンジニアの登竜門的な位置づけである基本情報技術者試験やAWSクラウドプラクティショナーを受験し、ITに関する基礎的なスキルや知識を身に付けるのもよいでしょう。
資格によって基礎的なスキルや知識があることを証明できれば、未経験でも転職の際に有利になる可能性があります。
◇ ◇
【出典元】
▽職業情報提供サイト(厚生労働省)
▽令和4年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)
▽一般職業紹介状況(令和5年3月分及び令和4年度分)について(厚生労働省)
▽人材開発分野をめぐる状況の変化(厚生労働省)
(まいどなニュース・20代の働き方研究所/Re就活)