自宅に開業したネイルサロンで、お客様にケガを…「これって“火災保険”でカバーできますか?」【損害保険のプロが解説】

独立行政法人労働政策研究・研修機構が2023年9月22日に公表した「副業者の就業実態に関する調査」によると、仕事をしている人のうち副業をしている人の割合は7.2%でした。副業をする理由(複数回答)として、収入増加のために次いで多かったのが「自分が活躍できる場を広げたいから」というものです。

都内の企業に勤める30代のAさんも、自分が活躍できる場を広げたいと考え、副業を始めました。夫婦で念願の一戸建てに住み始めたのを機に、彼女は以前から学んでいたネイリストの資格を活かして、自宅サロンを開業します。まずは副業としてスタートし、軌道にのれば会社を退職し、完全独立することを考えていました。

サロンをオープンして1カ月ほど経過して、彼女の友人の口コミもあって、少しずつ来客数は増えていました。そんなある日、彼女がいつも通り接客をしていると、処置をミスしてしまいます。ジェルネイルを硬化させるために、UVライトを用いているのですが、その操作ミスで火傷を負わせてしまったのです。

後日、彼女は火傷をしたお客様から、治療費と交通費、慰謝料を合わせて約2万円を請求されます。自宅の火災保険に付帯している個人賠償責任保険で対応できると考えていた彼女は、保険会社に問い合わせるも断られてしまいました。

他人にケガをさせてしまったときに使えるはずの個人賠償責任保険が、今回のケースではなぜ使えなかったのでしょうか。損害保険に詳しい株式会社スタイリッシュエージェンシーの米谷武氏に話を聞きました。

■個人賠償責任保険…業務遂行中に起こった損害は対象外

ー個人賠償責任保険とはどういった保険なのですか?

個人または家族が、日常生活で起こしてしまった偶然の事故で、他人にケガを負わせてしまったり、他人の所有物を壊してしまったりした場合の損害を補償する保険です。具体的には下記のような事例で支払われます。

・日常生活で自転車を運転していて、人にケガをさせてしまった場合

・住んでいるマンションで水漏れ起こしてしまい、下の階に被害を出してしまった場合

・公園でボール遊びをしていて、そのボールで第三者の車のガラスを割ってしまった場合 など

あくまでも日常生活で起きてしまった損害が対象であって、業務上に起こった損害は対象外です。

ー今回のケースで、保険金が支払われなかったのはなぜでしょうか。

今回は、自宅で他人をケガさせてしまったとはいえ、ケガの理由がネイルサロンの業務中に起こったことであるため、個人賠償責任保険が適用されませんでした。日常生活と業務遂行中では補償される保険の種類が異なるのです。

ーAさんはどうしておけばよかったのでしょうか

まずは、今加入している保険で業務上のケガが補償されるのか確認をするべきでした。そうしておけば、新たな保険加入が必要であることがわかりました。また、開業する業務内容によって、必要な補償内容や特約、保険料も異なります。安心して業務にあたるためにも、専門家に相談して適切な保険に加入することをおすすめします。

◆米谷武(よねたに・たけし)/損害保険代理業 大卒後、損害保険会社で22年間勤務した後、2020年より損害保険代理店へ転職。地域の中小企業経営者向けに、安定した経営ができるように【損害保険】を活用したサポートを行っている。保険会社勤務の経験を活かした「わかりやすい」提案が評価されている。プライベートでは5人の子を持つ父親で、地域の少年野球チームの代表者としても活動中。

(まいどなニュース特約・八幡 康二)

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