小鳥の刺繍、ふわふわクッションもお菓子缶に 芸術的な製缶メーカー「一般販売はしません」その理由とは
「美しすぎる」とSNSで大人気になった、「お菓子のミカタ」(大阪府東大阪市)が製造する菓子缶。
お菓子を食べてしまった後も、缶をボタンやアクセサリーなどの小物入れに使う人は多いはず。SNSを見ると、宝石が描かれた菓子缶を改造して、本当に宝石箱にリメイクした人もいました。
新作も続々に開発し、進化を続けるお菓子のミカタ代表、清水雄一郎さんに話を聞きました。
--HPの人気缶ランキングで不動の1位のビジュー缶は本物の宝石のようです。
清水:元々、細長い缶って珍しかったんですよ。チョコレートを入れることを想定していたのですが、宝石箱のような缶を作りたいと思い、デザイナーと相談して宝石を埋め込んだ今のビジュー缶に行きつきました。加工前は金属の板ですし、印刷の時に透明のインクの使うとキラキラするので、宝石、鉱物、ガラスなどを表現するには相性がいいと思います。
--刺繍を再現した缶も。
清水:缶という硬いものに柔らかい刺繍をいかに表現するか、という挑戦でした。デザイナーがまずモチーフを実際に刺繍で制作し、それを平面データにして、ブリキの板に印刷し、金型を使ってまた浮かび上がらせるという気の遠くなるような作業でした(笑)。
一般的な手順より工程が多く大変だからこそ、人を感動させる缶の持つパワーもあるのではないかと思っています。他にも、カメオ缶やお花のブーケ缶のような、缶なのに柔らかく見えるという、素材とのギャップも意識して作った缶も沢山あります。
--清水さんにとって一番印象深い缶は?
清水:スタッズを埋め込んだようなデザインのロック缶というのがあるんですが、出来上がってデザイナーに見せたら「溶けたアイスみたいですね。」と言われたのが悔しくて!エンボス加工のメリハリが足りなくて、デザインが際立って見えなかったんだと思います。最初からやり直して、ピンピンのスタッズに見えるよう改良しました。最初は“ROCK”とも描いてたんですが、またデザイナーに「ロックがロックって語ってたらダサいよな」と言われたので消しました。
--飾ったり、小物入れにしても可愛いですよね。一般への缶の販売はないですか?
清水:菓子製造許可のない方には販売してないんです。誰でも買えると、お菓子屋さんで買える価値が下がりますよね。お菓子屋さんで買う価値を担保するために、個人の方への販売はしていないんです。
--お客さんからの言葉で忘れられないものは。
清水さん:缶からお菓子屋さんを知りました。缶が欲しくてお菓子を買ってみたら美味しくて、お菓子屋さんのファンになりました。というお声ですね。それが会社として一番やりたかったことなので、その流れができたことは本当にうれしいです。
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お菓子のミカタが製造する缶には、お菓子のミカタの社名やロゴの記載はありません。それでも、「これってお菓子のミカタの缶だよね?」とプレゼントされたお菓子をSNSに投稿される方が後を絶ちません。小さなお菓子屋さんをさりげなく、でもしっかり支える、お菓子のミカタ。建設中の新社屋の敷地内にはカフェを設けるなど、大きな秘密も隠されているそう。今後の展開に期待です。
(まいどなニュース特約・ゆきほ)