「もう兄貴とは絶縁だ!」相続と介護問題で兄と決裂…法的にも「絶縁」することはできますか【弁護士が解説】

ことわざに「夫婦喧嘩は犬も食わない」というものがあります。ただ夫婦であれば離婚をして縁を切るということが可能です。一方で、親子や兄弟姉妹間の関係がこじれると、TVドラマなどで見るような「勘当」や「絶縁」と宣言しただけでは縁を切れないようです。

会社員のAさん(30代・男性)は、昔から不仲であった兄(40代・男性)と縁を切りたいと考えるようになりました。決定的になったのが、2人の父親が亡くなり相続に関してお互いの取り分に関していざこざがあったことと、母親の世話について揉めたことです。

Aさんは「今後も兄と関係があると考えるだけでストレス」と考え、兄に対して絶縁を宣言します。ただこれだけでは不十分ではないかと思ったAさんは、法的に絶縁する方法がないか調べ始めました。

不仲になった血縁者に対して、法的に絶縁する方法があるのか、まこと法律事務所の北村真一さんに詳しく聞いてみましょう。

ー親子や兄弟姉妹間で法的に絶縁することは可能なのでしょうか

結論からいうと、親子や兄弟姉妹間において法的に絶縁するという概念がありません。弁護士が縁というものを扱うのは、主に養子縁組に関わる場合です。養子縁組の場合であれば、養子関係を解消する離縁という考えがありますが、実の親子や兄弟姉妹の場合には当てはまりません。

ー別の人の養子になったとしても縁が切れることはないのでしょうか

養子縁組には2種類あります。特別養子縁組は、原則15歳未満の人を養子に迎える場合の制度で、「実親の同意」や「6か月間の監護」などの条件を満たした場合に成立します。この場合は、実の親子関係が終了します。一方で、 普通養子縁組の場合は実親子関係は存続します。今回のAさんのケースでは、Aさんが別の人の養子になったとしても、普通養子縁組となるため、実の親子関係は存続します。

ーAさんは法的に何かできることはないのでしょうか

兄弟であることが法的に関係してくる場面は、相続の場合と扶養の場合です。

親族が亡くなった場合、遺された財産をどのように分割するかという遺産分割協議書を作成する必要があります。協議書には相続人の押印が必要であるため、否応にも連絡が入ってきます。連絡先を教えていないと、場合によっては訴訟に巻き込まれることもあり得ます。

また生活保護を申請するような状況になった場合、親や兄弟を頼ることができないかと確認されます。民法第877条で「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」となっているため、確認の連絡が入ることがあります。

いずれの場合も、相続放棄や扶養義務の拒否が可能であるため、適切に対処しましょう。連絡先や住所を教えていない状態だと、連絡を取るための手間がかかり、余計な費用が発生する場合もあります。

このように実の親子や兄弟姉妹の間では避けられない交流機会があるので、どのように交流を避けるかではなく、どれだけ早く交流を終わらせるかを意識し、連絡先だけは交換しておいた方がいいと思います。

◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 

「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないといわれる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。

(まいどなニュース特約・八幡 康二)

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