2度飼い主が変わった保護犬 「本当にごめん」謝るスタッフに尻尾をブンブン 「また世話になるね」って言ってるの?
2022年初夏、静岡県内の資材置き場で1匹のミックス犬が短い鎖に繋がれていました。飼い犬のようですが、世話されている様子はなく放置状態。エサも満足には与えてもらえていない様子で、やせ細っており毛艶も悪く疲れきった表情を浮かべていました。
このワンコをいつも気にかけていた近所の人が、静岡県の保護団体・アニマルフォスターペアレンツ(以下、アニマルフォスター)に「助けてやってもらえないか」と相談。スタッフはこれを受け、飼い主の元に「お世話しないのなら、引き取らせてもらえないか」と交渉しました。
■外国人の飼い主はなかなか手放そうとしなかった
飼い主は外国人で、当初スタッフの呼びかけになかなか応じてくれませんでした。根気強くスタッフが交渉を重ね、飼育放棄を決断。アニマルフォスターにワンコを引き渡しましてくれました。
このワンコの名は「チャンプ」。ルックスはイカツイものの、明るい性格ですぐにスタッフに懐き、ちぎれんばかりに尻尾をブンブン。これまで辛い思いをしてきたはずなのに、人間を恨まない優しい性格です。「こんなに良い子なら、すぐに新しい里親さんと縁が結ばれるだろう」と思うスタッフでしたが、その予想に反して里親希望者さんはなかなか現れませんでした。
保護から4カ月ほどが経過した後、ようやく「チャンプを迎え入れたい」という里親希望者さんが現れました。
チャンプはしばしこの家で第二の犬生を過ごすことになりましたが、しかし、さらなる転機が訪れました。
■里親が緊急入院。再び連れ帰ることに…
チャンプを迎え入れてくれた飼い主が、重篤な病気で緊急入院することになってしまったのです。
飼い主の息子さんは「なんとか自分のほうでチャンプの世話をするから大丈夫。手放しません」と言ってはくれましたが、経済的にも難しそうなことに加え、家も留守がちになってしまうとも。
チャンプが寂しい思いをするのだけはどうしても避けたく、スタッフは根気強く交渉し、チャンプを連れて帰ることにしました。
■「またお世話になるね。よろしく!」
連れて帰る際、2度も辛い思いをさせてしまったチャンプにスタッフは「本当にごめんね」と声をかけました。しかし、チャンプはここでも人間を恨むような素振りを見せず、以前と変わらずの尻尾ブンブン。
スタッフに「またお世話になるね。よろしく!」とでも言っているかのように、笑顔で甘えてきました。
チャンプは元気いっぱいで遊ぶこと、体を動かすが大好き。もちろん人間も他のワンコも大好きで、現在過ごすアニマルフォスターでは、いつも「誰か一緒に遊んでくれる人いないかなー」といった表情を浮かべます。
このチャンプの明るく元気な社交性を前にすれば、世話をしなかった最初の飼い主の元、留守がちになってしまう次の飼い主から再びスタッフが連れ戻したのは正しかったように思います。
2度も辛い思いを経験したチャンプに、今度こその第三の幸せな犬生が、1日も早く訪れることを願うばかりです。
(まいどなニュース特約・松田 義人)