トライアル先を逃げ出した保護犬 1カ月後に無事捕獲 「すいません」と申し訳なさそうなあなたに朗報だよ
子犬のときに川に落ち、3日間鳴き続けているところを、保護団体・アニマルフォスターペアレンツ(以下、アニマルフォスター)に保護されたメスの元野犬の楓。
あまりの怖がりな性格のため、里親さんとの縁になかなか結ばれませんでしたが、2024年初め、ついに「迎え入れたい」という里親希望者さんの申し出があり、この方の家に一定期間のトライアルで送り出しました。
「どうかこの家で幸せを掴むことができますように」と祈るスタッフ。それから数日後、里親希望者さんから思わぬ連絡が入りました。
ちょっとした物音に驚いた楓がパニックとなり、そのまま外へと飛び出してしまったのです。
■雑木林の中に去っていく楓の尻尾を確認
スタッフと里親希望者さんは楓を探すことにしました。
SNSなどでも捜索を呼びかけ、多くの人が情報を拡散。叱咤激励とも言える言葉も多くありました。それを受けて、反省するばかりのスタッフと里親希望者さんでしたが、とにかく脱走した楓の捕獲を最優先に探し回りました。
逃げ出してから数日はなんの手掛かりもなく「遠くに行ってしまったのでは……」と肩を落とすスタッフと里親希望者さん。4日目に、トライアル先近くで見かけたという情報が寄せられました。さっそくその付近に捜索に行くと、雑木林の中へと去っていく楓の尻尾を確認。さらにその後、近くの公園などでも目撃され、ついにはトライアル先の家の庭まで戻ってきていることが判明しました。
お腹が空いているでしょうから、エサを食べに戻ってきたのかもしれませんが、しかし手の届くところまで戻ってきているのに、なかなか捕獲できないままの日々を送ることになりました。
■度々戻ってくるトライアル先の庭に捕獲器を設置
トライアル先の庭にたびたび戻ってきていることを受け、スタッフは捕獲機を設置。手動で扉が落ちる仕掛けのもので、楓がここに入ってくれたところでストンと扉を閉める作戦に乗り出しました。
警戒心の強い楓は、庭に戻ってくるのはいつも夜中。設置したカメラにもその様子が映っていますが、なかなか捕獲機の中に入ってくれません。仮に入ってくれたとしても、扉を閉める際に失敗をすれば、もうこの作戦は通用しなくなるでしょう。
■脱走から1カ月でついに捕獲
楓が逃げ出してから1カ月が経過しました。
ある日の晩、いつものようにエサ目当てに再び庭に現れた楓が見事捕獲機の中に入ってくれ、ここでストンと扉を閉めることに成功。スタッフも里親希望者さんも体の力が抜けそうになる思いでした。
捕獲後、楓はクレートの中で過ごし、少しずつ落ち着きを取り戻していきました。同時に、どことなく「あの…私、やらかしちゃいました?なんかすいません」といった申し訳なさそうな表情を浮かべるように。そんな楓を責めることができなくなるばかりか、逃してしまったことを反省する里親希望者さんでした。
■「脱走対策は万全にする」と約束してくれ正式譲渡
スタッフと里親希望者さんは、捜索を手伝ってくれた近隣の方、ネットなどで拡散してくれた多くの人に感謝の意を伝えました。深く反省した里親希望者さんは「脱走対策は万全にする」と約束し、「楓をうちの子に迎えたい」と申し出、ここで正式譲渡にもなりました。
大騒ぎになりながらも幸せをつかんだ楓。これからは優しい里親さんの元から逃げ出したりしちゃだめだよ!
(まいどなニュース特約・松田 義人)